のんびりぽつぽつ

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「ドリアン・グレイの肖像」

2009年07月28日 23時09分42秒 | ☆本☆
オスカーワイルド著 仁木めぐみ訳 
光文社古典新訳文庫

美貌と若さ。そして純粋な心。
すべてを注ぎ込まれた一枚の肖像画。
その絵がすべての始まりと終わり。

純粋で美貌の青年ドリアン。
彼を見出し、肖像画を描いた画家バジル。
そして、彼に多大に特殊な影響を及ぼしたヘンリー卿。

ドリアンが肖像画の前で思わず願った一言。
それが悪魔に届いてしまったのか、
絵が、ある変化することを知った後のドリアンの行動は破滅的で。
その表現の仕方。
それがとても馴染めなくて難しくて、
でも、なにか奇妙な力があって。
こんな本、も、やだ!
と何度も思いながら、
ついに最後まで何かに引き摺られて読んだ・・・

そう。何かの力にひっぱられた。
奇妙な、居心地の決して良くないその力に。

理解、できたとは思わない。
判らない世界。
判らない表現。

海外文学はやっぱり私に馴染めない、と改めて思ったし。

だけど。

こんな読み方も出来るんだな、とも思う。
基本の物語の骨格はさすがに判るから。
ひっぱられて読めるんだな、って、
少し自分で驚いた。

ラスト。
バサっと切り捨てられたような終わり方なのだけれど。
悪行のすべてを背負う魂を浄化させる物は、
結局、本人の命しかないのだろうか?
絵に向けたはずの刃が自身に突き立った瞬間のドリアンは、
何を思ったのだろう。
そして、
青年の日の純粋な肖像画に戻ったその絵をヘンリー卿が見たとき、
彼は何を思うのだろう。
ドリアンに起こった事実に気付くことは、あるのだろうか?
自身の罪にも気付けるのだろうか。

自身の魂と現実で対峙することの恐ろしさはどれだけのものだろう。