まずは・・・
音月桂様、雪組トップ決定おめでとうございます
新人公演時代から実力・容姿共に抜群、何でも出来る優等生、尚且つ
「いつもどんな時でも笑顔」の明るさ
もっと早くトップになってもよかったくらいですが
トップ就任後は安定した舞台を見せてくれるのではないかと。
出待ちしてていつも思うのは、この方はとにかく出て来るのが早い。
さっさと出て笑顔でバイバイと帰っていく雰囲気。
トップになってもこうだとファンも楽なんだけどね
まあ・・・今後の雪を見るかどうかはわかりませんが。
今日は早慶戦があったので、外苑は大学生だらけ
おばさんは・・・お呼びじゃない?
青年館でさらっと時間を潰していたら隣にいた女性二人の会話が
聞こえてきました。
「素敵な作品で 思わず通ってしまいました。もっとみたいくらい」
(ふむふむ・・期待していいって事ね)
「でも・・・怖くて後ろが見れないの」
(へ・・・?動員が悪いの?確かに私の前も空席でしたが)
「後ろを見る事が出来ない」と言った方は一生懸命チケットをさばいて
いたようですけど。ファンにこんな思いをさせる歌劇団ってやっぱ変。
リラの壁の囚人たち
本当によく出来た脚本
場面転換が少ない → 場が少ない
登場人物の心理描写が優れている
起承転結がきっちりしてて、まとまっている
まるで「これぞ脚本の見本」のような・・・・
今時の座付作家の方々はこの脚本をきっちり読んでお勉強すべき。
それくらい素晴らしい脚本だと思いました。
この所、やたらくるくる回る舞台ばかり見ていたし、人間の深層心理より
動きを重視したようなものを見ていたので、ここまでじっくりと
登場人物達に感情移入しながら見る事が出来る作品に出会えたことは
幸いでした。
こんなに素晴らしい作品なのに、人が入らないってどういう事?
宣伝の仕方が悪いんじゃない?
正直、普通の俳優さんで外でやってもいいんじゃないかと思える程
きっちり描いていますよね
時代背景がちょっと難しい?
ウケない点があるとすれば、いわゆる「レジスタンスって何」っていう部分
だと思うのですが。
(とはいえ「カサブランカ」やってるしなあ・・あ、あれも入りが悪かった
んだっけ)
私達が若い頃ですら「レジスタンス」って言葉は死語になりつつあった
わけで、21世紀でこの言葉の持つ重さとか危険性とか・・なかなか理解
されないのではないかと思いますが。
1944年晩春から6月まで
日本にとって終戦は1945年8月15日ですが、その一年前の8月
19日からのノルマンディ作戦での戦いで25日にはパリは解放され
連合軍が凱旋門を通ってパレードしたわけです。
つまりこの物語は、「パリ解放」直前の期待はあるけど閉塞した数ヶ月間
を描いているんですよね。
パリ解放後、多分マリーのようなナチスに協力的だった女性達はリンチ
にあったりした・・・と記憶してますが。
エドは「希望の象徴」?
この物語に出て来る登場人物の中で、一番「無関係」に描かれているのは
実は主役のエドなんですよね。
なんたってイギリス人ですし、命からがら逃げて来ても情報がなくて
イライラするばかり ポーラとマリーの薄幸な女の子二人に罪作り
な台詞を言って・・・でもそのわりには強烈な恋に陥るわけでもなく
仲間二人は命をかけてパリを脱出するというけど、自分はおいてけぼり。
庇ってくれる優しいモランさんやルビックさんの好意に支えられつつ
何となくゴタゴタを起こしてナチスを引き入れてしまう・・・っていう役柄。
正統派二枚目っていうのはこういう役柄なんだなあと。
でも彼が果たす役割で最も重要なのは、彼の登場によって女性二人の
心理状態に「変化」をもたらしたこと。
その変化がポーラとマリーの運命を変えてしまうわけですが。
それから「もうすぐパリは解放されるんだよ」といい続ける事で希望を
与え続けた事
主役の役割というのは常にプラス思考でいる事なのかなあと。
それに比べてジョルジュが背負ってる背景はあまりに厳しい
戦争で負傷して車椅子生活になった事で婚約者のポーラに優しく
出来ず、でも解放してやる事も出来ない・・・「リラの壁」の中で
ナチスドイツと身体的不自由による二重の閉塞感を抱えているわけですね。
しかも、多分イライラの根源はポーラを「本当に愛する事が出来ない」
事、つまり男性機能の問題なのかな
男として最もプライドが傷ついている部分がエドによって抉られている・・・
作者の思い入れは多分エドよりジョルジュにあったのかもしれません。
ポーラもエドが現れるまではストックホルム症候群のようになっていた
でしょうし、マリーは心は生粋のフランス人でも敵の将校に媚びなくては
ならないジレンマを抱えている。
それぞれの役柄が本当によく描かれていて、その分、きちんと歴史的
背景を知らないと演じるのが難しい。表面的な演技ではボロが出てしまう・・
そういう意味では星組さん、本当に頑張っていたとは思いますが
正直、にしき愛・万里柚美・美城れん以外、男役陣は
まだまだ早いなという印象。
(「カサブランカ」を見た後ではやっぱり祐飛の方がなあ・・とか思って
しまう私を許してっ)
白華れみ、音波みのりはよく頑張っていたと思いますが。
セットは初演の方が美しくない?
そお昔、友人に見せられたざしざしのビデオを見た時、さっぱり
意味がわからず、面白いとは思いませんでした
でも、セットが今回のものよりもずっと花が一杯で・・・白やら紫の
花に囲まれた建物だった記憶が。
「こんな豪華なセット見た事ないなあ」と思った・・・と。
まあ当時は宝塚はお金があったし?しょうがないかも。
レジンスタンスシーン
ネットの感想で見たんですが
「初演はレジスタンスシーンがなかった」
「今回はレジスタンスシーンが付け加えられているけど薄い」
というような意見がありまして
言われてみればそうかもと思いつつ、よく考えてみると、登場人物の
心理状態そのものがすでに「レジスタンス」なんでしょうね。
エドの傷を手当するルビックさん、「息子」だと庇うモランさん、
ジョルジュとの関係を何とかしようとするポーラ、エドに出合って今ある
環境からの脱出を試みるマリー、ポーラの心が欲しいジャン、
最後にナチスを撃ちまくって死ぬジョルジュ
ナチスに擦り寄りつつ利用しようとする「バラディ」の女将・・・
みんな「心のレジスタンス」を抱えて、それがラストの国歌に繋がった
んでしょう
全員で「ラ・マルセイエーズ」を歌うシーンは、多分に「カサブランカ」の
影響でしょうが でもやっぱりいざと言う時は「国歌」なんだよなと。
この盛り上げ方は上手だったなと思います。
ナチス将校のハイマンもただ怖いだけの人じゃなくて、十分にマリーを
愛していたわけだし?
それもまた一つのレジスタンスなんだと・・・・・なんと深い作品なんでしょう。
こんな作品に出会えた凰稀かなめというスターは運がいいのよね。
その運のよさを意識しつつ精進して欲しいです。