『 ある高級有料老人ホームに一緒に入居した夫婦が「大後悔」した理由 』
と題されて記事を見た。
私は東京の調布市に住む年金生活の75歳の身であるが、
私たち夫婦は子供に恵まれなかったので、我が家は家内とたった2人だけの家庭であり、
そして私より5歳若い家内と共に、古ぼけた一軒屋に住み、ささやかに過ごしている。
《・・ ある高級有料老人ホームに一緒に入居した夫婦が「大後悔」した理由
~ 認知症の母の介護がむしろ激烈に・・・ ~
私は90年代から介護の現場を取材し、そのリアルな現実や有益な情報を
執筆や講演、NPO活動を通して紹介しています。
約半年ぶりに、ケイコさん(46歳、仮名)と顔を合わせる機会がありました。
前に会ったときは、「両親が揃って有料老人ホームに入った」と明るく話していたのに、
やけに憂鬱そうな表情をしています。

☆新聞広告に出ていた「介護付き有料老人ホーム」
シングルのケイコさんは、東京都内で働く会社員です。
学生時代に、関東の実家を出ました。
いまは、片道2時間弱のところで暮らします。
ケイコさんには兄がいますが、海外転勤のため、
現在は「一人っ子状態」だと言います。
実家の両親は、どちらも80代です。
現職時代に公務員として働いていた父親は、受給年金が多く、
定年後は、夫婦でたびたび海外旅行に出掛けるなど、ゆとりある老後を送っていました。
しかし、3年ほど前から、母親に認知症の症状が出てきました。
早い段階で受診し、治療を開始したので、症状は安定していましたが、それでもここ1~2年で徐々に進行。
「今夜の夕食は何?」と、何度も何度も聞かれると、
父親は、声を荒らげることもあったそうです。
また、ふらっと出掛けて、自宅に戻れなくなり、交番から連絡が来て、
父親が、迎えに行くことも複数回あったとか。
「父は元気とはいえ、83歳。
母親の世話をすることに疲れていました」
とケイコさんは、当時を振り返ります。
「私が仕事を辞めて、実家に戻って、父を手伝えば良かったのかもしれませんが、
そんなことしたら、私の人生がめちゃくちゃです」
ほとんどの時間は、両親2人きりです。
そんな時、父親は、新聞広告に出ていた「介護付き有料老人ホーム」に目を留めました。
ケイコさんは父親から、
「お母さんと老人ホームに入るのもいいかなと思うが、ケイコはどう思う?」
と聞かれました。
それから間もなく、父親は見学に。
ちょうど夫婦で入居できる2人部屋に空きがありました。
☆入居後、母親の認知症が急速に進行・・・!
父親は、自ら、入居を決断しました。
24時間体制での介護付き。
そこは、自宅からは車で30分ほどの距離で、
土地勘がある立地だったことが、父親のココロを惹き付けたようです。
入居時に支払う前払い金は1000万円ほど。
月々の支払いは2人で50万円ほど。
「『決めた』と父から言われて、最初は、本当に大丈夫かな、と心配になりました。
もちろん、契約のときは両親に付き添いました。
居室は明るいし、看護師さんも常駐しているし、いいところだなって。
何より、父が嬉しそうにしていたので。
正直、これで、親の介護の心配から解放されると思いました」とケイコさん。
ところが・・・。
両親が有料老人ホームへ転居後、ケイコさんは、部署移動などで仕事が立て込み、
3ヵ月目にようやく両親に会いに行きました。
すぐに、異変に気付いたと言います。
母親の視線が定まらず、ケイコさんの顔を見ようとしません。
ケイコさんが話しかけても、「お父さん、お父さん」と言い続け、
そのそばを離れようとしないのです。
トイレの失敗が増え、紙オムツをしていました。
父親は疲れた表情で、
「僕は、部屋から出られないよ。出ると、お母さんが大声を出すんだ」
と言いました。
父親の不満は、母親のことだけではありませんでした。
入居者の多くが、車いすに乗っていたり、認知症の症状があったりで、話し相手がいない様子。
しかも、母親が寝ているすきに、買い物や喫茶店に出掛けるのですが、
いちいち外出先と帰宅時間をホームのスタッフに告げる必要があります。
ケイコさんは、両親のことが頭から離れず、心配で、3週間後に再訪。
すると、父親は「僕は、閉じ込められているようだ」と言いました。
母親は「家に帰る。鍵はどこ?」と呟き続けています。
父親の目頭に涙が光るのを見た時、
「まずいことになった」
とケイコさんは、事態の深刻さに背中が震えたといいます。
☆老人ホームに夫婦で入居、その「3つの誤算」
ケイコさんの父親は、介護負担の軽減を目的に、夫婦で介護付き有料老人ホームに入居しました。
だというのに、なぜ、このような事態に陥ったのでしょう。
夫婦で有料老人ホームに入るには、2通りの方法があります。
1つは夫婦で過ごせる2人部屋に入るという方法。
もう1つは、それぞれが個室に入るという方法です。
介護型の老人ホームは、1人部屋が中心のため、
2人部屋を見つけようとしても、適当なところが見つからないことも珍しくありません。
「夫婦は一緒が良い」という考えの人が多く、埋まりやすいのでしょう。
