のんびりぽつぽつ

日常のこと、本のこと、大好きなこと・・・
いろいろ、と。
のんびりと。

「理由」

2006年01月17日 21時30分07秒 | ★★宮部みゆき
宮部みゆき 著 新潮文庫。

読みました。読みました。読みました~~!
解説を読むと、先日読んだ「火車」と、私にとっての宮部作品第一号の「模倣犯」と共に、宮部ワールドの「リアリズム3部作」だそうで。
ふむ。。

ある超高層&高級マンション25Fの一室で起こった惨事。
状況だけをみれば一家全員惨殺か!?という状況で発見される3人と転落した1人。
この4人が、一体誰で、誰が誰を殺したのか、どうして殺したのか・・・普通真っ先にわかるはずの「身元」がわからないという状態で殺人事件は始まる。
関わった様々な家族のその時の状態を描きながら、事件を語っていく。
すでに『謎』が『謎』ではなくなって、事件の全容が明らかになった後に、この事件を記録しようとする人間が、時にインタビューで、時にそのときの状況を物語として書き進める構成。

不思議な緊張感と、リアリズム。
無理なローンのために起こる「競売」とその闇の部分、バブルがはじけた社会を背景に、殺されたものと殺したもの、それぞれを「家庭」という単位で描きながら、「個」の怖さ、悲しさ、淋しさ、異常さをリアルに浮かび上がらせている。

一歩外に出れば、こういう「家」はどこにでもある。
少し未来の自分を思うと、もしかしたらこの中のこの家族は似ているんじゃない?

今の時代。
この犯人の「異常さ」が、「恐怖」としてまだ人々の心にとどまっているだろうか。
今の時代。
もしかして、ありうる・・?と普通に生活する、普通の人々が思ってしまう状態になっていないか?

ラストを読み終えた後、そんな「恐怖」が私の心の中に浮かび上がってきた。

今。
この時代を生きる人たちに、そして未来の人たちに、この「物語」が「恐怖」であればいい。ずっと。ずうっと。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする