新幹線は高架なので地域一帯の様相を俯瞰することができる。八月、姫路に行った折に気づいたこと、ひとつ。
静岡、浜松、名古屋など、大都市周辺の水田地帯の多くが畑作に転用され、場所によっては鉄骨で骨組みを作ったハウスが幾棟も連なっていた、ことである。
TTP交渉に当たって相変わらず農業団体の反発が続いているが、元をただせば農業の生産性の低さが原因である。結果、普通に農業を生業としていては生活が成り立たないので、農業人口は低下、高齢化がどんどんすすみ、農業生産人口は全産業の4%以下でしかない。いくら補助金を出そうとも、どうにもならなくなっているのは、農家自身が一番よく知っているのだ。都市周辺の農家が前述のようなハウス栽培に活路を見出そうとしているのは、そうした従来の補助金農業に対するひとつのアンチテーゼである。
生鮮食品を扱う農家は都市に近い方が有利である。都市の需要に即応できる。これを実現するには天候に依存する農業から、自然を管理する農業=ハウス農業に移行する以外にない。もっと進めば、作物に応じて肥料、温度、日光を調整し、いつでも適量を生産する工業的な仕組みにしていくことである。そして長距離の輸送による歩留まりの悪さを軽減することが最も重要になる。
都市近郊のハウス栽培はまだ序の口だろうが、新幹線の高架から見える農業の姿に将来の希望を見た気がしたのであった。
農業の生産性については、米の場合の反当たり収量は天候に恵まれた場合で、1反(10a)当り、普通米で10俵。この収量はここ十数年変わらない。絵のように米はたわわに実るのだが。【彬】