書評、その他
Future Watch 書評、その他
そしてバトンは渡された 瀬尾まい子
2019年の本屋大賞受賞作。大まかなあらすじを知って、個人的な理由からノミネート作品の段階で読まないことにしたのだが、受賞作となれば読まない訳にもいかず、遅ればせながら読むことにした。案の定、読んでいて辛い所もあったが、受賞したことに異論のない一冊だった。(「そしてバトンは渡された」 瀬尾まい子、文藝春秋社)
秘境駅へ行こう 牛山隆信
全国の秘境駅と呼ばれる駅を巡るエッセイ。著者は、秘境駅という言葉の命名者で、その道の大御所ということらしい。秘境駅というからには、非常に辺鄙なところにあって乗降客数も少ない駅ということは想像できるが、実際には予想を遥かに超える秘境ぶりだ。駅から他の場所に行く道が一本もない駅、完全に私有地に囲まれている駅、始発と最終が同じ駅(要するに1日1本しか汽車が止まらない)というのはまだ良い方で、時刻表には駅名があるが汽車が一本も停車しない駅もあるという。秘境駅になってしまった経緯も様々で、スイッチバックとかポイント切り替えの要員が待機することが主な使命だったという駅もあれば、駅と周辺が大規模な洪水で壊滅してそのままになっている駅というのもあるとのこと。巻末に「秘境駅を巡るお薦めコース」がいくつか紹介されているが、とても行く気にはなれなし本で読むだけで十分満足というほど全てが凄まじい。(「秘境駅へ行こう」 牛山隆信、小学館文庫)
文楽 乙女文楽
主に女性が一人で1つの人形を操る「乙女文楽」の公演。題目は祝儀の儀礼曲「二人三番叟」と浄瑠璃の人気演目「傾城阿波の鳴門」の2つ。後者は文楽を学ぶ若い演者による上演で、人形劇なのに思わずうるっとなってしまった。
オブリヴィオン 遠田潤子
書評誌の昨年の年間ベストワンの作品。ベストワンに輝いたということで早速ネットで注文したが、「在庫なし」「入荷待ち」に。注文を取り消すのも面倒なのでそのままにしておいたところ4週間後にようやく到着。そうなると最初の時の読む気が薄れてしまっていて読むのが後回しになってしまった。贅沢な話だが、このあたりがネット書店の不便さの1つかもしれない。本書の内容には全く関係ないことを書いてしまった。著者の本は2冊目だが、前作同様かなりシビアな内容の話。本作でも風格を感じさせる文章を満喫した。(「オブリヴィオン」 遠田潤子、光文社)
ミュージカル Color of Life
出ずっぱりの2人が歌と演技を熱演。ストーリーの進展とともに色々な色のキャンバスが増えていく演出、シンプルだが効果的な音響が巧みだ。ほぼ満席で大半が若い女性。
シウマイの丸かじり 東海林さだお
もう何冊目かは分からないが新しい文庫が出ると反射的に買ってしまうシリーズの文庫化最新刊。収められている話には、食事や食品に関するちょっとした考察、特定の食材に関する思いの吐露など色々なパターンがあるが、最も面白いと思うのは著者が新しい料理にチャレンジする話。本作でも、目玉焼きにかける新しい調味料を提唱する話やお蕎麦にフライドポテトをトッピングする話が秀逸だった。(「シウマイの丸かじり」 東海林さだお、文春文庫)
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