しみじみとみてまいりました。
宝塚の話をするのに、こんな話題からと思われるかな・・・・
舞台を見てて、ちょっと泣きそうになったんです。
それは物語も感動的だったからにほかならないのですが、
心の中で、亡き母とその親友に「見てる?」って感じで。
見せてあげたかったなあと きっと今なら喜んでくれるかなと。
その昔、親戚のおばさんに言われた事があります。
「あなたのお母さんなんて西南戦争で負けた口の子孫じゃないの」って。
その時は、宮城は賊軍だし?母の本籍地である熊本は敵だから
そんな事いうのかと思っていたけど、実はそうではなかったんですよ。
あの当時(って西南戦争後)それに加わったとか関わった子孫たちは
内地にいる事ができなくて台湾に渡った人が多かったという話なのです。
きっと台湾だけじゃなくて満州方面にも行ってるかもしれませんが。
母は台湾の女学校を卒業しているのですが、母の父の代に弟を医者に
する為に台湾に渡ったと聞いています。
台湾での給料は内地の倍以上だったので。
戦後、母はちりじりになった台湾の同窓生を探し出し、東北支部を作り
全国規模で2年に1回同窓会を開いていました。
台湾で一緒だった同級生や下級生、あるいは上級生が、何十人か
仙台にもいて、月1ペースで集まって中華料理を囲んで懐かしい思い出話に
話を咲かせていました。
私は大抵、一緒についていってごちそうを食べつつ、次元の違う戦前の話を
聞いていたんですけどね。
そんな母の一番仲の良かったおばさまに「白石さん」という方がいまして。
上品で知的な顔の方でした。
多分、ご主人は戦争亡くなり、銀行員をして娘さんを育て上げていました。
彼女が嫁いだ先は「佐渡の殿様だったけど今や財産なんかないわよね」と
言っていました。
週末は銀行員のメンバーを呼んで麻雀をしてて、煙草吸いつつ・・・・
そういう一面もあったけど、何より驚いたのは蔵書のすごさで。
古本屋さんでしか見ないような重厚な本が沢山あって、中でもホームズ全集と
古事記、日本書紀は借りて読みました。
昭和の時代に女性が一人で働いて家を建ててってすごい事だと思います。
きっとそれなりに財産はあったんじゃないかなあ。
いつも悟ってて冷静で、前しかみない感じで、彼女の言葉は
大きな事も小さく思えるような人で、母の自己中心的な明るさとは違っていました。
でも、東北人からみると、九州のDNAを持つ人ってどこか明るい印象がありました。
東北人って(ってひとくくりにすると怒られるけど)すぐに深刻になって
沈黙して我慢して・・・ってなるけど、南の人は根が前向きっていうか
「金は天下の回りものよ」と豪快に使っちゃうみたいな。
女性なのに若い男子3人読んで麻雀するなんて、あの当時の仙台じゃ
考えられなかったと思うんですけどね。
母と同級生ですから大正5年生まれでしょう。
私が頻繁にお会いしていた時はすでい60歳をこえていらしたと思います。
母がある日「白石さんの旧姓は桐野さんっておっしゃるの。桐野利明の孫なのよ」
って言い出しました。
白石さんは「そんな人知らないわよねーー」って笑ってました。
母は「何を言ってるの。有名な人じゃないの」って怒ってたけど、正直
私は知りませんでした。そんな人がいるって。
「おじいさんがどんな人でも今じゃこうだもの」っておばさんはタバコ吸いながら
笑っていましたけどね。
母が言いたかったのは「私達台中1高女の卒業生はみんなすごいのよ」って
事だったと思いますが、どういうわけか母の同窓生はみんなやたら
自分の母校に誇りを持ってて「私は内地の人とは育ちが違う」っていうんです。
そんな人たちの中で白石さんは一人孤高の人というか、ちょっと冷めてる人
だったなあと。
今、ネットでググっても「桐野利明の孫」といえば「桐野富美子」さんだけで
「桐野治子」では出て来ません。
公式には認められなかったのでしょうか。
それとも本人がわざわざ名乗りを上げなかったから葬られた?