料金的にも、1人部屋を2室借りるより、2人部屋を1室借りる方が割安な選択となります。
ケイコさんの父親が選んだホームでは、たまたま空きがあったため、とんとん拍子に話が進みました。
しかし、特に自立の度合いが大幅に異なる両親が、2人部屋に入るときは、3点の注意が必要です。
2 24時間体制といってもほとんどは2人きり
3 外出に制限がある場合も
高級な有料老人ホームといっても、通常、自宅よりは狭くなります。
特に、地方では、自宅は広めです。
戸建てであれば、部屋数も多いので、夫婦の距離感を保つことが可能です。
顔を合わせたくないときは、別の部屋に居るという選択をできます。
しかし、老人ホームに入ると、2人部屋であっても、広くても1LDくらいのコンパクトな空間です。
実際、ケイコさんの両親の入った居室は40㎡ほどの、
「ホテルのツインルームのような雰囲気」とのこと。
ワンルームのため、両親は四六時中、顔を突き合わせていることになります。
さらに、「24時間体制での介護」と言っても、
当然ながら施設のスタッフが、居室にずっと居てくれるわけではありません。
結果、元気なほうの親が、施設に入居してまで、介護を続けるという話をしばしば聞きます。
入浴やトイレ、食事の介助はスタッフがしてくれても、
傍にいれば、何かと目に入り世話をすることになります。
「家に帰りたい」と言う母親の声も、受け止め続けなければなりません。
介護型の老人ホームは、入居者の命を預かっているのですから、
そういう事態を未然に防ぐため、外出にも制限を加えることが一般的です。
制限というほどでなくても、行先と帰宅時間を告げなければならないというのは、
仕方のないことでしょう。
むしろ、言わなくても良い施設の方が、入居者や家族にとって不安なのではないでしょうか。
しかし、入居者の性格によっては、いちいち報告しなければならないことに、
「自由を奪われた」と捉えることがあるようです。
☆「夫婦別々」が正解の場合もある
両親揃っての入居の際には、介護度の高い方の親のことばかり考えるのではなく、
介護度が低いほうの親(元気なほうの親)にとって、
そこは馴染めそうな場か、どうかよく検討することが大切です。
体験入居できるところなら、積極的に利用したほうがいいでしょう。
懸念がある場合は、両親揃っての入居ではなく、
介護度の高いほうの親だけ、入居してもらうことを考えましょう。
ケイコさんの両親の場合も、母親だけ入居し、父親は在宅を続けたほうが良かったのかもしれません。
ケイコさんの両親の場合も、両親の居室を分けることを含め、
より良い策がないか施設側と相談してみることをお勧めしました。
あるいは、両親が自宅をそのまま残しているのであれば、
父親だけ退去、もしくは、寛ぎたいときには父親だけ自宅に戻る、という方法も考えられます
(ただし、父親が居たり、居なかったすると、母親が混乱する可能性も)。
いずれにしろ、両親の居住空間を分けるとなれば、別途の費用がかかることになるでしょう。
資金計画の練り直しが必要となることも、お忘れにならないようにしてください。・・》
注)記事の原文に、あえて改行を多くした。

高齢者75歳の私は、今回の記事を真摯に学び、多々教示されたりした・・。
特に、《・・ケイコさんの両親の入った居室は40㎡ほどの、 「ホテルのツインルームのような雰囲気」とのこと。
ワンルームのため、両親は四六時中、顔を突き合わせていることになります。
さらに、「24時間体制での介護」と言っても、
当然ながら施設のスタッフが、居室にずっと居てくれるわけではありません。
結果、元気なほうの親が、施設に入居してまで、介護を続けるという話をしばしば聞きます。
入浴やトイレ、食事の介助はスタッフがしてくれても、 傍にいれば、何かと目に入り世話をすることになります。・・》
平素の私たち夫婦は、多くの夫婦と同様に、寝食を共にして、談笑したりして過ごすことが多いが、
一日の中では、ほんの数時間でも、それぞれの趣味に専念して、独り愉しむ、時があって、
日常生活を過ごして、心身のバランスを享受している。
そして私たち夫婦は、ときたま国内旅行で6泊7日の国内滞在旅行をしてきたが、
日中、数時間はお互いに独り愉しむ、時間を設けて、
私は読書をロビー、共通休憩スペースなどで過ごしたりしてきた。
こうした体験をしてきた私は、たとえ介護・要の身で、家内と介護施設の一部屋で、
24時間を共に過ごすのは、お互いに苦痛と思ったりした。
今回、ケイコさんの父親の真情・・愛しき妻は認知症が深まり、
施設に入居してまで、何かと愛しき妻の介護を続ける上、
《・・「お父さん、お父さん」と言い続け、 そのそばを離れようとしないのです。(略)
そして・・「僕は、部屋から出られないよ。出ると、お母さんが大声を出すんだ」・・》
ご自身が施設内の不自由、束縛感を感じ、やりきれない深情を思い馳せると、
裕福に無縁な私でも、涙を浮かべていた・・。
いずれにしても、晩年は人それぞれの事情があり、すべてが満足のケースは少ないと思われ、
難題であるなぁ・・と溜息を深めている。