のんびりぽつぽつ

日常のこと、本のこと、大好きなこと・・・
いろいろ、と。
のんびりと。

「ぼんくら」

2006年01月26日 21時29分37秒 | ★★宮部みゆき
宮部 みゆき 著 講談社文庫。上・下巻。

江戸時代。のらくらと、問題ごとは一切キライ、という同心と、その担当地区深川の鉄瓶長屋で起きる様々なもめごと(事件って感じじゃないんですよね。気分的なものですが)。
上巻では別々にそれぞれの家の物語を、江戸時代の情緒、風景と人情と共に描いていくのかな~と、ぼんくら同心井筒平四郎と共にこれはゆったり読めそうだ~なんて感覚で読み始めたのですが、そこは宮部ワールド特有のミステリー。
「長い影」という章で、物語は一気にそれまでのことを纏め上げ、1つの謎に向かって流れていきます。

なにしろ、ね。その中でね。
弓之助がいいんだ
美女顔負けの美少年。跡取りのいない平四郎の家に、奥方側の商家に嫁いだ姉の息子ってことで、奥方が「養子に迎えよう」と熱心に希望している少年なんだけれど、、、
目測で何でも「測って」しまうことが特技の彼は、平四郎宅に出入りし始めてからこの鉄瓶長屋の事件にかかわり、まさしく事件を読み解くことにも長けている。口の利き方も達者で正直こまっしゃくれた感もあるのに、実はまだ「布団に朝起きたら地図が~って奴」が収まらず、大活躍したラストシーンでも上下の涙・・・で、水溜りを作ってしまうかわいいところがあったりする。
めんどうが大きらい平四郎が、ところどころで投げ出したくなりながら、結局最後までこの事件の真相を見届けたのは、1つにはこの少年がいたからだろうなあ。
そして、長屋に住む人々。
特に煮売り屋のお徳さんの生き方、彼女に最後まで嫌われながら一所懸命に差配を勤める佐吉。春を売っていたおくめとお徳のやり取りのおかしさと切なさ。
斬った張ったの物語の派手さは一切ない、そこがまた好きになりました。
地に足をしっかりとつけて生きている人々。実際にそこに根を張って日々の暮らしをしている姿が鮮やかに浮かびます。

時代劇、好きです。
子どもの頃から、水戸黄門とか、銭形平次、NHK大河ドラマで育った私。(ほとんど母の刷り込みです~
そして「鬼平半科帳」に至っては、すっかり自分の好きなものになっていて、もちろん原作みんな持ってるし読んでます。
なんだか、江戸の町って、ほんとに人情溢れて時間がゆっくり流れていて、お金はないけれど仲間が沢山いて・・・
「長屋」っていいね。こういう日常って、いいね。
「ぼんくら」を読みながら、そんな気分に浸っていた私だったのでした。

ちょっと、現代の暗い部分の物語で疲れていた気持ちを、きれいさっぱり流させてもらいました。
さて、講談社文庫。まだあと2冊、時代小説がありますね。
やっぱりそっちも読んじゃおう!と、固い決意の私です。(って言わなくってもわかってますか?
コメント (4)
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