コブシの花
道で知り合いのお婆さんが声をかけてくれました。
あなた、お元気そうですね。私は病院の帰りです。手とか足とかあちこち折ってしまって痛いんですよ。先生は歩くように言ってくれますので、外に出向くようにしています。買い物の帰りではないですよ、この手押しの買い物籠はね、外出のお供です。これがないと危なくて歩けない。これにつかまって歩くのです。するとだんだん腰が曲がってきますが、でも籠があると助かります。
それで思い出したのだが、もう亡くなったが、口達者な老婆がいつも自転車を押していた。乗るわけではない。自転車を押して買い物をしていた。付属の籠が重宝しているのかと思っていたが、そうではなく、本当は自転車につかまって歩いていたのかもしれない。
お爺さんで買い物籠を押している人を見かけない。
ある時、顔が膝につくほど腰を曲げ、懸命に歩いている人を見かけたことがあるが、杖を頼りにはしていなかった。杖をついた老人を見かけることがない。男の意地なのかもしれない。
買い物カートはお婆さんたちの必須のお供なのである。【彬】