七夕は丁度梅雨の季節。雨が降らずとも、うっとおしい時期にある。それでも、竹の笹の葉に飾りをつけ、短冊に願いことを書いて外に立てるとどこか爽やかな気持ちになる・・・。
七夕の時期は、僕には、幼少の頃からの、楽しくも、切なく、不思議なイメージを引きずっている。字や文章もよく書けない頃から、何か願い事を短冊に書いたり、織姫と彦星の逢瀬の話を聞き、切なくも嬉しい気持ちになったりしていた、と思う。そのころから、七夕の夜は、曇って星が見えなかった。周囲の大人たちは、「今日は曇って、天の川はみえないね。」と話していたが、見えたとしても、いったい、どんなものなのか、大人たちも知らないのではないかと、僕は疑っていた。
そして、ある七夕の夜。珍しく晴れた夜空に星が見えた。大人たちが、「今日は天の川が見えるよ。」いうのを聞いて、空を見上げた。そのとき、星たちは見えたが、天の川が、見えたのかどうか、覚えていない。
物事がわかる年代になると、七夕の飾りも、短冊の願い事も、関心が薄れてきた。そして、天の川は、自分の住んでいるところからは、見えないものだと、確信するようになった。
そして、今。
家の軒先、や、いろいろな施設に七夕飾りを見る。短冊には、幼い字で願い事が書かれている。ああ、七夕の季節かとおもう。七夕あたりの夜は蒸し暑く寝苦しい。浅い眠りの中で、七夕らしき夢を見ることがある。
・・・僕は、人魚が住むという海の中に潜り、水中散歩をしていた。そして、人魚たちに導かれ、竜宮城に迎えられていった。そこで、長い年月を重ねた。もう、自分の家に帰らなければならない。・・・眼を覚まさなければならい。
人間世界に戻った時のイメージを絵にしてみた。星空に、天の川が流れる。どうやら僕は亀として描かれているようだ。となりに人魚姫がいるので姿を変えたのかもしれない。
2017年7月8日 岩下賢治