この度、今年のノーベル文学賞作家、abdulrazak gurnah,アブドゥルラザク・グルナ氏の作品、by the sea(海辺にて)初版2001年、を読みました。
氏は1948年、アフリカ、タンザニアのザンジバル生まれ。ザンジバル革命後の1968年、英国に難民として移住、その後大学教授も務めた、現在73才。授賞理由が「植民地主義の影響や、難民の運命への妥協のない思いやりを持った洞察力。」
極東の日本の人間として、作品の舞台が、地理的に文化的にも遠いい位置にあり是非とも読みたいと思っていたが、東京の丸善書店に作品が並ぶようになったので、ブッカー賞の候補のロングリストに載っている本作品を選んだ。
小説の流れをごく簡単に書くと。
英国の航空で、難民申請する、ザンジバル出身のオマール氏。母国語は、スワヒリ語、宗教はイスラム教。父の投獄、財産所有問題など、様々な苦難を背負っている。一方、かなり前に、同じくザンジバルからの難民で、様々な困難を経験、今は普通の生活を維持している、マウド氏。この二人がある浜辺の町で出会う。そのうち、オマール氏の苦難の責任はマウド氏にあることが解る。そして対立があり、妥協、・・・。
時代は植民地からの独立した混乱の中に始まり、長い年月が経ち、時代の様相は変わっていく。二人は、ザンジバルという美しいパラダイスを離れ、迫害、屈辱に耐え、自らの生きる場所を見つけていく。
少し間違はあるかもしれないが、以上のよう。というのは、英語はかなり、上質で、難しく、物語の流れも、複雑。とにかく一度通読し、大筋を捕え、あと何度でも読み直そうという作戦にした。
日本から遠く離れた、タンザニアのザンジバル。そして英国。ノーベル賞作家の目を通したアフリカ、インド洋、ヨーロッパ、を舞台とした歴史と現実、時空を超えたスリルがある旅。ところで、英国のthe times誌の作品評価は、
’One scarcely dares breathe while reading it for fear breaking the enchantment.’
・・・興奮を途切らすのが怖くて息をつこうともしない面白さ。・・・である。
2021年12月20日 岩下賢治