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七十歳死亡法案可決 垣谷美雨

日本で少子高齢化による財政や福祉の破綻を打開するために「国民全員が70歳になったら全員安楽死」という過激な法案が成立したらという近未来小説。題名や設定は非現実的だが、ストーリー展開はいたってまとも。法律の施行と同時に安楽死させられる義母を介護してきた主人公の主婦、その夫、義母、子どもたちが法案の成立後どのように変わっていくかが克明に描かれている。70歳を既に超えている義母は余命が法律施行までとなり今まで以上にワガママになってしまうし、夫は自分の余命があと10数年となって早期退職して自分探しの旅に出てしまう。そうしたそれぞれの変化のしわ寄せが全て主人公にのしかかるという展開だ。著者が書きたかったのは、法案成立そのものではなく、それによって浮かび上がる負担の偏在だ。着想の面白さ、取り上げられたテーマへの問題提起、いずれもこれまでに読んだ著者の本の中で最も読み応えのある一冊だった。(「七十歳死亡法案可決」 垣谷美雨、幻冬舎)
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