中国とロシアはかつてないほど緊密な関係にあり、権威主義的な大国同士が結束して、西側諸国の包囲網とみなす動きに立ち向かおうとしている。
カザフスタンで3~4日に開かれる上海協力機構(SCO)首脳会議を前に、プーチン氏と中国の習近平国家主席は現地で会談し、双方が二国間関係の現状を称賛した。しかし、ロシアにとって裏庭の中央アジアでは、プーチン氏と習氏が「無制限」と宣言した友好関係が、中国の世界的野心と衝突している。
カザフスタンで3~4日に開かれる上海協力機構(SCO)首脳会議を前に、プーチン氏と中国の習近平国家主席は現地で会談し、双方が二国間関係の現状を称賛した。しかし、ロシアにとって裏庭の中央アジアでは、プーチン氏と習氏が「無制限」と宣言した友好関係が、中国の世界的野心と衝突している。
中国はロシアによるウクライナ侵攻を機に、ロシアの伝統的な勢力圏を切り崩そうとしている。ロシアは軍事機構の維持を中国に依存しているため、中国の侵入を黙認せざるを得ない。
戦略的要衝である中央アジア全体で、中国は域内経済を自らの勢力圏に引き込もうとしている。中国の投資により、この地域の若い労働者のロシア離れが進んでいる。
国際移住機関(IOM)によると、2023年はロシアで働くウズベキスタン人が約130万人となり、前年の145万人から減少した。その理由は複雑だが、クルマトフさんは中国資本の仕事の増加を一因に挙げている。「失業者は皆、ロシアまで行かなくても、ここで仕事を見つけられる」
中央アジアにおけるパワーシフトは何年も前から始まっていたが、ロシアによるウクライナ侵攻後にその流れが加速した。
中央アジア5カ国はいずれもウクライナ侵攻に関してロシアを支持せず、中立を保った。
米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのテムール・ウマロフ研究員は「中国は中央アジアの未来像を示している。ロシアは、中央アジア独自の戦略的目標に投資しない近視眼的な政治体制だ」と語る。
ロシアと中国は長年にわたり、この地域で暗黙の役割分担をしてきた。 ロシアは安全保障を提供し、中国は開発と投資に重点を置くというものだ。
中国は今、開発・投資という役割に一層傾倒し、巨大な経済力を政治的影響力の拡大に利用することで、このバランスを崩そうとしている。
中国は昨年、ウズベキスタンの貿易相手国トップの座をロシアから奪った。ウズベキスタンは20年にわたる孤立主義を転換し、世界経済との融合を図っている。
ウズベキスタンに進出した新たな中国企業である電気自動車(EV)大手BYDは6月27日、ジザフ州の新工場で生産を開始し、年間5万台の生産を目指す。
バッテリーなどの主要部品は中国から輸送され、現地労働者が溶接・塗装から車の組み立てまで行う。
公式統計によると、ウズベキスタンが2023年に輸入した自動車7万3000台余りのうち、中国からの輸入は80%近くを占めた。ロシアからの輸入は需要が大幅に落ち込んだため、ロシア車は現在、「その他の国」に分類されている。
中国、キルギス、ウズベキスタンの首脳は6月上旬、1997年から協議されてきた、3カ国を結ぶ鉄道建設プロジェクトに関する重要な協定に署名した。ロシアを迂回(うかい)することで、東アジアから中東、南欧への距離を数百キロ短縮する狙いだ。
中国は、ロシアが伝統的に支配してきたエネルギー分野でも同国に挑んでいる。ウズベキスタンは、2023年にロシア産ガス購入契約を結んだが、今のところ契約期間は2年にとどめている。アナリストはこれについて、ロシアがガスを政治的に利用した場合の備えだと指摘。
一方、中国の再生可能エネルギー企業である隆基緑能科技(ロンジ・グリーンエナジー・テクノロジー)や金風科技(ゴールドウインド)の太陽電池モジュールや風力タービンを積んだトラックや列車がウズベキスタンを横断している。これは発電量に占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに40%以上に引き上げるという、ウズベキスタン政府の取り組みの一環だと、WSJのシャフア。
中国はロシアの役割を完全に奪うことはできない。中央アジアのエリート層のキャリアと人脈はロシアと深く結びついており、ロシア語は依然として共通語。
それでも、中央アジアの新世代エリート層に中国が浸透しつつある兆しが既に見られると、WSJのシャフア。
ウズベキスタンのエリート高校出身で、大学で経営学を専攻するノディルソン・マフムドフさん(19)は、クラスメート26人のうち中国に留学したのは3人で、ロシアはゼロだったと話す。以前ならロシアの大学を志望する人が多かっただろうという。
