よし坊のあっちこっち

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ボーイング腐敗の構造

2020年09月16日 | ビジネス横丁こぼれ話
優れた会社と言えども、腐敗の芽と無縁ではない。巨大組織の中では、下部の意見は無視され、思わぬ方向に誘導され、その結果、事故が起こることがある。

かつて世界の空はボーイングとダグラスが二分していた。そこに欧州のエアバスが参戦、ダグラスはボーイングに吸収された。ジャンボ機で世界を席巻したボーイングも長い時間と共に腐敗が静かに進行していたようで、記憶に新しい737MAXの2件の墜落事故で明らかになったのは隠蔽腐敗の構造であった。

新しい航空機が空を飛ぶには自動運行を可能にする運航ソフトが運航シミュレーターで確実に機能することの認証を受けるとともに、それを操縦するパイロットはそのシミュレーターで既定の訓練を受けることが義務付けられている。
ところが、新しい運航ソフトの開発とそれに基づくパイロットの訓練は、ボーイングにとって大きなコスト負担となる。このコスト負担を逃れ、新鋭機を一刻も早く世に出そうと、ボーイングはとんでもないシナリオを考え、会社全体を誘導していった。そのシナリオとは、 ① 737MAXは既に世界中で飛んでいる従来の737型機の改良バージョンであり基本は737型従来機のソフトで問題なく運航可能。 ② 従ってシミュレーターによる新たな訓練は不要、とした。新しい機種でありながら、”従来型の延長”としてプレゼン、まんまとFAAを煙に巻き認可を取り付けた。そしてインドネシアとエチオピアで墜落した。

開発途上の現場では同僚間で様々な会話が飛び交っていた。事故調査委員会が入手した内部メールやテキストメッセージから現場の危機感が窺える。
① 「機体デザインはクローンがしたが、それを監督してたのが誰だか知ってるかい?猿だよ」 この会話から新機種にはデザイン上問題があった事が窺える。事実、認可以前に、ある条件下で機首が上に向き、墜落すると指摘されていた。
② 「この飛行機に家族を乗せたいと思うかい?俺は絶対乗せない」
③ 「FAAに対するプレゼン、誰が聞いてもチンプンカンプンだ」

新運航ソフトでシミュレーター訓練した社内のベテランパイロットは”乗りこなすには相当な訓練が必要”と具申したが、その声はかき消された。新運航システムでの訓練の重要性を極度に矮小化して認可を受けやすくし、利益を優先し人の命を二の次としたボーイング。やがてツケは回ってくるだろう。