眠気を誘う椅子
歳をとったせいか、近頃本を読んでいると、急に眠くなる。本に限らない。新聞やパソコンでもそうなる。本を読む能力、あるいは心理的な耐性が、衰弱してきているのだろうか? それはお前が元々頭が悪いからだ、という声も聞こえてきそうなのだが、全くのところ、この能力を不眠症の人にあげたくもなる。
で、どういう状態で眠くなるのか、思い出してみる。最初はすらすら普通に読み進んでいけるのだが、第一段階の記述がほぼ終わって、次の段階に行こうとする時が危ないらしい。話の内容を反芻するかのように意識が混濁し、深い睡魔に襲われる。
普通文章には、マンガもそうだが、起承転結というのがある。いい文章というのは特にそうで、そこに表現の機微がある。論理的な思考にも、正反合の行き戻りがある。この展開についていけなくなっているのだろう。なんとも情けない。
現在四苦八苦しているのは、ベストセラーにもなっている「重力とはなにか」大栗博司・幻冬舎新書。著者によると、高校の同窓生だった友達を念頭に易しく書いたという。ベストセラーになるくらいだから平易な表現になっているのだろう。それなのに、睡魔が邪魔して先に進めないのである。
勝手な言い草ですが、問題は小生に宿っている睡魔のせいではなく、書物の論理の展開に機微がないからではないかと溜飲を下げたい気もするのである。春の断章のひとつです。【彬】