BYD車がすごく欲しいと語るマフムドフさんは仕事もしており、民間の語学家庭教師会社「香港アカデミー」でマーケティングマネジャーを務める。
キャリアアップを目指す政府関係者やビジネスマンも中国語の家庭教師を探しにやって来ると、マフムドフさん。
「彼らは皆、未来は中国にあると考えている」と。
# 冒頭の画像は、習近平と、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領
この花の名前は、エキナセア
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
月刊Hanada2024年2月号 - 花田紀凱, 月刊Hanada編集部 - Google ブックス
カザフスタンで3~4日に開かれる上海協力機構(SCO)首脳会議を前に、プーチン氏と中国の習近平国家主席は現地で会談し、双方が二国間関係の現状を称賛した。しかし、ロシアにとって裏庭の中央アジアでは、プーチン氏と習氏が「無制限」と宣言した友好関係が、中国の世界的野心と衝突している。
カザフスタンで3~4日に開かれる上海協力機構(SCO)首脳会議を前に、プーチン氏と中国の習近平国家主席は現地で会談し、双方が二国間関係の現状を称賛した。しかし、ロシアにとって裏庭の中央アジアでは、プーチン氏と習氏が「無制限」と宣言した友好関係が、中国の世界的野心と衝突している。
中国はロシアによるウクライナ侵攻を機に、ロシアの伝統的な勢力圏を切り崩そうとしている。ロシアは軍事機構の維持を中国に依存しているため、中国の侵入を黙認せざるを得ない。
戦略的要衝である中央アジア全体で、中国は域内経済を自らの勢力圏に引き込もうとしている。中国の投資により、この地域の若い労働者のロシア離れが進んでいる。
ロシアの「裏庭」で勢力争い、中露の微妙な関係 - WSJ
ウクライナ戦争でロシアの影響力が低下した中央アジアで、中国が勢力を拡大中
By Sha Hua 2024年7月4日
【タシケント(ウズベキスタン)】ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が5月、アジア諸国で自身の権威をアピールする外交攻勢の一環としてウズベキスタンの首都タシケントを訪れた時、現地当局は大通りにプーチン氏のポスターを掲げた。いまだロシアの大きな影響下にある旧ソ連構成国では当然の対応だった。
だが、そのポスターの足元の光景は、ロシアの国際的な影響力の低下を浮き彫りにするものだった。ウズベキスタンの街中を走り回る自動車は、比亜迪(BYD)や吉利汽車(ジーリー)などの中国ブランドがますます増える一方、ロシアブランドのラーダは減っているのだ。
中国とロシアはかつてないほど緊密な関係にあり、権威主義的な大国同士が結束して、西側諸国の包囲網とみなす動きに立ち向かおうとしている。
カザフスタンで3~4日に開かれる上海協力機構(SCO)首脳会議を前に、プーチン氏と中国の習近平国家主席は現地で会談し、双方が二国間関係の現状を称賛した。しかし、ロシアにとって裏庭の中央アジアでは、プーチン氏と習氏が「無制限」と宣言した友好関係が、中国の世界的野心と衝突している。
中国はロシアによるウクライナ侵攻を機に、ロシアの伝統的な勢力圏を切り崩そうとしている。ロシアは軍事機構の維持を中国に依存しているため、北極圏と同様、中央アジアにおいても中国の侵入を黙認せざるを得ない。
戦略的要衝である中央アジア全体で、中国は域内経済を自らの勢力圏に引き込もうとしている。中国の投資により、この地域の若い労働者のロシア離れが進んでいる。中国が出資する鉄道は、ロシアを経由せずに中央アジアと欧州を結ぶルートとなる予定だ。また、中国の再生可能エネルギープロジェクトは、この地域のロシア産ガスへの依存度を下げるのに役立っている。
ウズベキスタン中部の中国系工場で働くサンジャルベク・クルマトフさん(29)は、中国マネーのおかげでウズベキスタン国民の就業見通しが劇的に変わったと話す。
国際移住機関(IOM)によると、2023年はロシアで働くウズベキスタン人が約130万人となり、前年の145万人から減少した。その理由は複雑だが、クルマトフさんは中国資本の仕事の増加を一因に挙げている。「失業者は皆、ロシアまで行かなくても、ここで仕事を見つけられる」
帝政時代のロシアにとって中央アジアは、米国の開拓者にとっての「西部」のようなものだった。すなわち、荒野とされる土地に進出し、近代化し、資源を搾取した。搾取と近代化はソビエト連邦下でも続けられ、ソ連は中国の侵入を受けないよう国境を厳重に守った。
