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これからの誕生日 穂高明

読み終えて、本当に良い本だと思った。大きな事故で友達を亡くし、一人だけ生き残った少女について、弟、友達の母親、伯母、新聞記者、近くのケーキ屋の主人という周りの人たちの視点で語られる。生き残ったことへの罪悪感に苦しむ彼女に対して、それぞれの心のなかには、悪意もあればやっかみもあるが、著者は悪意を糾弾もしないし、敵視もしない。その姿勢が心を打つ。特に最後のケーキ屋の主人の章には、心底心を打たれた。東日本大震災の直後に刊行されたという本書は、著者の意図に関わらず、震災について心の整理をしなければならない人、一人一人にとっての名著だと思う。(「これからの誕生日」 穂高明、双葉社)

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