昨日は雨でしたが、日生劇場にOSKを見に行ってきました。
宝塚とOSKが背中合わせに上演している事実って、何気にすごくないですか?
しかもOSKさんは73年ぶりの東京公演という事で。
無論、OSKファンの大半は宝塚も見ている人達ではあるでしょうけど、そこらへんの区別を自分なりに
きっちりつけて楽しんでいるようです。
前回の三越劇場の時には感じませんでしたが、今回は正当なレビューとは何なのかよくわかりましたし
宝塚とOSKは全くの別物。それぞれの楽しみ方があっていいと思いました。
私が見た回にはオギーとカルーセル麻紀が来てました。
桜絵草紙
OSKはタイトルは全て「春のおどり」なんですね。それで2部構成になっていて、1部が和物。2部が洋物。
ショー主体。でもこれはショーというよりはレビューですね。あくまでも。
さて、「桜絵草紙」ですが、作・振付が山村若という人です。
お恥ずかしい話ですが、私は山村流も知らなかったし、山村若という人が植田先生のお子さんである事も
知りませんでした。
山村流って歌舞伎などの振付をするお家柄。若さんは6世宗家。
4世が祖母。5世が植田先生の奥様で一人娘だったので婿養子に来てもらったと・・・でも5世さんは名乗る前に
お亡くなりになったので追号されたそうです。
で、山村若さんは宝塚の振付もしているようで・・・・「宝塚ジャポニズム・序・破・急」では
松本悠里さんの弥勒菩薩とその後の「千体仏」を振りつけています。
植田先生にとって、あの作品のあの二つは特に思い入れが強いから、自分のお子様に・・・という事になったんでしょう。
で、「桜絵草紙」はどうだったかというと、はっきり言って「序・破・急」なんかよりずっと楽しくて有意義なレビューでした。
・ チョンパで明るく始まるプロローグ
・ 「ミロワール」で彩吹と音月がやったようなシーンの和物版。非常に美しく見応えあり。
・ 鶴・・・これはかつてOSKの大階段が事故で壊れた時、40名以上の重軽傷者をだしました。その時にファンから
沢山の励ましの千羽鶴が送られてきて、そのお礼の為のレビューなのだそうで、OSKを代表するシーンになってます。
衣装も美しく、振付も上品で希望にあふれていました。
・民謡メドレー・・・こういうのは世代を超えて盛り上がれるのではないかと。
つまりすべてにおいてオーソドックスだったという事です。古きよきレビューの形がこんな所に残っているんだなあって。
「鶴」をみながら渡辺武雄先生の日本物のショーを見たかったなと思いました。
確かに宝塚における和物の演出といえば谷先生か酒井先生か植田先生か。
宝塚ではたとえば沖縄を取り入れたり、東南アジアまで足を延ばしたりしますよね。今回の星組でも似たような事が。
だいたいショーにお経を産みいれるとか、仏様を登場させるなんていう発想は植田先生にしか出来ないと思います。
そういう「ちょっと変わった事をやってみよう」「人と違うものを作ろう」という意識はとても貴重だし、尊重します。
だけど、観客が和物のショーに求めるものは、季節感と明るさ、懐かしさ・・・ではないかと思うんですね
そういう意味で「桜絵草紙」は和物の原点に返ったような作品で、目からうろことはこの事だなあと。
こっちを台湾に持って行った方がよっぽどうけるんじゃないか?なんて・・・・・・
とはいえ、工夫も欲しいのは確かです。
スパイスとして第4景の「漢(おとこ)」というのがあったのですが、これがまあ、いさましいったらありませんでした。
歌詞も正統派で「ああ・・・日本人だなあ」と思わせてくれるものでした。
ラストの獅子3人は見事で「おめでたい」ムード満載のまま終わりました。
とはいえ、やっぱり工夫も必要だなあと思います。
まず、衣装。こればっかりはどうみてもセンスが悪い。
それから構成・・・「鶴」はいいとして、他の場面はもう少し凹凸があってもいいんじゃないかと。
