よし坊のあっちこっち

神出鬼没、中年オヤジ、いや、老年オヤジの何でも有りブログだ!

映画三昧 - Driving Miss Daisy

2012年09月15日 | 映画
アメリカの宿命でもある人種問題、それを南部を象徴する町アトランタを舞台背景として、ほろ苦くも暖かい人間交流の中で描いた佳品である。

ジェシカ・タンディの代表作だが、モーガン・フリーマンにとっても代表作の一つであろう。息子に充てがわれたアフリカ系アメリカ人(従来表現でいう黒人)のお抱え運転手になかなか心を開かない老婆が、次第に心の扉を開いていく様を、日常の中で淡々と描いている。地味だがゆっくりと、暖かくなっていく映画だ。

この映画の中で印象深いシーンのひとつに、アラバマの町モービルへ遠出をする場面がある。運転手が言う。「ジョージアを出るのはこれが初めてだ」。白人のように簡単に車を持てる時代ではななく、移動手段がないのだ。途中彼らはハイウェーパトロールに止められ職質される。この場面は、アメリカの抱える代表的な人種問題を凝縮したような場面だ。警官は二人の白人である。この白人は、よし坊の目から見れば、単なる白人ではなく、その背後にKKKを背負っていそうな雰囲気のする白人なのだ。長い間迫害され続けるアフリカ系アメリカ人、ユダヤ系アメリカ人ということで決してハッピーな取り扱いを受けていない老婆の白人、そして純血主義を守りたい白人。そんな人種の目に見えない対立構造をこの場面に凝縮し、それぞれの思いを残して、何事もなかったかのように場面はお開きとなり、次のシーンへと移る。

老婆は自分の受けた差別の共通項を運転手が受けてきたであろう差別に見出し、だから心を開くことが出来た。

アメリカは、人種問題とともに歩く国、だ。

映画三昧ー風と共に去りぬ 今アトランタに暮す

2012年09月10日 | 映画
確か平凡社版だったと思う。分厚い「風とともに去りぬ」を読み終わり、南北戦争を背景としたこの壮大な物語で、アメリカにジョージアがあり、アトランタがあることを、中学生のよし坊は初めて知った。

それから暫く経って、日本で映画が封切られた。日本での初公開が1952年との事であるから、恐らく二回目の公開時期だったのかも知れない。この映画に、実に5回も観にいったのだ。劇場公開で二回以上観にいったことは、後にも先にもこれ以外に無い。あの「タイタニック」で4回も5回も観にいったというのをアメリカで聞いたが、当時のよし坊は正にそれである。何よりも初めてビビアン・リーを観てすっかり魅了されてしまったのだ。この映画で彼女とクラーク・ゲーブル、レスリー・ハワード、オリビエ・デ・ハビランドが四点セットとなった。映画の場面ではとりわけ大火のアトランタを馬車で脱出するシーンは圧巻そのもので、小説で初めて接したジョージア州アトランタが具体的イメージとして頭に埋め込まれたのは間違いない。

今、アトランタに暮らしている。つらつら思うに、決して偶然ではないのだと思う。あの映画が無意識の羅針盤をよし坊の意識の中に植え付けたのではないか。

次にアトランタに接するのは1987年になる。当時仕事で最低年一回はスポーツの祭典、スーパーショウを見る為にアメリカに来ていたが、アトランタ開催となって二回目のこの年、その土を踏むことになる。前年JALはデルタと共同運航でアトランタ直行便を就航させた。登場記念にJALとデルタ共同のネームタッグを貰ったのを覚えている。残念ながら、その後ショウの開催は他州に移ってしまい、1995年にアトランタに駐在するまでは縁が途切れてしまった。

1994年、入社以来長年仕事をしてきた部署から突然他部署、正確には関連会社への異動となった。会社には毎年自己申告制度があり、現業以外で働きたい分野を書く欄があった。馬鹿の一つ覚えのように化成品関係を希望として書いてはいたが、大会社故のセレモニーと思っていたものだ。事実入社以来20数年何も起こらなかったのだから。ところがそれが忘れたころに起きてしまった。

後で分かったことだが、アメリカで新会社をスタートさせる為に白羽の矢が立ってしまった。しかもジョージアはアトランタとくれば、何かの因縁があるとしか思えない。5回も観たビビアン・リーのあの映画が知らず知らずのうちによし坊をアトランタに導いたのかも知れない。

