よし坊のあっちこっち

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師匠の話ーネバーギブアップ

2007年04月09日 | いろいろ
我が師匠の話をしていきたい。以前書いた「火事だ」の沈着冷静な上司殿である。名前はkkさん。よし坊より約20年先輩である。この先輩から直接間接に様々なことを学んだ。彼は、師匠と思われていることは、ゆめゆめ知るまい。しかし、彼はまぎれもなく、師匠である。

入社配属された部署で新事業を立ち上げた。既に先発企業がいたが、向こうは外国技術、こっちは自前技術での立ち上げだ。しかし、世の中、先発と二番手ではこうも違うのかと思う位、距離が離れている。二番手は先発を追いかけることから始まるが、追いついたと思うと、スーッと先発が先へ行ってしまう。だからなかなか抜けない。これ即ち「二番手の宿命」と言う。

さて、意気盛んに先発追撃を始めたが、市場は手ごわい。立ち上げ2年のところでとんでもないことが。品質クレームである。素材の構造劣化から素材にひび割れが起こった。kkさんはこの技術の開発者にして、技術の元締め、そして工場長である。が、原因究明は、そう簡単ではない。時間がドンドン経つ。ついには、この事業を続けるか止めるか、の議論までになった。

結局、過酷な使用環境に使われる特定分野は、一時撤退、問題の少ない分野での事業続行となった。そして、事業の経営責任者は退陣となり、開発者であるkkさんは、工場長の任を解かれ、戦犯の如き扱いにて、本社勤務の閑職となった。

サラリーマンの閑職とはいかなるものか。それを真近かに見させた貰った。まず、今まで本社に無かった部長席が出来た。しかし、机は一つポツンと離れ小島。閑職とはなったが彼は生みの親として執念を燃やしていた。原因究明だ。彼には、コレではないか、という一つの推論があったが、証明しないと断定できない。閑職だから表立って動けないので会社の金は使えない。殆ど自費でやるしかない。彼の推論はカビによる構造劣化。カビが素材を食べるのだ。対策を打った素材を土中に埋め、カビに食べさせて耐えられるか、それとも食べられてしまうか。一年の辛抱が始まった。

推論どおり、カビであった。矢継ぎ早に対策が打たれ、再挑戦が始まった。以後、この製品、先発品に比べ、触感は相変わらず悪いが、カビによる構造劣化には抜群に強い製品として評価が定まった。

当時は、よし坊も駆け出しのペイペイ。直接話す機会など殆ど無く、ただ横で事態を見ているだけ。開発者であるが故に、自分の子供を再生蘇生させる為に見せた師匠の執念には驚くばかりの新人よし坊だったが、このカビ研究で師匠が右目の視力を失っていたと知るのは後のことである。