先程、愛読している公式サイトの【 現代ビジネス 】を見ている中、
『 知らないうちに「名義変更」されて自宅を失った高齢妻の悲劇
~ 相続は 「早いもん勝ち」に・・ ~ 』、
と題された見出しを見たりした。
私は東京の調布市に住んでいる年金生活の75歳の身であるが、
私たち夫婦は子供に恵まれなかったので、たった2人だけ家庭であり、
雑木の多い小庭の中で、古びた一軒家に住んで、ささやかな生活を過ごしている。
こうした中、5歳若い家内もより、無念ながらあの世に旅立つと思い、
残された家内が困窮しないように、年金生活を始めて間もない時、
公正証書で私の遺言書を作成してきた。
こうした深情のある私は、今回の《・・知らないうちに「名義変更」されて自宅を失った高齢妻の悲劇・・》、
そして《・・相続は 「早いもん勝ち」に・・》って、どのようなことですか、
と思いながら真摯に精読した。
この記事の原文は、『週刊現代』2019年9月14日・21日合併号に掲載された記事のひとつであり、
関連の公式サイトの【 現代ビジネス 】に10月5日に配信され、無断であるが記事を転載させて頂く。
《・・知らないうちに「名義変更」されて自宅を失った高齢妻の悲劇 ~ 相続は 「早いもん勝ち」に・・ ~
失ったのが、おカネであれば、「自分の不手際でもらえる遺産が減った」とあきらめもつく。
だが、自宅はそうではない。
愛着ある「終の棲家」を、あっという間に奪われる、その一部始終を見ていこう。
☆知らない男が訪ねてきて・・・
「山口さんはいますか? 山口さん?」
スーツ姿の男が、何度もインターホンを鳴らし、人目もはばからずに、大声で自分の名前を叫んでいる。
この男は、つい2日前にも、さらにその3日前も自宅を訪ねてきた。
関東近郊に住む山口弘子さん(75歳・仮名)が、しぶしぶドアを開けて招き入れると、
男は食卓に書類を広げ始めた。
「先日も申し上げましたが、お宅の所有権の2分の1は、弊社が取得しております。
残り2分の1をお売りいただけない場合は最悪、
裁判所に共有物分割請求訴訟を提訴させていただきます」
男は、早口でまくしたてる。
何を言われているのか、ほとんど分からないが、「訴訟」という響きに、山口さんの背筋は凍った。
男はこう続ける。
「旦那様も亡くなられて、お辛いときかとは思います。
とはいえ、この広い家に住み続けるよりも、コンパクトな家か施設にお引っ越しされては、いかがでしょうか?」
男は、急に話すペースを落として、最近の老人ホーム事情を語り始めた。
山口さんは「はあ、そうですか」と返すばかりだ。
しかし男は、最後に語気を強めて、
「早く決めていただかないと困ります。こちらもこの家の権利を持っているんですから」
と言い残し、山口さんの自宅を後にした。
これから先も、男はやってくるのだろう。
山口さんは、家の権利を業者に売却して、引っ越すことに決めた。
元々、自宅の価値は2000万円ほどだったが、
山口さんが手にした金額は、750万円ほどに過ぎなかった。
さらに、居を移してから待っていたのも、辛い日々だった。
山口さんが本誌記者に語る。
「住んでいるのは、木造アパートの8畳一間。
引っ越しをしたので、近所に知り合いもおりません。
まったく誰とも話さない日もざらにあります。
夫が約30年前に建てたマイホームがあり、それが『終の棲家』のはずでした。
夫がいて、息子がいて、あの頃が懐かしくてたまらない」
なぜ山口さんは、こんな悲惨な状況に追い込まれてしまったのか。
実は、これは他人事ではない。
(略)今年の7月1日からは、「早いもん勝ち」相続によって、
高齢の妻が自宅を失うリスクが高まっているのだ。
これまでは「妻に家を相続させる」という遺言書さえあれば、そのとおりになるのが常識だった。
しかし「早いもん勝ち」では、
相続人が勝手に家の所有権の持ち分を名義変更して、売却することができてしまう。
高齢になってから、自宅を失うのは危険だ。
引っ越しのストレスから、うつになる人も多く、不慣れな住宅では、転倒のリスクも高い。