無いようで有りそうな、映画と人生の関わり、かな。

映画三昧 - Ashley Judd

2012年04月23日 | 映画
アシュレイ・ジャッドは可愛らしい女優である。彼女を初めて観たのが、サミュエル・ジャクソンのTime to Kill。弁護士マッコノヘイの奥さん役でアレっと頭の隅に入り込んだ。本格的に注目し始めたのは、モーガン・フリーマンとの映画 Kiss the Girls。なかなかいい女優だと思い、その後のトミー・リーと共演した「Double Jeopardy」で強い印象を与えてくれた。以来彼女の映画は極力観ることにしていたが、いつの間にかスクリーンでの露出が減っていった。しかし、彼女は今放映のTVドラマ「Missing」で久しぶりに元気な姿を見せてくれた。

その彼女が昨年本を出している。サマリーと彼女のインタビューを観て、露出減の理由の一端が分かったような気がする。もちろん結婚した事も大きいが、本で告白しているように、幼児期にChild Molestationの犠牲者だったことが、彼女の中でのトラウマとなっていた事が影響しているようだ。

アメリカは離婚再婚が多いので、当然女の子は養父からのMolestationを受けやすい。著名なカントリーの歌い手を母に持った華やかさの陰で、多感な時代を孤独な環境で過ごし、その間にMolestationの犠牲となったのだから、その苦難は相当なものだったのだろう。

テレビドラマのMissingも次の回で終わるが、もっと映画に露出を増やして欲しい女優である。


映画三昧 - 萌の朱雀

2012年04月19日 | 映画
「萌の朱雀」をふと観たくなって、久しぶりにビデオ棚の奥から引っ張り出した。10何年ぶりだろう。当時中学生で、初々しかった尾野真知子が最近ブレークしたせいもある。初々しかった彼女はその後の映画で、不思議なオーラを発する、いい女優になったと思う。久しぶりに尾野真知子の起点を観てみたくなった。

この映画が好きな理由がある。映画の舞台が西吉野村。関西に慣れ住み、ワイフの実家が吉野ということで、それだけで身近なものになる。出てる俳優が「知名度プンプン」でないからいい。知っていると言えば國村準くらい。それ以外はローカルの俳優と地元のおじちゃんおばちゃん。過疎の村が時代に翻弄される中で、彼らが、その家族が、なす術も無く崩壊していく様が、何十年、何百年と身じろぎもしなかったような周りの山々との叙景的な対比で、淡々と語られていく。質の高い香りが漂う、佳品だと思う。

よく、吉野を訪れていた頃、そこを起点にして川上村や天川、大塔へ繰り出した。山道を車で走っていると、山の中腹に使われていない、ちょっと真新しいトンネルを二つ三つ見ていた。当時は「何故?」と思うだけだったが、これらが、映画の背景でもある五条と新宮を結ぶ国鉄五新線(計画中止)の未完の残骸だとは知らなかった。

映画の冒頭の緑一色の画面。画面いっぱいに揺れ、ざわめく緑の木々は、極めて印象的で、よし坊には途轍もなく好きなシーンだ。

映画三昧 - The Debt

2012年02月17日 | 映画
ヘレン・ミレンのThe Debtを観た。

物語は、かつての東西冷戦下で遂行した3人のチームによるミッションの失敗を隠蔽し、ミッション成功の英雄の一人として生きてきた年老いた主人公が、過去の隠蔽が明るみに出る事実に直面し、意を決して過去の隠蔽の「ツケ」を払う為に最後のミッションに向かうという筋書きである。

この映画を観て考えた。人間生きていりゃ、いろいろ有る。罪を犯せば服役で取り敢えずツケは返せる。しかし、犯罪とは違った形で、人には言えないツケを負う事もあるはずだ。何かに失敗して負うツケもあるだろう。何もしなかった後悔で負うツケもあるだろう。ま、「人生のツケ」とでも言えばいいのだろうが、これをどこで、どうやって返すかとなると、難問だ。いまだに、よし坊の「人生のツケ」は何なのかも、分からないのだから、その先は皆目分からない。

きっと、ツケを残したまま、サヨナラするというのが筋書きかもしれぬ。


映画三昧 - The Girl with the Dragon Tatoo

2012年01月27日 | 映画
スェーデン映画の「ドラゴン・タトゥーの女」を観た。昔の未解決事件をジャーナリストと背中にドラゴンの刺青を入れたミステリアスな女性ハッカーの異色のコンビで解決していく、なかなか面白い映画である。

