演説は英語で約45分間行われ、計十数回のスタンディングオベーション(回数は特に多いわけでもない)がありましたが、議場を最も沸かせたし、注目されたのは、「深い悔悟(deep repentance)」の念を表明したことと、続いて硫黄島に上陸したローレンス・スノーデン米海兵隊中将と、日本側で戦いを指揮した栗林忠道中将の孫にあたる新藤義孝・前総務相を紹介し、日米の和解の象徴として握手する演出があった時だったそうです。
安倍首相は米議会上下両院合同会識で行った演説で、米国の一部にある首相に対する「歴史修正主義者」との懸念を払拭するため、先の大戦への「反省」を語り、両国の和解の歴史と「未来志向」を強調した。今夏発表する戦後70年談話に向け、米側の理解を深めておく狙いがある。(政治部 志磨力=ワシントンで)
「おわび」「侵略」は触れず
首相は演説の冒頭、1957年に祖父の岸信介氏が同じ演台で述べた「日本が、世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからだ」という言葉を引用し、最初のスタンディングオベーションを浴びた。
首相は一語一語しっかりした英語の発音で、演説後半には時折、手ぶりを交えて熱弁した。
■悔悟
首相が演説した合同会議は、1941年12月の真珠湾攻撃の翌日、当時のルーズベルト大統領が「昨日、1941年12月7日は、屈辱の日として生き続けるだろう」と演説し、上下両院で対日宣戦布告案の可決に導いた場所だ。
首相は演説の前半、第2次大戦の戦没者を慰霊する記念碑を直前に訪問したことを報告。「真珠湾」や、旧日本軍が指示した行進によって多くの米軍犠牲者を出した「バターン」の名前を挙げ、「歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものだ。私は悔悟を胸に、黙とうをささげた」と述べた。
首相は続けて、太平洋戦争の激戦地だった硫黄島に上陸した米海兵隊中将と、硫黄島の戦いを指揮した栗林忠道中将の孫にあたる新藤義孝・前総務相を紹介し、「熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯(ちゅうたい)が結ぶ友になった」と和解を強調。戦後70年、友好の歴史を築き上げてきた両国を重ね合わせた。
■談話引き継ぐ
首相はこれに続き、歴史認識問題について、「先の大戦に対する痛切な反省」「自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない」と言及した。
従来通り、反省を示す一方で「おわび」や「侵略」などに触れることは避けた。ただ、日本が過去にアジアの人々に苦痛を与えたことを自らの言葉で認めた。
戦後50年の村山富市首相談話(村山談話)の「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」とする部分を言い換えたともとれる内容だ。
「事実から目をそむけてはならない」とする表現は、ワイツゼッカー元ドイツ大統領の「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」という有名な発言を思い起こさせる。
首相は続けて、「これらの点についての思いは、歴代首相と全く変わるものではない」とも述べた。米側は、首相が歴代内閣の歴史認識を受け継ぐかどうかに関心があるとされる。明言はしないが、村山談話を引き継ぐ立場を示した格好だ。
首相周辺は、「今月22日に日中首脳会談ができたこともあり、『おわび』を盛り込むなどの妥協はせず、当初から検討していた案の通りだ」と解説した。
首相は、訪米後も演説の練習を繰り返し、28日の首脳会談の朝も演説の仕上げを行う力の入れようだったという。
米政府 首相姿勢を評価 背景に「韓国疲れ」◆米報道厳しい論調も
「私たちはこの数十年を通じ、日本が過去から非常につらい教訓を受け入れ、今、平和を愛する国になっていることを知っている」
オバマ大統領は28日の共同記者会見で、日本が平和国家として歩んだ道のりをだたえた。
オバマ政権は最近、安倍首相に戦後50年の「村山談話」など過去の政府見解の継承を堅持するよう促しつつ、安倍政権が建設的な姿勢を示していることを重ねて評価している。
首相の議会演説を前にオバマ政権のこうした空気を生んだ大きな要因が、「韓国疲れ」だ。
米政府高官は、「歴史問題の解決を難しくしているのは、韓国に日本を受け入れる意思がないことだ」と率直に語る。昨年3月にはオバマ氏の仲介で日米韓首脳会談を開催し、その後も再三歩み寄りを求めているが、韓国側は日韓首脳会談開催に応じる気配はない。
それでも、韓国政府は歴史問題で攻勢を強めている。米司法省によると、在米韓国大使館は米広報会社と3月、月額2万6000ドル(約310万円)の半年契約を結んだ。韓国政府関係者によると、米政策研究機関の知日派らを韓国側に取り込む狙いがあり、「安倍首相の議会演説があるので、青瓦台(韓国大統領府)が認めた」と明かす。
慰安婦問題では、韓国系団体が28、29両日、米議会前で抗議集会を開いた。28日付のワシントン・ポスト紙に全面広告を出し、首相に演説での「明快な謝罪」を要求した。
米メディアでも、韓国側にも譲歩を促す米政府とは対照的に、安倍首相に厳しい論調が少なくない。ニューヨーク・タイムズ紙は20日付の社説で「多数の女性を性奴隷として働かせた」などと指摘し、安倍政権が「歴史の歪曲」をしていると批判。ワシントン・ポスト紙も元慰安婦の主張を掲載した。首相の議会演説を契機に、歴史問題に注目が集まる形となっている。 (ワシントン支局 今井隆)
安倍首相の演説を聴いた米議員の反応は、おおむね好意的だったようですね。首相を米議会演説に招請したベイナー下院議長(共和党)は声明を発表し、「第2次世界大戦で命を落とした英雄たちに対して首相が敬意を表したことに、本当に感謝している」と述べ、首相の演説を聴いたスティーブ・コーエン下院議員(民主党)は議会内で記者団に対し、首相の第2次大戦に関する発言を「歴史的で適切なものだった」と評価したそうです。
韓国系・中国系米国人を支持基盤とする議員からは、いわゆる従軍慰安婦問題での謝罪がないことなどに批判が上がったのは、記事でも指摘されている、韓国政府の事前のロビー活動や、中国系の抗日連合会の暗躍がある証ですね。
記事で指摘されている、オバマ政権内部での「韓国疲れ」は浸透してきている様ですから、反発する議員もいつものメンバーに限られるということでしょう。
ただ、少し気がかりなのは、メディアの反応です。ニューヨークタイムスやワシントンポストと言った中国の毒牙に犯されたメディアはいつものことで驚きませんが、いつもは中立報道をしているWSJが、中朝のプロパガンダ寄りの記事を書いているところです。
米欧メディア「全面謝罪に至らず」 安倍首相の議会演説 :日本経済新聞
米国から観る、戦勝国の米国と敗戦国の日本の関係。その和解と未来志向での関係構築の節目となったことには間違いありませんが、一朝一夕に急転回とはいきません。
日米同盟の絆の強化と、対中抑止力の誇示といった目的は十分に達成されたと考えます。
安倍首相は、この後、ロスやサンフランシスコを訪問します。慰安婦像の設置のメッカへ乗り込むのです。
どのような行動や言動がなされるのか、議会での講演に次ぐ今回の訪米の目玉だと注目しています。
平成27年4月29日 米国連邦議会上下両院合同会議における安倍内閣総理大臣演説 | 首相官邸ホームページ
# 冒頭の画像は、米国議会で演説する安倍首相
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