また書生さんと女性の話は、へんてこなパントマイムをやるより、もっと早く場面を動かず必要があったでしょう。
その為には例えば「雨」「風」「雪」などの群舞を取り入れたりするのもよかったかも。
Catch a chance Catch a dreams
こちらは一転して洋物レビュー。構成や振付は名倉加代子。で、Kasumi-boyが振付したりした部分もありました。
全体的に「振付」の巧みさが現れていました。
ここが宝塚と違うんですね。今の宝塚は稽古時間が少ないのとトップにけがをさせたくないばかりに
安易な振付でお茶を濁すパターンが増えています。(礼音になんでリフトがないんだよっ)
群舞にしてもあまりにも「男役の型」にこだわりすぎて、ポーズを決めるだけの踊りになっている。
でもOSKの場合、とにかく技術的にもビジュアル的にも「稽古が大変だったろうな」「あわせるの、大変そう」
というウルトラC級のものが多くて、見ごたえ感がかなりありました。
いまいちわからなかったのがKazmi-boy振付のラプソディ イン タンゴ・・・・男役と娘役の踊りの筈が
いつの間にか男役同志のラブシーンに?びっくりしてしまいました。
洋物は非常に楽しい。でもやっぱりここでも工夫は大事かなと。
日本物よりも、トップ・二番手・三番手の序列が前で後は全部後ろというのがやたら多く、若手が中心になって
一場面を演じる部分がないんですね。
チェリーガールズはとても可愛らしかったし、素敵でしたけど、若手の男役はわりかし損をしているような?
私達からみても、常にトップが真ん中で両脇にいるパターンばかり見せられては飽きてしまいます。
今回は、羽根なしシャンシャンなしのフィナーレでしたが、かえって斬新
宝塚との差別化を視覚的に表現したいいフィナーレだと思いました。
やっぱりショーって、見た後に「わあ」って終わるのが一番じゃないですか?
ちょっとの間だけいい思いをして帰るのがいいんじゃないですか?
ショーを見ながら「あの人はスポンサーがないばかりに実力があっても使われない」なんて
考えながら見るよりね。
出演者について
桜花昇ぼる・・・・何でこの人はこんなに初々しいんだろう。白がよく似合って日本舞踊が御得意?
ファンから見るときっと守ってあげたくなるタイプの人なのかなあと。
背中がちょっと華奢なので、女性の役をやっても十分。
高世麻央・・・・二番手。非常に正統派の二枚目。でも中世的な美の桜花と外人の桐生に囲まれてしまうと
うもれる感じ。三越で見た時は結構三枚目もこなしていたような気がしますが。
でも、往年のスターとか書生さんとか、いわゆる正当な役ばかりやってました。
朝香櫻子・・・・娘役・・・っていうより女役トップ。結構な学年らしいのになぜか美しい。出てくると花が咲いたようになります。
桐生麻耶・・・・非常に背が高く、男性張りの体格、外国人のような顔立ち。写真うつりはあまりいいとはいえないけど
実物を見ると、他の人が全部かすんでしまう程のド迫力。
ガタイがいいからどんな重いコスチュームでもOK。そして背広がやたら似合う人です。
一人だけ他と違う踊り方をするので目立ちます。全身運動が好き?そいでもって顔に表情をつけたがる。
宝塚ではあたりまえなことだけどOSKでは目立つんだなあ。
他には楊琳君と悠浦あやと君の任期が急上昇中に見えました (ははっえこひいきね)
ゆえにっ 真ん中にださんかいっ 上の3人は出ないでいいから若手だけのシーンを作って下さい。
繰り返しますが、少女歌劇とレビューは全くの別物です。今回はそれがよくわかりました。
どちらか一方が劣っているとかすぐれているとかではない(衣装とセットは考えものだけど)
それぞれのよさをいいとこどりして楽しめばいいんじゃないの?と思います。
ブローウエイミュージカルで「日本じゃありえないよなあ」とか思いながら見るなら、OSK見て
「日本人でよかったよ」って素直に思えばいいし、でも「エリザ」も「ベルばら」も楽しんでもいいって事です。