過去の失踪事件を軸に、ヨーロッパ映画やスェーデン映画に共通のテイストが織り込まれている。ヨーロッパ映画で戦争を取り上げれば、ナチスが出てくるが、スェーデンという中立国は、当時は中立国であるが故にスパイの交差点でもあり、また、ナチス、反ナチスが葛藤する場でもあった。又、スェーデン映画といえば、あのイングマール・ベルイマンの、神と近親相姦のテーマを思い出さざるを得ないのだ。この映画の最後で、失踪者の失踪理由が明らかにされるが、暴力的な近親相姦からの脱出であった。

もうひとつ、欧米映画でも特にヨーロッパ映画を観る時、聖書が隣り合わせである。殆どの日本人は聖書やその物語に馴染みが無いから、もうひとつピンと来ない事が多々ある。日本人が海外に出た時、何が必要かというと、恐らく、ギリシャ神話と聖書に関する若干の知識であろうか。これがあると面白さも倍加するのだろうが、残念にも、よし坊にはそれが欠如しているから、時々分からなくて悔しい思いをするのだ。

現在、ハリウッド製作のダニエル・クレイグ主演のリメイクが上映されているが、リメイクしくなるのがよく分かる。オリジナルを観た今、これを観るべきかどうか、迷う所だ。恐らく観ないだろう。良くも悪くも、基本的にはオリジナルを大事にしたい。

映画三昧 - オードリー・ヘップバーン

2011年12月05日 | 映画
「麗しのサブリナ」のタイトルではないが、この女優ほど、「麗しい」の形容詞が相応しい女優はいないと思う。

初めて彼女の映画を観たのは、やはり「ローマの休日」だった。いつ観たかは覚えていない。高校の時、新宿名画座か池袋文芸座のどちらかだろう。なんとも清楚な、麗しい瞳に魅了されてしまう。最初に観るべき彼女の映画は何かと問われれば、やはり「休日」をおいて他に無いだろう。ストーリー良し、相方のグレゴリー・ペック良し、スペイン観光これまた良しで、最後の記者会見のシーンも何ともジーンとくる。最後に残ったペックの足音が印象的である。

彼女の映画では、その共演者の印象も強い。「サブリナ」のウィリアム・ホールデンとハンフリー・ボガード、「ティファニー」でのジョージ・ペパード、「シャレード」では、ケーリー・グラント、そして「昼下がりの情事」でゲーリー・クーパーと共演している。「暗くなるまで待って」ではリチャード・クレンナがワルで登場。ワルと言えば、「シャレード」で、あの「おかしな二人」でジャック・レモンと共演したウォルター・マッソーが悪役で登場していたのが、懐かしい。

トップを張った女優は数あれど、オードリーほど幅広く支持を得た女優はなかなか見当たらない。

映画三昧 - 白い巨塔

2011年09月19日 | 映画
役者、俳優には代表作と呼ばれるものがある。雷蔵の狂四郎であり、勝新の座頭市であるならば、田宮二郎のそれは紛れも無く「白い巨塔」である。

映画の白い巨塔は良かった。田宮が漸く辿り着いた作品であったろう。しかし、同じ田宮の主演で1978年に放映されたテレビドラマの白い巨塔は、映画の巨塔を超える出来映えと言ってもいい、そんなドラマだったと思う。象牙の塔の中で、権力を目指す財前五郎は、大映でトップスターという「権力」を目指しもがいていた田宮の陰影と二重写しとなりドラマに深みを増しているように見える。田宮と反対の極にいる山本学も良い出来だし、愛人役の大地喜和子が、すこぶる良いのだ。その後、他の俳優でリメイクもあったが、田宮の巨塔には迫れない。

田宮二郎が生きた時代がある。
鼻っ柱の田宮が大映のニューフェイスとしてデビューした大映は、時代劇の大映で、看板は雷蔵、勝新。現代劇では川崎敬三、船越栄治などで、所謂文芸路線かそれに近い物が主流であり、彼を活かす企画は、軽い物にならざるを得なかったのであろう。勝新の「悪名」で飄々とした清次を好演しても、主役ではなかった。だから、映画の配役序列にも拘り、暴君永田雅一の逆鱗に触れてしまった。