認知症が進行してしまうこともある。
「早いもん勝ち」から、どんなふうに家を失うまでに至るのか。
前出の山口さんの実例をもとに、その実態をみていこう。
時を山口さんの夫が亡くなった時点に戻そう。
商社勤めだった山口さんの夫は、終活もまったくせず、遺言書も書いていなかった。
長男も相続人ではあったが、自宅に住んでいる山口さんは、
当然自分がこの家を相続するものだと思い込んでいた。
山口さんは続ける。
「夫が亡くなってすぐは、葬儀の喪主や、年金の支給停止などの手続きに忙しかったです。
遺産分割や、名義変更は、落ち着いてからやればいい、と思っていました」
☆相続の常識が一変
しかし、その間に、事件は起きた。
長男が、実家の所有権の2分の1を勝手に名義変更し、売却してしまったのだ。
雨が降るなか、長男は固定資産評価証明書と、父親の戸籍謄本一式、
自分と母の住民票をもって法務局に向かった。
法務局での手続きは、形式さえ整っていれば、何の問題もなくできる。
手続きは、半日で終わり、手続きをしたことは、誰かに知られることもなかった。
山口さんが語る。
「もともと、私の夫と、長男の嫁が不仲で、20年以上長男は、実家に顔を見せていませんでした。
今回も、嫁が長男を、そそのかしたようです」
そんな無茶苦茶な手続きも、けっして違法なわけではない。
「長男にも、法律で決められた相続の割合(法定相続分)が2分の1ある。
不動産については、この法定相続分だけ、長男は単独で名義変更できます」(弁護士・澤田有紀氏)
そこで、今までなら、「妻に家を相続させる」という遺言書を、
夫に書いてもらっておくのが鉄則だった。
遺言書があれば、家の権利を勝手に売られたとしても、取り戻すことができたからだ。
そのため、「四十九日を過ぎてから、遺産整理を行う」のは常識だった。
だが、遺言書さえ書いてもらっていれば安心だ、と思い込んでいては、
これからは、大変なことになる。
7月1日からの法改正で、相続の常識は一変したのだ。
遺言書があったとしても、売られた所有権は、戻ってこないことになったのである。
改正後、山口さんはどうすれば、自宅を失わずに済んだのか。
ここでカギを握るのは、不動産の名義変更である「登記」だ。
家を全部、自分のものにするには、
生前に作成してもらった遺言書を法務局に持っていき、登記をする必要がある。
不動産登記とは、法務局にある登記ファイルに、どんな不動産があって、
誰が権利を持っているかが記されているものだ。
相続や売買をしたときには、登記を変更するが、
実は登記を変更しなくても、家に住み続けることはできてしまう。
しかも、登記は義務ではないため、放置する人も多い。
これからは、一刻も早く登記をしないと、自宅を失う危険が出てきた。
「早いもん勝ち」に負ければ、家の所有権の一部を失う。
とはいえ、失うのは法定相続分であり、「一部」に過ぎない。
では、その「一部」を売却されてしまうと、いったい何が待ち受けているのかを見ていこう。
埼玉県に住む岩井薫さん(69歳・仮名)が語る。
「夫が亡くなり、長男、次男と妻の私が、相続することになりました。
財産は家(3000万円相当)しかなかったので、とりあえず3人で共有することに決めました」
不動産が、共有になっているときの所有権の割合は、「持ち分」と呼ばれる。
岩井さんと長男一家は、実家で同居していた。
次男からすれば、4分の1(750万円相当)の持ち分をもらったことになるが、
結局のところ一銭も入ってこない。
「次男は、ギャンブルに、はまっており、借金を抱えていました。
どうやら父親の遺産から、借金を返済できると当てにしていたようなのですが、おカネはもらえなかった。
そこで、持ち分を売却したようなのです」(岩井さん)
さらに、家を売るには、共有で持ち分を持っている人の合意が必要だ。
だが驚くべきことに、その持ち分を買い取る業者も、存在しているのだ。
「こうした業者は、持ち分を買い取った後に、他の共有者と話し合いをします。
