遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

北方領土交渉 安倍首相がいま博打に出て全ての有り金をかける必要は少しもない

2016-11-08 23:58:58 | ロシア全般
 12月15日に予定される日露首脳会談。一時過熱した「新しいアプローチ」の進展への期待がしぼんできているのは、相手の術中にはまりかけていた頭を冷やすのに(会談への過度なプレッシャーをかけない)良い事だと思っています。冷静に相手の戦術を見定めねば、戦いは敗れてしまいますね。
 交渉の過程を3つの段階に分け、第一段階の「交渉に入るまでの予備折衝」の重要性を説くのは、ロシア関係に強い、北海道大学の木村名誉教授。
 

ロシアの「対日戦術」を見極めよ 北海道大学名誉教授・木村汎 (11/8 産経)

 ロシアのプーチン大統領の訪日が近づくにつれて、ロシア側の対日交渉戦術が明らかになってきた。“領土”では少しも譲ることなく、しかも“経済”支援はなるべく多くを獲得
したい-この基本戦略に基づく矢が次々に放たれるようになった。交渉の前哨戦は既に始まっているのだ。

≪ジャブを飛ばす「悪い警官」≫
 国際交渉学の第一人者、W・ザートマン(ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授)は
交渉の過程を3つの段階に分ける。(1)交渉に入るまでの予備折衝(2)交渉本番(3)文書による合意の詰め。交渉当事者がテーブルを挟んで直接向き合い、討議する(2)の前に、既に広義の交渉は(1)の形で始まっていることを決して看過してはならぬ
。教授はこう力説してやまないのである。

 
(1)の段階でジャブを飛ばすのはいわゆる「悪い警官」(もしくは「悪玉」)とあだ名されるプーチン大統領の側近や部下たちである。その典型例は国後島や択捉島にあえて上陸したメドベージェフ大統領(その後、首相)。また、口を開けば「(日露間の)領土問題は第二次世界大戦の結果、既に解決済み」との強硬論を吐くラブロフ外相。直近の例ではマトビエンコ上院議長。山口県での日露首脳会談では「“島”の交渉は行われず、ただロシア法の枠組み内での北方領土での日露共同経済活動のみが討論の主題
になる」と、日本側の期待にクギを刺した。

 ちなみに言うならば、
日本側にこのような「悪玉」役を買って出る人物が皆無なのは、腑(ふ)に落ちない。例えば岸田文雄外相。国会での審議で「北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結することに努力する」とは述べる一方で、四島の「日本への」帰属を明言することに逡巡(しゅんじゅん)した。安倍晋三首相を「善玉」に見せかけるためにも、この際、思い切って「悪玉」役を買って出る勇気が望まれる


 大抵の場合は、プーチン大統領が「善玉」の得な役回りを演じる。「メドベージェフ、ラブロフ、マトビエンコ氏らに代表されるロシア国内の強硬派の声を抑えて、日本に対し可能な限りの好意を示すのは柔道愛好家の自分ならばこそ。支持率80%台を誇る自分が政権の座にいる今を除いては、日本が対露平和条約を結ぶ好機は永遠に訪れないであろう」-と。

≪狙いは日本からの半永久的支援≫
 最終段階になると
「良い警官」役を演じるプーチン氏自身も訪日前は当然の如(ごと)く強硬論を唱える
。10月27日の発言がそうである。
 同大統領は
「日本との平和条約締結の期限を設定するのは良くない。有害でさえある」と述べた。大統領はさらに続けた。「確かにロシアは2004年に中国との間で国境画定に合意した。が、それは中露関係が戦略パートナーシップ関係に到達していたからだった」。日本が類似のことを望むのならば、特定の期限を区切ることなく経済協力などを先行させるべきである
ことを示唆した。
 このプーチン発言は、改めて解説するまでもなく、同大統領の訪日前の揺さぶりである。安倍首相下の日本がまずなすべきことは、日露関係を中露間の戦略パートナーシップ関係の水準にまで引き上げるための努力を示すことだ。その誠意を見定めるのはあくまでロシア側であり、その程度に応じる形ではじめて日露間の平和条約交渉は進捗(しんちょく)するであろう-。このように説くことによって、
モスクワは歯舞、色丹の2島の引き渡しですら、いまだ既定の路線ではないことを思い起こさせ、東京から半永久的に対露支援を引き出そうと狙っている
のだ。

