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人間の尊厳と800メートル

「最大のミステリーはこの作者の頭の中」という本書の帯の言葉には深く賛同したいし、それが作者の本を初めて読んだ時以来の自分の感想だ。最初の本を読んだ時の「たったこれだけのためにこんな仕掛けを?」という疑問は、次の作品で本当にそうだったんだという確信に変わった。それからもこの作者は、手を変え品を変えて読者を驚かせてくれ続けている。周りの人の話を聞くと、作者の衒学趣味やトリッキーな大仕掛けが必ずしも万人受けしているわけではないようだが、本書に収録された「蜜月旅行」などは、程よいユーモアと楽しいオチの傑作だと思う。この作品、巻末の解説で「これはミステリーではない」と一刀両断されてしまっているが、それに深く納得しつつも、思わず笑ってしまった。(「人間の尊厳と800メートル」 深水黎一郎、東京創元社)

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