映画が斜陽に向かう中、トップスターへの階段を上がろうともがき、そして規制の強い映画界で、その場を失ってしまった。不本意ながら、時代の流れがテレビに傾く中で、渾身の力を込めてぶつけたのが、31話にも及ぶ連続ドラマ「白い巨塔」だ。

最終話の放映を待たずに命を絶ったと聞くが、最終話の「最後」の演技が、「最期」の演技にダブルのは考えすぎだろうか。

「白い巨塔」は、間違いなく田宮二郎の代表作である。

映画三昧 - The Counterfeit Trator(偽の売国奴)

2011年08月06日 | 映画
スパイ小説も映画も、第一次及び第二次大戦下でヨーロッパを舞台にしたものが、圧倒的に面白い。だから製作も必然的にヨーロッパ物となる。007張りの派手なアクションも悪くはないが、淡々と描かれる中でのスリルとサスペンスが最も良い。そして、ヨーロッパを舞台にするならば、Spyと言う言葉よりは、フランス語から来たEspionageの方が、響きがピッタリくるような気がする。

昔、日本で観た映画に「偽の売国奴」と言うのがあった。ウィリアム・ホールデンとリリー・パルマーの主演だ。何故この映画が印象に残っているかと言うと、最後の方でリリー・パルマーが鉄格子の中から、冷酷にも去っていくホールデンに助けを求めているシーンが脳裏にこびりついているからである(実はこのシーンは記憶違いであることが今回分かった)。

物語は、中立国スェーデンのビジネスマンが、ナチス協力者にでっち上げられ、否応なしに連合国側のスパイにさせられる。スパイとしての協力者達へのツナギのサインも古典的で良い。コペンハーゲンではナチスの将校に街で見破られるが、レジスタンスの咄嗟の抵抗と反ドイツの市民達の自転車による妨害も小気味良い。レジスタンスの協力で最後はスェーデンに帰る話だ。

「偽の売国奴」の原題名は何だったのか、思い出せないので、ホールデンの作品から辿って、ようやく、Conterfeit Tratorに行き着いた。実に40数年ぶりにこの映画を観たが、その面白さはいまだに衰えていない。

問題の記憶違いのシーンは、パルマーが処刑されるのを目の前にして、鉄格子のJailからホールデンが彼女の名前を叫ぶ場面だった。何故、逆のシチュエーションと言うか、パルマーが鉄格子の中で、ホールデンが去って行くシーンになってしまったのか、分からない。

ホールデンといえば、ヘップバーンと共演した「麗しのサブリナ」とか、西部劇で意欲的な作品に仕立てたペキンパーの「The Wild Bunch」、もっと古いところでは「第17捕虜収容所」等が記憶に残っているが、よし坊は「偽の売国奴」が一番好きである。

映画三昧 - 太陽の墓場と炎加世子

2011年07月01日 | 映画
炎加世子という女優がいた。この女優を思い出す時、篠田正浩の「乾いた湖」の大看板を思い出す。あの大看板を横目で見ながら、何となく伝わってくるズベ公的なキャラクターに胸がドキドキしたもんだ。彼女は彗星のように現れて、いつの間にか何処かへ行ってしまった。

現代劇の松竹のこの頃は、篠田正浩や大島渚が次々と意欲的な作品を出していた。その一つに大島の「太陽の墓場」がある。

戦後、といっても昭和34-5年頃の大阪のドヤ街に生き、アッサリと死んでいくチンピラ連中の、泥臭く、バタ臭い底辺のどうしようもない、そしてギラギラした生活を描いていて、今観ても面白い。津川はやはり男前だ。弟分でどこか弱そうな佐々木功、在日役の渡辺文雄。その他は、佐藤慶、田中邦衛、小松方正、伴淳、戸浦六宏、小池朝雄など等、今となっては涎が出る連中だ。これにあの炎加世子が加わる。彼女の作品は全て体当たり演技というやつで、汚れ役が活き活きとする。今の時代、こういうタイプの女優は出てこないのか、それとも来れないのか。

秀逸は、北林谷栄だろう。この女優は、何と言っても「おばあちゃん」役がはまりであるが、ちょっと年増のアバズレやワルをやらせると、抜群の迫力がある役者である。

炎加世子よ、何処へ行ったのだ。