よし坊のあっちこっち

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アトランタで大岡裁き、ユニークな街サウス・フルトン

2019年04月12日 | アメリカ通信
アトランタ空港から南西に30分、2016年に市制が敷かれたサウス・フルトン市がある。実はこの町、頗るユニークなのである。何がユニークかと言うと、その司法システムにある。裁判官や検察等、司法の中枢を占める8人全員が、アフリカ系アメリカ人(以下アフリカ系)であるだけでなく、すべて女性で占めているからだ。適任者を選んだ結果、たまたまそうなったようで、全米でも滅多にお目にかかれない司法チームの誕生となった。更に注目すべきは、アメリカにある、ありきたりの司法の在り方に疑問を持ち、住民やコミュニティに寄り添う独自の司法の在り方を模索し、チャレンジしようとしていることだ。

アメリカの司法が公正・平等かと問うならば、多くの人が否と答えるであろう。例えば、不審者の少年(但し人種は特定されていない)を探す為の職質。白人の少年なら怪しいところがなければ即座に放免になる。しかし、アフリカ系であれば、怪しく無くても、相当しつこい職質がなされ、時には小突かれ、もっと酷い扱いを受けることもある。この段階で既にバイアスがかかっているから、公正平等な取り扱いなど望むべくもなく裁判に持ち込まれる。

市は、こうした現状に風穴を開けようとしている。社会の綻びが犯罪を生む、との観点から身近な社会としてのコミュニティを大事にし、住人相互の尊重を促進する教育的キャンペーンを実施し、取組の目玉として新しい制度を導入した。

目玉の眼目は、軽度の犯罪者を立ち直らせる公判前審理とも言うべき特別プログラムである。この審理で、裁判官は①コミュニティ・サービス ②エッセイ作文 ③市議会傍聴 ④ペアレンティング/アンガーマネジメントクラスの受講
のいずれかを言い渡す。このプログラムを無事終えれば、Jailに入らなくて済むし、払えない罰金も軽減出来る。何よりいいのは、犯歴が記録には載らないから、以後更生すれば後々のScreeningにもかからないで済む。

どんな軽微な犯罪でも犯歴として残れば、以後関係ない事件でも必ず捜査対象者に上るのが世の常である。その為に人生に落ちこぼれ再度犯罪を犯す例は多々ある。六法全書をかざして無味乾燥な審理をするのではなく、個人の生い立ちや置かれているバックグラウンドを考慮し、再犯防止を図ろうとする市の取組みは、まるでドラマの大岡裁きに似ている。