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「日本の伝統」の正体 藤井青銅

日本人が古くからの伝統だと漠然と思っていたり、そのように宣伝されているものが「本当はいつ頃からのものなのか」をわかりやすく解説してくれる本書。軽い読み物風ではあるが、しっかりした考証を感じさせつつ、ユーモアも忘れない文章で、面白かった。60歳を過ぎて高齢者になると、「50年の伝統を持つ行事」などと言われるとカチンとくるが、この本のように「伝統」という言葉の濫用をばっさり切ってくれる文章に出会うと気持ちがものすごくスッキリする。また、京都に関連した名前をつけたり江戸時代の旧地名をつけるだけでグッと「伝統的な感じ」が高まるので、世の中それを宣伝のために利用した事例のオンパレードということも教えてくれるし、とにかく今「伝統」と言われているものの殆どが幕末から明治にかけてのもの、あるいは戦後のものだということも教えてくれる。それだけ、この2つの時期の断絶が大きかったということだろう。特に驚いたのは、「日本人が白菜を食べるようになったのが明治時代になってかなり経ってから」とか、「マトリョーシカは元々日本の玩具だった」という話。所々に意外な知識が満載の一冊だった。(「『日本の伝統』の正体」 藤井青銅、新潮文庫)
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