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いっぽん海まっぷたつ 椎名誠

著者の色々なエッセイ等が収められた本書。名古屋の色に関する考察とか、旅行に行くときに持っていく本の話とか、簡単に作れる麺料理の話とか、いくつも非常に面白かったり参考になる話があり、楽しめた。旅行に持っていく本のところでは、「既読で面白かった本を1冊持っていく」という話がなるほどと思ったし、麺料理のところではすぐにでも作ってみたいレシピがあったりで、愉快な読書の時間となった。著者のこの手の本は初めてだが、まだまだいっぱい刊行されているようなのでこれから少しずつ読んでいくのが楽しみだ。(いっぽん海まっぷたつ」 椎名誠、角川文庫)

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ペテロの葬列 宮部みゆき

読み進めていってもなかなか事件の本質が見えてこない。そんなもどかしさを抱えながら読んでいくと徐々に色々なことが見えてくる。そんなプロセスを楽しむ1冊だ。突然主人公が巻き込まれたバスジャック事件の背景にある社会的事件と犯人の動機、謎が主人公の思考とともに少しずつ解明されていくので意外性は強く感じられないが、振り返ってみるとこんなところまできてしまったのかという感銘を受ける。稀代のストーリーテラーと呼ばれる著者のすごさが再認識できる1冊だ。書評などをみると「次の展開・続編が待たれる」とあって何のことかしらと思っていたら、事件解決後に事件とは直接関係ない驚くような展開が待っていて、この先主人公がどうなるのか、大変気になるところではある。シリーズものの場合、こんな引っ張り方があるのだなぁ、と感心してしまった。(「ペテロの葬列」 宮部みゆき、集英社)

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ゴッホのひまわり全点謎解きの旅 朽木ゆり子

ゴッホと言えば「ひまわりの画家」という言葉を思い出すほど有名な画材だが、実際にひまわりの作品は11作品でそのうち実物をみることができるのは9作品とのこと(1作品は太平洋戦争の際の空襲で焼失、もう1作品は所在不明)。その9作品についての来歴や絵画としての特徴等を詳しく解説してくれる。唯一日本にある作品の真贋論争や、初期の4作品の比較等、書かれている全てのエピソードが大変面白い。言及されている11作品の全てが大きなカラー口絵で確認できるのも有難い。テーマの選定が素晴らしい上に、内容も興味深く、これぞ「新書」という1冊だ。(「ゴッホのひまわり全点謎解きの旅」 朽木ゆり子、集英社新書)

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蝶は11月に消えた 太田紫織

「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」シリーズの第4弾。第1作目、第2作目を読んだ記憶はあるのだが、第3作目を読んだかどうか定かでないまま第4作目の本書を読むことにした。本を開くと、最初に登場人物のイラストが載っていて、皆大変かっこいい風貌で描かれている。その感じはまさにライトノベルの趣だ。1冊飛ばしてしまったかもしれないにもかかわらず全く気にならず、即座に物語の中に入っていけるというのは、それだけライトノベルとしてキャラが立っているからだろう。まさにライトノベル恐るべしという気がした。内容は、ミステリーの謎の不思議さとか意外性という意味ではそこそこかもしれないが、全体の面白さも引き付けられるものがあるし、舞台の北海道を上手に使っている点も大きな魅力の1つだと強く感じた。最近は「北海道の作家」の元気が良いのが目立つ気がする。(「蝶は11月に消えた」 太田紫織、角川文庫)

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チョコリエッタ 大島真寿美

小品だが、香り立つ作品だ。小さい時に母親を亡くした少女が、一緒に育った愛犬を亡くすところから始まる物語は、主人公の喪失感のようなものが、読む人の心を強く揺さぶる。解説を書かれた人は「号泣した」と吐露しているが、こちらの心情次第では、本当に胸に刺さるのではないかと思われる。フェデルコ・フェリーニの映画作品のからみも印象的で、この先、フェリーニの名前を見るたびに思い出すのは、ひょっとすると彼の監督作品ではなく、この作品なのではないだろうか感じる程のインパクトだ。この作者の作品は、どれも本当に素晴らしいと感じる。(「チョコリエッタ」 大島真寿美、角川文庫)

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