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科捜研の砦 岩井圭也

警視庁科捜研の若きエース技官を主人公とする連作短編集。物語の本筋は、私情や警察内部の組織力学などを極力排除して科学的であらんとする主人公が、微細な手がかりを駆使して事件の隠された真相にたどり着くという王道のミステリーなのだが、読み進めていくとそれとは別の重いテーマが浮かび上がってくる。各短編は、警視庁科警研の技官、鑑識官、大学の研究者など主人公でない人物の目線で描かれている。別の物語というのは、彼らが主人公と歩調を合わせて事件の解明に努力する過程とそこから色々なことを学んでいくという成長物語になっていることだ。最終話のかなりびっくりする展開も含めて、科学に忠実であることの苦悩や厳しさが描かれているのが胸に刺さる作品だった。(「科捜研の砦」 岩井圭也、角川書店)
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