軽減税率を巡って自民党と公明党の攻防が続いている。自民党の税制のプロと目されている野田税務調査会長が解任され、宮沢氏が後任になったが、与党内で、なお紛糾が続いているらしい。
私は以前、消費税の増額が取りざたされていた時に指摘しておいたが、消費税は、今日のような消費社会ではもっとも公平な税制で、すべて消費税に一括すべきだと述べておいた。これは吉本隆明さんの受け売りに過ぎないのだが‥。その際、軽減税率には反対だとしていた。というのは、消費が中心の社会では、詐欺とかといった不正な取引がない限り、消費面で誰かが損得の影響を受けることは無いからである。だから多く消費した人は多く税金を払うのである。金持ちは多く消費するだろうから当然多くの税を支払う。消費に人格や貧富の区別はないのである。
ところが、現在問題になっている軽減税率は、食料費を非課税にするという案。低所得者は食料費の負担が大きいからだと。この考え方は本当に低所得者の救済になっているのだろうか。生鮮食品でいうと、今日、低所得者ほど生鮮食品の購買はすくないはずだ。コンビニの弁当やパック詰め総菜、それに冷凍食品などは、低所得者のための商品だといって差し支えないのだ。公明党は生鮮食品だけでなく、加工食品もふくめるよう求めているが、加工された食品というのは、どんなものを指すのか。高価なケーキは加工食品なのか、レストランの高額な和牛は、どういう扱いなのか、問題を出していくときりがない。だから、軽減税率は低所得者の救済にはまったく寄与していないということが、経済学者のほとんどが一致した考え方らしい。
にもかかわらず、自民党や公明党がこの法案をごり押ししているのは、議員たちの無知からではないと思う。公明党の大部分の議員たちも、軽減税率の無駄を理解していると思う。しかし、現実にはそうはなっていない。
これはなぜなのだろうか。
理想とすべき未来が見えないので、自分たちの圧力団体の要望を最優先しないと、政党の存在が危うくなるからである。沖縄の辺野古移設問題、反原発などにも同じものを感ずる。将来像が描けないので、特定のイデオロギーや公約といった政治性が過剰になっているのである。
政治が関与すべき領域は、本当はすくない方がいいのだ。が、今は逆で、政治が過剰に求められている。あまりいいことではない。【彬】