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偉人リンカーンは奴隷好き 高山正之

雑誌に連載されているエッセイをまとめたいつもの1冊だが、世間一般の「やや進歩派」を良しとする意見を徹底的に疑う姿勢が面白いのでずっと文庫本になった時に読んできた。文庫化されてから読むので、時事テーマなどは読む段階でかなり古いテーマになってしまっているのが少し残念だが、当たり障りのない常識的な報道とのかい離が大きくても、時間が経過していることで、こちらとしてもかえって冷静に読めるような気がするし、その方が良いのかもしれないと思ったりする。但し、このシリーズを読んでいていつも思うのだが、本書のような進歩的な論調に対して意図的に懐疑的で、かつ過激なほど攻撃的な文章を読んでいると、こうした意見が文章として消費されていくことが果たして日本社会のためになるのだろうかという疑問が湧いてくる。ある意味それは言論の自由に裏打ちされた大切なことだし、社会には反対意見があることを知るという意味でももちろん重要なことなのだが、本書の場合、攻撃的な文章であればあるほど、それ自体が様々な問題に対する疑問や不満のガス抜きに利用されてしまっているのではないかと心配になるのだ。(「偉人リンカーンは奴隷好き」 高山正之、新潮文庫)

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