梅雨が明け猛暑が続く。こういう時は普段読まないミステリー小説で涼しくなりたい。
趣味でロシア語を勉強している流れから、5年前のNHKロシア講座で紹介された、現在ロシアの人気推理小説家、ボリス・アクーニン氏の代表作「リヴァイサン号殺人事件」を読んだ。アクーニン氏は、日本文学の研究者でもある。特に三島由紀夫の作品の多くをロシア語に翻訳をしている。また彼の作品は、ロシアのみならず、30ヶ国以上の言語に翻訳されている。文章は格調高い古典作品のようで状況描写が素晴らしい。ということで、かなりの長編ながら一気に読み終えた。
時代は、19世紀末。舞台は、イギリス、サウサンプトン港発カルカッタ行の豪華客船、リヴァイサン号内。大富豪のパリ自宅での殺人事件にかかわる容疑者が、何名も乗船する。複雑に絡まった糸を解きほぐし、事件を解決するのは、偶然乗り合わせたモスクワ警察の調査官、ファンドーリン。・・・大変面白く、背筋がスー、と涼しくなるおもいであった。
最後に、どんでん返しのあるところは、アガサクリスティーの作品のようでもある。
ところで。アクーニン氏はNHKの番組インタビューで語る。「ロシア人は、日本に興味を持ち、実に様々な分野で日本を愛好している。本当のロシアというのは、政治家でも軍人でもない。作曲家や、画家、作家なんだ。」
僕は、彼の意見に同感する。国対国に関わる政治家などの発言には必ずしも真の国民の意思が表れていないように思える。そして国民対国民の理解には互いの文化を知ることが必要だ。
話は少し飛ぶが。最近の日本と中国の関係など、政治家の話は、国対国となると、どうも本当の国民の姿が見えてこない。大変難しいことなのだが、相手を理解することなくして、共栄はあり得ない。このようなこと誰でもわかっていることなのだが。
絵は、リヴァイサン号。・・・・本のカバー絵から僕が想像したもの。
2015年7月23日 岩下賢治