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静かな炎天 若竹七海

最近、著者の本がTVで紹介されて、ちょっとしたブームになっているらしい。著者の本は何冊か読んでいるが、どの本が既読でどの本が未読か瞬時に判断できない。長いキャリアの作家の場合、時々そういうことがある。どれも面白かったという記憶はあるのだが、ある時期にまとめて読んだり、シリーズで追いかけたりしたことがなかったせいだ。そういう時に有難いのが新刊だ。ここ数年の話ならばまだ記憶に残っているので、安心して購入できる。本書は、書評で作者の新しい作品集として紹介されていた一冊だ。著者の密度の濃い文章は健在、短い短編ながら読みごたえのある作品が並んでいる。特に二つ目の表題作は、最近読んだミステリーの中でも最も印象に残る傑作だと思う。探偵である主人公の元に次々と舞い込む小さな仕事の依頼。それらを卒なく解決していく主人公。この作品は主人公の日常を描いた作品なのかと思ったら、終盤で主人公がある人物に発する一言で、事態はガラリと一変する。ちょっとしたアイデアかもしれないが、意外性は抜群である。著者の本はまだ何冊も読めるので、これからが楽しみだ。(「静かな炎天」 若竹七海、文春文庫)

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