新宿区では、少し前の11月16日に区長選があった。そして、またまた国政選挙である。旧友の市役所職員が「選挙って金がかかるんだよね」とつぶやいていたことがあったが、民主主義というのは金がかかるのである。だから経済が豊かでない国や地域では、民主主義が成立しない。
新宿区の場合、自民・公明推薦の候補と共産党系の女性候補の戦いとなり、自民・公明推薦の区長が誕生した。どちらが勝つか、私は特に関心を持たなかったが、投票率が25.6%とということに、今更ながら考えることがあった。
この選挙、投票率が25.6%とというのは、実数に換算すると、有権者総数98万人に対し、投票したものが、26万人ということになる。こんな少数者で決定して良いのだろうか? という疑念は当然あるのだが、そもそも、区長=つまり区というのは、どんな仕事をしているのか、ということとかかわるのだろう。多くの区民は、住民登録、つまり戸籍の管理をして、何やらの証明書を発行するところくらいの認識だと思える。戸籍関係ということから義務教育、婚姻、死亡、生活保護などがかかわるくらいというのが普通の理解だと思われる。
そういう自治体認識であるのに、区長選や議員選などでは、候補者は住みやすい環境づくりとか、地域の活性化などと訴える。候補者がそういう現実性のないものを公約として掲げていること自体が、投票率の低下、あるいは区政の無視につながっているのではないか。そして議会が始まれば、平和都市宣言とか、原発反対を決議するとか、国政のまねごとをしているのである。たわけた話である。
区政の範囲を確定し、そこでの問題を争点とする、そうした選挙でありたいものだ。私は支持しないが大阪市長の橋下さんが問題提起しているのは、そういうことである。自治体のあり方を作り替える、そうした行政であってほしいものだ。
新宿区の場合、私なら、まず清掃事業を充実させることを第一義とする。新宿のような商業地域では、ゴミの量は膨大である。現在はこれを産業廃棄物と家庭用廃棄物に分け、普通ゴミは週2回、資源ゴミは1回の割で収集している。これでは十全に回収しきれない。小回りのきく小型の収集車で毎日早朝に回収することで、ゴミの放置やカラスなどの被害から免れるというものだ。これこそ自治体の最重要課題と思う。処理施設など、ガスや臭いの出ない高度な施設を作れば済むことである。その廃熱はいくらでも有効活用できる。
こうした政策案は次々と出てくる。例えば銭湯の充実である。都内各地で、スーパー銭湯が活況を呈している。日本人にとって入浴は生活活力の源なのである。銭湯を区政を尽くして充実させたい。などなど。少子化対策とか地域再生とか、国政のミニュチアばかりではほんとうに情けないのである。投票率が25%というのは、そういう情けなさの反映であることを議員たちはよくよく考えるべきである。
国政選挙も同じ構図をなぞっているのでないか。今回は自民党の独走で、少数政党の立ち位置が不明確である。マスコミに踊らせられているとしか思われない公約とかマニュフェストでは意味はない。
私は白票を投じる以外にない 【彬】
絵は冬でも荒々しい葉をつけるタイサンボクです。