私の所属する、某絵画愛好会では、毎年5月に会員の作品展示会が開かれる。私は自分の展示作品の一つに、無謀ながら19世紀イギリスの画家、ジョン・エベレット・ミレーの「オフェーリア」の模写としました。
以前、この絵を画集で見たとき強い衝撃を受けたのです。「川に浮かぶ女性の屍。こんなものが絵のモチーフになるのか? それにしても、美しい。」
この「オフェーリア」という絵は、私の関心のある、3人の天才が交わっています。
① まず、シェークスピア。「ハムレット」のなかの主人公の恋人オフェーリアが、川に身投げしたシーンが絵のモチーフになっています。
② 二人目は、画家、ミレー本人。この1852年発表の「オフェーリア」は19世紀イギリス、ビクトリア朝時代の絵画の中でも傑作中の傑作、と評価されています。
③ 3人目は、フランスの19世紀の、詩人、ランボー。このミレーの絵から想を得て詩を詠んでいます。タイトルは、“オフェーリア”。
私は、①~③が大変好きです。
・ハムレットは、英語の原文で読みました。オリジナルは400年前の古文なので現代英語に訳したものですが。
・ミレーの絵は、以前、東京の美術館で「オフェーリア」の原画展覧会が開催された時、さっそく足を運びました。
・ランボーの詩、“オフェーリア”は、堀口大学の訳で味わいました。
以前、このブログで絵の鑑賞方法に、模写というやり方があると書きました。だがこの「オフェーリア」は模写はできません。あまりにも精密で美しく、とても模写という発想は沸くものではありません。今回、ただ似せて描こうとしただけです。
ところで、出展作品に古典絵画の名作「オフェーリア」の似せ絵にしたのには、現在的な理由はありません。私は、芸術作品の古典が好きなだけです。どれだけ古い作品でも優れたものは常に現在に受け入れられると思うのです。その中の好きな一つを選んだのです。 5月22日 岩下賢治
*絵は「オフェーリア」の概略。展示作品ではありません。