先日、友人たちとの食事会の中、僕が「外国の詩などは、原文と翻訳は別物だ。翻訳されると、翻訳家の感性を通し別の作品になる。」のような話をすると、中の一人が、「それならば、ノルウェーの森を翻訳してみたら?」と応えがあった。外国の詩を日本語訳で親しんできて、外国語の原文に触れ驚くことがある。原文は意外にシンプルでストレートな表現なことが多い。日本語訳でのような感動が得られないことがある。様々な点で違いがある。文化の違いと言ったら大袈裟だが。
さて、ノルウェーの森を以下翻訳してみた。英語は難しいものではないが、意味不明なところもある。あくまでも、英語の原文がすべてだ。ぎこちなくない直訳が大切、と考えた。
Norwegian wood.(This bird has flown) ノルウェー木材の部屋(鳥は飛んで行った)
I once had a girl 僕には、昔、恋人がいた。
or should I say she once had me というより、彼女が僕を恋人にしていた、と言うべきなんだ。
She showed me her room 彼女が、僕を部屋に招き入れた。
Isn’t it good, Norwegian wood とてもステキな、ノルウェー木材の部屋じゃないか。
She asked me to stay 彼女は僕に、「ゆっくりしていってね」と言った。
And she told me to sit anywhere そして、「どこに座ってもいいわよ」、とも。
So looked around それで、見回してみると、
And I noticed there wasn’t a chair 椅子ひとつないじゃないか。
I sat on rug, biding time 僕は、敷物の上に座り、「その時」を待った、
Drinking her wine 彼女のワインを飲みながら
We talked until two 僕たちは2時まで話をした。
And then she said, it’s time for bed そして、その時、彼女は「寝る時間よ」と言った。
She told me she worked in the morning 彼女は僕に、「朝から仕事があるの」、と言って
And started to laugh そのあと、笑い出した。
I told her I didn’t 僕は彼女に、「僕には仕事はないよ」、と言ったんだが。
And crawled off to sleep in the bath それで、しかたなく、這うように風呂場に行って眠ったよ。
And when I awoke I was lone そして、僕が目を覚ました時、僕は一人だった。
This bird has flown 小鳥は飛んで行ってしまった。
So I lit a fire それで、ぼくは、火をつけた。
Isn’t it good, Norwegian wood とてもステキな、ノルウェー木材の部屋じゃないか。
ご存じの通り、「ノルウェーの森」は間違いで「ノルウェー木材」が正しい。
なぜ、タイトルが、「Norwegian wood」なのか。うがった説もあるようだが、僕は、この木の部屋が、肩透かしをくわされた彼女との逢瀬の中で作者の心に強く残ったからだと思う。
絵は、ノルウェー木材の部屋。
2017年7月25日 岩下賢治