遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

米国の新大統領で日米同盟が消えたら

2016-05-24 23:58:58 | 米国 全般

 共和党の大統領候補はトランプということになりました。民主党は苦戦を続けていますが、ヒラリー氏が大統領候補となる見込みですね。大統領選挙は、トランプ氏とヒラリー氏との対決となりますが、直近の世論調査では、トランプ氏がヒラリー氏を上回る支持を得たとの報道がありますね。
 トランプ大統領誕生が現実味をおびてきています。
 日米安保についてのトランプ氏の発言は諸兄がご承知の通りです。実際に大統領になれば、選挙用の発言とは異なりスタッフを得て現実に即した政策に代わるとの声がきかれます。しかし、自分勝手な楽観論通りに行かないのは世の常。日米同盟が破綻した場合の事も想定しておく必要はあります。ことは、「想定外」では済まされない、日本国と国民の存続にかかわる問題なのですから。
 

【日米同盟が消える日】(上)崩れ去る均衡 「中国がすぐに尖閣奪う」 (5/24 産経)

 17日夜、東京・紀尾井町のホテルニューオータニ。警視庁警護官(SP)が不審者をあぶり出すべく監視の目を光らせる中、館内のレストランでは、安倍晋三首相がブッシュ前米大統領と食事をともにしていた

 当時の小泉純一郎首相とともに最良の日米関係に押し上げたブッシュ氏。安倍首相も官房副長官として訪米に同行してきたため思い出話は尽きなかったが、自然と日米間の“懸案”に話題は及んだ。不動産王、
ドナルド・トランプ氏が大統領になったら、日米関係はどうなるのか
-。

 「私は一線を退き、責任ある立場ではないが…」
 ブッシュ氏はこう前置きすると米大統領選の見立てを語り出した。「トランプ氏が勝つのは五分五分ではないか」。そして勝ったときの日米関係にも触れた。
 「
大統領になっても安全保障上、悲観的には考えていない。ただ日本に在日米軍の費用を全額負担させるかは本当に分からない…

 安倍首相はその言葉に黙って聞き入った。

 米大統領選で共和党候補指名を確実にしたトランプ氏は痛烈な日本批判を展開してきた。「同盟の解体」にまで踏み込み、日韓の核武装容認にも言及した。日米の当局者は困惑しつつも冷静に受け止めてはいる。
 アジア政策に関わる米政府当局者は「政権発足に近づけば専門家のブリーフィングを受け、現実路線に近づく」とし、予算や条約に関する米議会の権限の強さも制約になるとみる。日本政府筋も「レーガン元大統領も、登場したときは『大丈夫か』といわれたが、立派な実績を残した。トランプ氏の発言も選挙向きの側面がある」と分析する。
 しかし、そうした
楽観的な予想に反し、「同盟解体」のプロセスが現実化したら、見えてくるのは悪夢のシナリオ
だ。

 
海上保安庁巡視船が連日、中国公船とにらみ合う尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域
。中国は海軍艦艇の本格的な投入は避けてきた。在日米軍の「抑止力」が、その大きな要素であることは間違いない。しかし、同盟解体で均衡はもろくも崩れ去る。
 「
米軍が日本から撤退すれば、すぐに中国は尖閣に上陸する

 前海上自衛隊呉地方総監の伊藤俊幸氏はこう断言する。「日本にとっては大戦争だが、中国にしてみれば、せいぜい武力接触程度の認識でできる」
 
シナリオ
はこうだ。中国軍による尖閣占拠に対抗し、日本は首相が戦後初の防衛出動を下令。自衛隊が奪還のため急派され、交戦状態に突入する。
 潜水艦など能力に勝る自衛隊は犠牲を払いながらも尖閣を取り戻す。だが、物量で優位に立つ中国は二の矢、三の矢を放ち続ける。自衛隊は
憲法の制約で「専守防衛」に特化した装備のため中国が出撃拠点とする軍港や空港をたたくことができない。その役割を担っていた米軍は、もういない。戦いは長期化し、「最後は疲弊して尖閣は取られてしまう
」(伊藤氏)。
 確かに、平和に慣れた目には現実離れしたシナリオに映る。しかし、
「力の空白」が紛争に直結することは歴史を見れば明らか
だ。

■自主防衛 コスト24兆円

<中略>


 
日米同盟が解体され米軍が日本から撤退すれば、日本が取り得る現実的な選択肢は自主防衛だけだ。「自分の国は自分で守る」という気構えは当然でもある。日本は自主防衛で「十分やっていける」のか-。
 自主防衛となれば、日本はこれまで米軍に依存してきた防衛力を独自に整える必要性に迫られる。
日米同盟には自衛隊を「盾」、米軍を「矛」とする役割分担がある。日本は「専守防衛」の方針のもと、空母機動部隊や弾道ミサイル、巡航ミサイルといった「矛」にあたる装備体系を持たない。敵国が発射しようとするミサイルの基地を攻撃することすら自前でできない。北朝鮮の弾道ミサイル迎撃という「盾」の部分でも、発射の第一報を探知する衛星情報は米国に依存する。戦闘機やイージス艦のシステムなど、不可欠な装備も多くが米国製
だ。

 自主防衛の実現可能性を、数字で検証した試みがある。防衛大学校の武田康裕、武藤功両教授らは平成24年の著書『コストを試算! 日米同盟解体』(毎日新聞社)で、
自主防衛をとる場合のコストを試算し、「22兆2661億~23兆7661億円」という結果
をはじき出した。
 内訳は、米軍撤退で駐留経費負担4374億円が不要となるが、新たに空母や戦闘機、情報収集衛星など、米軍に依存してきた装備を4兆2069億円で取得する必要がある。維持コストなどを除外した試算だが、消費税でいえば2%の負担増になる。