共有者との権利関係を調整することができれば、
持ち分の売主が抱えていた問題を解決できます」(リノア株式会社代表・田中孝久氏)
そうはいっても、多くの業者は、他の人が住んでいる物件は買わず、
共有になっている空き家や更地を対象にする。
しかし、持ち分買い取り業者が急増するなか、人の住む物件に手を出す業者も登場している。
「悪質な業者は、居住者や経緯を調査せずに、持ち分を購入します。
さらには、法律を理解していない外国人投資家に転売するケースまであるのです」(田中氏)
持ち分を業者に買われてしまった後の顛末を岩井さんが明かす。
「不動産業者から、自宅宛てに『こちらの不動産の持ち分4分の1を取得しました』
という郵便が来ました。
2日後、腰の低そうなサラリーマンが家にきて
『弊社が取得したお宅の持ち分4分の1を買い取ってほしい』
と言ってきたのです」
☆持ち分買い取り業者には、3つの戦術がある。
1つ目は、残りの持ち分を安く買い取り、不動産そのものを手に入れる方法だ。
不動産を売れば、業者は利益を出せる。
次に、業者が買った持ち分を、高く売りつけてくることもある。
「共有状態のままでは、家の売却や建て替えができないというデメリットをやたらと主張されました。
結局、相場より高い900万円で持ち分を買い取るしかありませんでした」(岩井さん)
業者はまずは、このどちらかの戦法で攻めてくる。
しかしそれでも揺らがない場合には、奥の手がある。それが、訴訟だ。
「裁判所に、共有物分割請求訴訟をおこすのです。
結果、『競売せよ』という判決が出てしまえば、家は売却されて、おカネを分けることになります」(司法書士・甲斐智也氏)
不動産を共有にしたり、勝手に名義変更をされると、最後は自宅を失ってしまうのである。
☆夫が生きているうちに対策
もちろん、遺言書を無視されて、「早いもん勝ち」をされた場合にできることがないわけではない。
たとえば、裁判所に訴えるという方法もある。
だが、これも簡単ではない。
「親族を訴える心理的なハードルは大きいですし、なにより、訴訟費用は自分持ちになります」(不動産売却支援ネット代表・露木裕良氏)
残りの人生が限られる中で、そんな大変な訴訟はしたくはないだろう。
一度登記をされてしまえば、泣き寝入りするしかないことも多いのだ。
自分が生きているうちに「登記の予約」をする裏ワザをおススメしたい。
それが「仮登記」だ。
「仮登記は、『次にこの不動産の所有者になるのは、この人』
ということを、登記しておく手続きです。
仮登記がついていると、勝手に名義変更されても、持ち分買い取り業者に購入されずに済むのです」(前出・澤田氏)
そのために、死因贈与契約を結ぶのだ。
「『夫が亡くなったら、自宅を妻に贈与するものとし、妻はこれを受諾する』と書き、
日付、氏名、住所を記入・押印します。
この契約書と夫の印鑑証明書を持って法務局で申請すれば、仮登記できます」(司法書士・内藤卓氏)
夫を失ったあげく、自分が知らないところで名義変更をされて、最後には自宅まで失ってしまう。
そんな悲惨な老後を迎えないために、できることをやっておきたい。・・》
注)記事の原文に、あえて改行を多くした。
私は記事を読みながら、このようなことがあるのか・・と動顛しながら、多々学んだりした。
今回、夫が存命中に「妻に全財産を相続させる」という内容の遺言を公正証書で作成した上で、
やがて仮登記をする時は、
《・・『夫が亡くなったら、自宅を妻に贈与するものとし、妻はこれを受諾する』と書き、
日付、氏名、住所を記入・押印します。 この契約書と夫の印鑑証明書を持って法務局で申請すれば、仮登記・・》
このようにすれば、たとえ法定相続人、そして「遺留分」も排除でき、
「妻は全財産を相続できる」と解釈したりした。
そして平素は何かと甘ちゃんの私でも、私が亡くなった後は、家内が生活に困窮しないように、
裕福層に無縁な私なりに、こうした苦手な名義変更、相続の難題は、少しは学んだりしている。