≪期限設定は敗北につながる≫
 ところが、物事は100%悪いということは少なく、プラスの側面も伴う。
今回のプーチン発言は、明らかに日本に対するブラフであるが、受け取り方次第では安倍政権に対する貴重な教訓がある。それは「平和条約締結の期限を設定するのは、有害でさえある」という点
に他ならない。

 民主党政権時代に
鳩山由紀夫首相は口癖のように「就任後半年か1年以内に、私は日露間の領土問題を解決する」と述べた。ところがその民主党のアンチテーゼとして華々しく再登場したはずの安倍首相もまた、鳩山元首相と似たようなせりふを口にするようになった。両人の間には政治思想上の違いはあるものの、ともに己こそソ連/ロシア問題の本家であるとの自負心の呪縛にとらわれている


 
交渉ごとで期限設定することは、それだけで自らに敗北を導く愚行
だと評さねばならない。相手側は当方が交渉の早期妥結を欲していることを知って、故意に焦(じ)らしや引き延ばし戦術に出ることが必定だからである。その結果、当方は自らが敷いた土俵で「独り相撲」をとる羽目になりかねない。
 
総裁任期を3期9年に延長した安倍首相には十分な時間が残されているはずである。またプーチン氏も18年の大統領選挙に勝利することがほぼ確実視される。その間ロシア、とりわけ極東部の経済情勢が好転する気配はない。安倍首相がいま博打(ばくち)に出て全ての有り金をかける必要は少しもないのだ。(きむら ひろし)

 予備折衝でジャブを飛ばす「悪玉」がロシアには揃っているが、日本側には皆無。本来露払いでその役にある岸田外相でさえ、「四島の「日本への」帰属を明言することに逡巡」しよいこぶっている始末なのですね。これでは、事前交渉の段階で土俵際に追い詰められていますね。
 さらに、解決の功名心と、期限を区切ることで、焦りが生じ相手の術中に嵌る。それが、短期政権を抱える日本の外務省が3流外交である一因でもありました。

 プーチン大統領が、「日本との平和条約締結の期限を設定するのは良くない。有害でさえある」と発言したことを、木村名誉教授は、ブラフではあるが、安倍政権に対する貴重な教訓だと指摘しておられます。
 「交渉ごとで期限設定することは、それだけで自らに敗北を導く愚行」だと指摘し、総裁任期延長が可能となった安倍首相は、同様に次期大統領選で勝利し長期政権が見込めるプーチン大統領との長期交渉が可能となり、「いま博打に出て全ての有り金をかける必要は少しもない」と指摘しておられるのですね。

 繰り返しになりますが、「“領土”では少しも譲ることなく、“経済”支援はなるべく多くを獲得したい」というロシア側の交渉姿勢が見えてきている今。チキンレースになっているのですから、経済支援だけ掠め取られる愚はさけねばなりません。
 日韓合意で、支援金だけ盗られて、大使館前の慰安婦像や、世界各地でのプロパガンダを止めることが無かった、過去の失政の上塗りを繰り返した、相手のいいなりになり、国内には成果だと誇る岸田外交。日露両国間での領土問題では、「ポーツマス条約」が、生きている条約だとカード化させる、木村名誉教授が指摘される「悪玉」が必要です。岸田大臣がその役を果たせない。なので、 世耕経済産業大臣兼ロシア経済分野協力担当大臣を任じた。それでもだめなら、青山繁晴参議院議員をロシア経済分野協力担当副大臣か政務官にして、「悪玉」役にあたっていただくのはどうでしょう。





  この花の名前は、紫蘭


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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
誰がメドベージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交





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