枯れかかったウツギ
近所の植え込みで、ウツギが実をつけていた。ほとんど葉を落としていて、実も緑色から薄茶色にと色褪せていた。
この実を見ると思い出すことがある。
子供の頃、この実を玉にして鉄砲遊びをしたのである。実の大きさに合った篠竹を切ってきて、竹の空洞に実を詰め、その上でもう一個を後から押し込む。すると空気の圧縮で、パチンと音を立て、先に詰めていた実が飛び出すのである。実の大きさにほんの大小があって、全てがパチンと弾けるわけではないが、勢いよく弾けた時は、気分が高揚したものである。篠竹を切り出すのは、肥後守という折りたたむポケットナイフで、男の子なら誰でもが持っていた。この小刀で小細工するのも楽しく、忘れがたい遊びであった。
ウツギの木、昔はいろいろな所に植えられていた。田畑のある田舎では、境界の間に植えられていたし、山地のあちこちに自生していて、もっとも身近な小木だった。
歌にも歌われていて、
童謡に
卯の花の匂う垣根にホトトギス早も来鳴きて
忍び音漏らす夏は来ぬ
佐々木信綱
あるいは奥の細道に
卯の花を飾しに関の門出かな 曽良
というのがある。
いうまでもなく、卯の花というのは、ウツギのことである。
ウツギと卯の花は、違う花だと勘違いされることもある。というのも、ウツギの仲間には、ハコネウツギ、フジウツギ、コゴメウツキ、フサウツギ、ヒメウツギなど、多くの栽培種があるためで、基本のウツギが認識しづらくなったためかと思われる。
ウツギがなぜ卯の花と呼ばれるようになったのかは、不明だが、思うには旧暦の卯月(4月)の頃に満開になる花だからではないか。旧暦の4月だから、初夏の頃、真っ白な花を咲かせる。トーフカラの別名を卯の花ともいうが、これはカラが空に通ずるので縁起を担いでいるという説がある。【彬】