 コストはハード面にとどまらない。「日米同盟が解体されるということは、日米の政治・経済の協力も損なわれることを意味する」(武田氏)からだ。
 
経済面では、貿易途絶▽株価下落▽国債の金利上昇▽エネルギーの調達コスト上昇-などの影響で、最大21兆3250億円のコスト増
。一方、米軍基地撤退で取り戻せる経済効果などの「逸失利益」は1兆3284億円にとどまる。武田氏はこう強調する。

 「問題は金額の多寡ではない。
いくらコストを費やして自主防衛に踏み切っても、結局は日米同盟と同じ水準の安全を享受することはできない
ということだ」

 トランプ氏が言及する
日本の核武装の実現可能性
はどうか。
 
憲法上は、核保有の可能性は排除されていない
。憲法9条は自衛のための必要最小限度を超えない実力の保持を認めており、この必要最小限度の範囲にとどまる限り、核兵器の保有を禁じていないというのがこれまでの政府解釈だ。
 実は、技術的な可能性の試算は存在する。政府は平成18年9月、非公式に「核兵器の国産可能性について」との内部文書をまとめ、「小型弾頭の試作までに最低3~5年、2000億~3000億円の予算と技術者数百人の動員が必要」との結論を出した。
 しかし、核保有を選択するなら、
日本はまず核拡散防止条約(NPT)を脱退しなければならず、北朝鮮のような国際的孤立や制裁を覚悟しなければならない。日本が核武装すれば、韓国などで「核ドミノ」が始まり、日本の安全保障環境はむしろ悪化しかねない。核保有を選択する合理的な理由はない
というのが多数の専門家の結論だ。

 「核の議論を教条的に否定することはないが、米国の『核の傘』の安定的維持、ミサイル防衛の強化、策源地(敵基地)攻撃能力など、議論には段階がある。
一足飛びに核保有や自主防衛という議論は非常に有害だ」。神保謙慶応大准教授(国際安全保障)はそう指摘する。

 東シナ海のEEZ境界線でのガス田開発では、日中共同開発が先送りの場所もありながら合意されましたが、閣僚級会合は中断したままで、中国側が一方的に開発を継続しています。
 中国 東シナ海ガス田を増強・軍事拠点化 - 遊爺雑記帳

 尖閣諸島や沖縄を巡る領有権については、尖閣近海では日本の領海に中国の「海監」が侵入を繰り返し、近海でも実質の管理実績を積み重ねようと、定期巡回をして中国漁船の管理をして、日本漁船の排除を行っていることは衆知のこととなっていますね。

 中国の侵略は、日々さほど気づきませんが、数年単位でみると、着実に進んでいます。中国の、艦船や航空機の増強、ガス田の設備を利用した制海空強化の為の情報施設増強は着々と進められています。
 それでも、遠慮気味に進めているのは、日米同盟と米軍の核の抑止力があるおかげです。そこに、米軍撤退の空白が生じればどうなるか。語りつくされていて、諸兄がご承知の通りのフィリピンに代表される南シナ海の状況が証明していますね。

 日米同盟なしで日本単独で中国の侵略を防げるのかは、記事で書かれている通り、不可能です。
 一番の大きな日中の軍事バランスは、核の抑止力。中国では多量のミサイルが、日本の重要拠点を標的にして配備・設置されています。日本は、核兵器は自前では持たず、米国に依存していますから、この抑止力(中国にとっての脅威)は霧散し、中国が日本を侵略する大きな脅威はなくなります。
 尖閣への上陸を謀って、陸海空の自衛隊が防衛しても、憲法の制約で敵地攻撃が出来ませんので、中国の基地は攻撃されることはなく無傷ですから、物量にものを言わせて攻め続けてこられれば、屈強の自衛隊と言えどもやがて戦力が消耗し敗北します。南シナ海、台湾海峡などのエネルギー供給路も閉ざされ、戦うことも出来なくなります。

 日米同盟破綻後の日本単独での自主防衛は、記事で指摘されている通り、軍備のハードの費用でも、経済上の減失でも負担の大きさは膨大です。
 では、北朝鮮流に核を保有することで抑止力を持って対抗するかとなりますが、技術的には可能でも、国際社会での孤立化が待っている話(トランプの米国は支持してくれる!)で、記事で指摘されている通り、核保有の合理的理由はないことになります。

 一方のヒラリー氏が大統領になった場合。
 国務長官時代には、尖閣は日米同盟の対象だと明言して、中国をけん制した米国政府主要閣僚の先鞭をつけていただきました。中国包囲網作りで、ミヤンマーにもいち早く飛びました。
 しかし、現状はかなり様子が変わって、親中色が強まっているとの報道が、少なくありませんね。
 
ヒラリー大統領誕生で日米関係はかつてない危機も ニューヨーク・タイムズ紙の辣腕記者が明かすヒラリーの本音 | JBpress(日本ビジネスプレス)

 どうやら、トランプ大統領になっても、ヒラリー大統領になっても、日米関係はこれまでとは変わった関係にならざるを得ない様相です。
 それは、米国民の選択によるものです。日本国民も、変化への対応が求められています。
 それは、日本が自国の安全保障について、普通の国になることなのです。



 # 冒頭の画像は、米ニュージャージー州ブラックウッドで開かれた選挙集会で演説するヒラリー・クリントン前国務長官




  コウヤボウキ


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中国、核ミサイルの標的 (角川oneテーマ21)




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