富美子さんは内地にいて、もう一人の「孫」は台湾で生まれて育った。
もし、今生きていたら「あらーーおじいさんが正当に評価される日が来たのね」
とでもおっしゃるでしょうか。
母たち世代から見ると西南戦争はおじいさんの代で起こった事実。
それによって子孫たちはあっちこっちへ姿を消さざるを得なかったという事ですね。
時間がないから出来ないけど、そのうち昔のアルバムとか同窓会名簿とかで
調べてみようかな?
で、「桜華に舞え」の感想ですが。
いやー泣いた泣いた 久しぶりにさよなら公演でないたわ。
ただ2階席だったので(?)ベニーのセリフ、他薩摩弁がよくわからなくて
西郷隆盛系の話に詳しい人じゃないとなかなか理解できないかもしれないと思いました。
実際、我が家の姫は何が何だかわからないまま泣いてたみたいだし。
「白虎隊」を見てたお蔭で、ついでに毎年会津に行ってたおかげで
礼真琴の立場はよくよくわかるんですけど、桐野と西郷が何で大久保達と
決別していくのか、岩倉さんのセリフだけじゃわからないよね。
そこらへんはぜひ山田風太郎の「からくり事件帖」を読むなり
田辺誠一のドラマを見るなりしてください。
前半はまあいいとして後半は急ぎすぎ、場面転換が多くなりはじめ
力技でラストへ持って行ったという感じ。
でも桐野の死に方はよかったし、その後の隼太郎の嘆きも涙を誘うし、
かっこいいったらないっ
ああ、日本人って素敵だーーとか思いつつ見る事が出来ました
斎藤吉正君、ノリにのってますよね。
こういう成長の仕方をしてくれると本当にうれしい。
宝塚は大衆演劇であるわけですから、難しい事はおいておいて見せ場を
ばんばん作るのは大事な事ですよ。
でも、そうはいっても西南戦争へつながっていく過程がわからない。
歴女なら、征韓論と西南戦争って日本史の教科書を思い出すかもしれないけど
明治維新で「食いッパぐれた武士たちの不満」がどこにあるのかという部分までは
なかなか考えないですよね。
大久保利通達は「開国した国」作りを一番に考える、つまり国の体面を
考えるわけですが、西郷たちは「武士階級」を考える。
その温度差がなかなか伝わりにくいものがあったのではないかと。
でもしょうがない。
元々扱いにくい題材ではあるし
さよなら公演にふさわしい作品でした。
一方「ロマンス!」の方は・・・・・色は綺麗だけど岡田先生はもうショーを
書くのはおやめになった方がよろしいかと。
一体何を言いたいショーだかわかりません。
今時のスピード感を愛する観客に、あのまったり艦は理解されにくいし
一回一回暗転してはけて・・の繰り返しは飽きてしまいます。
3場の初恋も中途半端なら次のロックンロールはうるさいだけ。
友情のシーンくらいですか、見ごたえがあったの。
驚いたのは燕尾服から幕が閉まって、紅ゆずると綺咲愛里が登場して
歌って歩いただけのシーン。
どうみても大階段の出し方が変で、しかもフィナーレへの持って行き方も変でした。
斬新とは言わないと思うけどなあ。
北翔海莉・・・すごくかっこいい(ちょっとうるさい)桐野さんでした。
香水の話。本当だったんですねーーラストの刀で腕を斬るシーンがよかったわ。
紅ゆずる・・・幕末ものやってよかったよね。やりたかったでしょ。でもなあ
役柄的に弱いっていうか、目立たないっていうか。
本来は大久保あたりをやるべき人だったんじゃないかな。
滑舌の悪さと早口で何を言っているのかわからない部分もあり。
故郷に帰って音波みのりにカバンをばーんと打たれたシーンは泣けた。
妃海風・・・最後なのに「普通」な女の子で気の毒な部分もあるけど
可愛いからいいっか。
礼真琴・・・とにかく復讐に燃える言葉と姫様への愛に泣いたっ!
美城れん・・・すごく西郷さんに合ってますけど。ショーで銀橋に出て
歌っていたけどあまり聞こえなかったなあ。
壱城あずさ・・・ものすごく憎たらしい山形有朋ですわ。
七海ひろき・・・・しっかり者の川路さんという感じでした。
天寿光希・・・・なんてところのない役ですが、花吹雪の下に佇む姿の
かっこよかった事。