遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

露国境警備隊の地位変化

2006-08-20 11:54:58 | EEZ 全般
 「第31吉進丸」が拿捕され、銃撃で漁船乗組員が死亡させられました。
 日本の立場では、日本の領海内で起きた事件であり、人命にかかわった重大な事件で、政府(外務省)の対応には、宗男に言われるまでもなく、毅然とした態度が望まれます。
 ただ、現実は長く実効支配を続けるロシアとの外交が、パイプも細く先送りでなにもなされていない間に、ロシアの国勢が大きく変わってきた。このことへの対応が出来ていないという、国民を護る政府の怠慢があり、領土の主張が通らないのです。

 政府間での領海の食い違いは、民間協定でのコンブ漁、道知事の自粛で定められた北方領土との「中間ライン」のカニ漁の許可漁業や、サケ・マス漁についての日ソ漁業協力協定など漁業については切り離したロシアペースの交渉で、今日に至っています。

 プーチン大統領就任時に、惨憺たる経済環境だったロシアは、日本との領土問題も話し合う姿勢があったのですが、原油などの資源高騰や中国への軍需輸出で勢いを増し、BRICSとして世界の4大成長国に挙げられた今日、プーチン大統領の大国主義もあり、国境警備にも変化が出てきている様です。
 
ロシア、国益前面に 国境管理強化 (8/18 日経朝刊)

 ロシアのプーチン政権は原油高を背景に大国復活に自信を深めており、外交面でも国益を前面に打ち出している。対日関係ではエネルギー分野などで経済協力の推進を掲げる一方、北方領土周辺では国境管理を強化し、日本の領土返還要求をけん制する。

 今回の事件はロシアの強硬姿勢を浮き彫りにした格好だ。

 インタファクス通信などによると、ロシア軍は17日、カムチャッカ半島周辺で軍事演習を開始。国境警備隊を含む 5千人規模が参加、艦艇20隻を投入しているという。
 ロシア政府はクリール諸島(千島列島)の発展計画も進め、第一弾として国後、択捉両島で空港整備計画を打ち出した。国境管理と経済振興の両輪で、手薄な極東の安保を強化する構えだ。

 樺太からの石油・天然ガス、東シベリアからの石油パイプラインは、当初は日本向けに計画されていましたが、武器(空母や艦船、軍用機)輸出や合同演習を行うなど急接近している中国への優先供給建設をすることにしています。
 天秤にかけ、取引条件をつり上げるのも狙いとされていますが、平和条約を無視して火事場泥棒で開戦し、領土や覇権を広めた国ですから、頼りにして買える先でもないので、こちらから願い下げにするという制裁もある。
 
「テロ対策」船舶監視強化 露 (8/18 読売朝刊)

<前略>
権力機構内での国境警備隊の地位の変化が、国境管理強化をもたらしている点も重要だ。
旧ソ連時代、強大な秘密警察「国家保安委員会」(KGB)の一部だった国境警備隊は、ソ連崩壊後、別組織として独立。しかし、元KGB将校のプーチン大統領のもとで 3年前、再びKGBの後継機関「連邦保安局」(FSB)へ組み込まれた。
 ニコライ・パトルシェフFSB長官は今年、国境警備隊が管轄する「国境地帯」の範囲を大幅拡大する指令を発している。

 
露国境警備隊 日本に武力誇示? (8/18 読売朝刊)

<前略>
 今年初旬には、色丹島を訪問した日本からのビザなし交流団にその(国境警備隊の実戦訓練の)模様を公開した。
 演習は今月 5日、色丹島北部の斜古丹港で「海軍記念日」の行事として行われた。実弾は使わなかったが、巡視艇の機関銃発射や、迷彩服を着た国境警備隊員が銃撃戦のすえ上陸を試みる武装勢力を撃退するなどの演習を披露し、「武力」と「強さ」を前面に打ち出す内容だった。
 今回の交流団は65人で、日本全国の教職員と中高生を中心に組織された。国境警備隊の演習を30分あまり見学したが、参加者からは「辺境の島で具体的にテロの脅威はあるのか」「日本を仮想敵にしているのか」などの疑問や、「北方領土を日本に渡さないとの示威行動か」と、政治的なメッセージを読み取る見方も出ていた。

 この演習は例年、7月末に行われるが、今年は 1週間近く延期された。その理由をロシア側は「政府関係者が視察に訪れたため」と説明した。
 ビザなし交流は本来、日本と北方領土の住民の間の相互理解を目的とする。交流団は色丹島で 2日間にわたり学校や一般家庭を訪問したり、住民との対話集会を行った。その中で国境警備隊の演習は極めて異質なものだった。

 缶詰製造などの水産物加工工場が破産し、島の経済が壊滅状態になり、島が日本になることを歓迎し、観光客歓迎の頃ならサービスでやってくれたかもしれませんが、島最大のお祭りの日のイベントとはいえ、わざわざ交流団に長時間見せることはないものでしょう。
 写真を見る限りでは、国内の自衛隊がお祭りでイロイロ見せてくれる規模にも及ばない感じはありますが...。

 ロシア側の言い分では、吉進丸は無灯火で領海侵犯し、停船命令に従わなかったとか、逃走する中でロシアの警備艇に船体をぶつけたとか言われていますが、定かではありません。

 盛田光広さんには、35歳という働き盛りでの事件で、ご家族の皆様を思えば言葉もありませんが、お悔やみを申し上げます。ご遺体が、なんとか返されてきたのは、せめてもの慰めでしょうか。
 地元では、花咲ガニの漁獲量が減っていて、ロシアからは花咲港へ倍近い入荷があるとのことで、好漁場をめざしぎりぎりの境界での操業をせざるを得ないとのことです。
 人命を奪われたのですから、制裁と再発防止が日本としても必用です。カニなどのロシアからの輸入を規制するような、保護兼、対ロ制裁も検討すべきですし、国境警備(日本の取り締まり不備を唱えられている)増強で、艦艇や監視用航空機の増強を、ロシアの要求に応えて図るべきでしょう。

 東シナ海や日本海での増強が必用で、北方から戦力を移行しているのですが...。


 

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2 コメント

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外務省の無策でしょうか・・・・ (tsubamerailstar)
2006-08-26 11:01:37
この件は盆明けに私も驚きました。50年ぶり云々といっても前回は日ソ共同宣言の前ですからねぇ。「ムネオハウス」が期せずして脚光を浴びる形ともなりましたが、その宗男氏によると、ロシアの国境警備隊との交流をないがしろにしていたせいなのだそうです。かつて自分がそれに努めていたとはいえ、それが根本的な解決ではなかったわけですが。

親日エリツィン大統領の時がチャンスだったのかもしれませんね。ご指摘されている通りロスケは最近資源関係で態度LLです。(汗)

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Re: 外務省の無策でしょうか・・・・ (遊爺)
2006-08-27 00:12:18
tsubamerailstarさん、お久しぶりです。



 小泉首相が、中露牽制の旅とかで、中央アジアのカザフスタン、ウズベキスタン両国を歴訪するそうですね。

 残り少ない任期での訪問、ロシアとの連係無しの訪問で、中露にも欧米各国にも揉まれている中央アジア各国に、何処まで食い込めるか、遅きに失しているとの批判もあるようですが、行かないより良いわけで、結果に注目したいですね。

 武部さんがロシアで今回の事件と、今後の領土問題を話しているようですが、まるで相手にされていない様子ですね。

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