よし坊のあっちこっち

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ウクライナ戦争 ハイテク職人の戦い

2022年10月04日 | アメリカ通信
ロシアのウクライナ侵攻はウクライナの粘りと西側NATOの支援でロシアは予期せぬ泥沼化に入り込んだ。この戦争の大きな特徴は、ウクライナの効果的な無人機ドローンの活用だろう。ロシアはドローン攻撃で大きな被害を余儀なくされている。この活躍の背景には、ウクライナのハイテク職人とも言える民間集団が活躍している事はあまり知られていないが、そのルーツを辿ると興味深い。

ウクライナは元々エンジニアリング立国、技術集団なのである。その象徴が「Igor Sikorsky」であろう。世界で最初に飛行機を飛ばしたのは有名なライト兄弟だが、その後現在に至るまでのヘリコプター、戦闘機、旅客機の航空産業の基礎を築いたのがウクライナ出身の「Igor Sikorsky」である。

帝政ロシア下、現在のウクライナのキーフで生まれたシコルスキーは19歳の時、ドイツでライト兄弟の偉業を目の当たりにし、人生の進路を航空機作りに決める。以後次々と試作品を開発していくが、1917年のロシア革命で身の危険を悟りパリ経由でアメリカに移住する。1923年Sikorsky Aviation Companyを設立、現在のヘリと航空機の基礎を作りアメリカ航空機産業へ多大の貢献を果たし、ウクライナ系アメリカ人として人生の幕を閉じた。今、その名前は「Igor Sikorsky Kiev国際空港」として名を留めている。

理不尽なロシアの侵攻は”もの作り”の伝統を背景としたウクライナの職人気質を蘇らせることになった。国家存亡の危機に国家の要請に応えて軍のサポートに立ち上がったのが、一民間人のハイテク職人ユーリ・ヴラシュクである。

2007年サンフランシスコで科学技術分野で活躍する職人達が世界中から集い、アイデアや経験を交換する”Maker Faire”がスタート、ヴラシュクは常連となり、ウクライナでの活動の中心人物となった。一方、2014年のロシアによるクリミア強奪を契機にウクライナは航空監視及びドローン攻撃を任務とする部隊を創設した。今回のロシア侵攻により大幅な航空監視体制と大量のドローンが必要と判断した部隊は既存のドローン大量買付けを前提に攻撃性能アップが不可欠と判断し、ヴラシュクを招き入れたのである。彼の呼びかけでウクライナ全土から技術者や職人が参集、ドローンの改良・補修・整備に必要な生産体制を作り上げ、前線での対ロシア攻撃の正確性、優位性を見事に証明した。