中央アジアにおけるパワーシフトは何年も前から始まっていたが、ロシアによるウクライナ侵攻後にその流れが加速した。この地域ではウクライナ侵攻を、同じ旧ソ連構成国の領土一体性に対する軽率かつ不吉な侵害行為と受け止める人が多かった。中央アジア5カ国はいずれもウクライナ侵攻に関してロシアを支持せず、中立を保った。
米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのテムール・ウマロフ研究員は「中国は中央アジアの未来像を示している。ロシアは、中央アジア独自の戦略的目標に投資しない近視眼的な政治体制だ」と語る。
ロシアと中国は長年にわたり、この地域で暗黙の役割分担をしてきた。 ロシアは安全保障を提供し、中国は開発と投資に重点を置くというものだ。
中国は今、開発・投資という役割に一層傾倒し、巨大な経済力を政治的影響力の拡大に利用することで、このバランスを崩そうとしている。中国と中央アジアの貿易額は2023年に890億ドルに達した。
ウズベキスタンはソ連崩壊後の中央アジア5カ国の中で最も人口が多く、最も工業化が進んでいる。公式統計によると、中国は昨年、ウズベキスタンの貿易相手国トップの座をロシアから奪った。ウズベキスタンは20年にわたる孤立主義を転換し、世界経済との融合を図っている。
クルマトフさんが働く鵬盛工業団地は、ウズベキスタン中部の都市シルダリヤの近くにあり、2009年に中国の資金で立ち上げられた。このところの投資流入に伴い、現在では十数社の中国企業が入居している。
クルマトフさんは、工業地帯の隣にある、同じく中国マネーで建設された公園に息子を連れて行くのが好きで、中国語と英語で教える新しい幼稚園に息子を通わせたいと話す。「もっと多くの中国企業に来てほしい」
ウズベキスタンに進出した新たな中国企業である電気自動車(EV)大手BYDは6月27日、ジザフ州の新工場で生産を開始し、年間5万台の生産を目指す。同州はウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領の出生地だ。バッテリーなどの主要部品は中国から輸送され、現地労働者が溶接・塗装から車の組み立てまで行う。
公式統計によると、ウズベキスタンが2023年に輸入した自動車7万3000台余りのうち、中国からの輸入は80%近くを占めた。ロシアからの輸入は2021年時点では約4500台だったが、需要が大幅に落ち込んだため、ロシア車は現在、「その他の国」に分類されている。
中国が新設した約19キロのトンネルは、ウズベキスタン東部のフェルガナ盆地と同国の他の地域を鉄道で直接結ぶルートに道を開いた。また、中国が建設した幹線道路によってタジキスタンの北部と南部の移動時間が8時間短縮された。
かつてソ連が中央アジアに建設した鉄道や幹線道路は、その大半がモスクワに通じていた。域内だけでなく世界とのつながりを欠いた中央アジアは、世界有数の孤立地域となった。
より大きな変化が訪れる可能性がある。中国、キルギス、ウズベキスタンの首脳は6月上旬、1997年から協議されてきた、3カ国を結ぶ鉄道建設プロジェクトに関する重要な協定に署名した。ロシアを迂回(うかい)することで、東アジアから中東、南欧への距離を数百キロ短縮する狙いだ。
中国は、ロシアが伝統的に支配してきたエネルギー分野でも同国に挑んでいる。ウズベキスタンは、停電が相次いだことを受けて2023年にロシア産ガス購入契約を結んだが、今のところ契約期間は2年にとどめている。アナリストはこれについて、ロシアがガスを政治的に利用した場合の備えだと指摘している。
一方、中国の再生可能エネルギー企業である隆基緑能科技(ロンジ・グリーンエナジー・テクノロジー)や金風科技(ゴールドウインド)の太陽電池モジュールや風力タービンを積んだトラックや列車がウズベキスタンを横断している。これは発電量に占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに40%以上に引き上げるという、ウズベキスタン政府の取り組みの一環だ。
ウズベキスタンの元外交官で、タシケントに拠点を置くシンクタンク「進歩的改革センター」の創設者であるミルショヒド・アスラノフ氏は「われわれはロシアと友好関係にあるが、同時にチャンスも探している」と語る。「かなり熱心に、東方に目を向けている」
中国はロシアの役割を完全に奪うことはできない。中央アジアのエリート層のキャリアと人脈はロシアと深く結びついており、ロシア語は依然として共通語である。
中国のイメージは、中央アジアの多くの人と文化・言語が近いトルコ系イスラム教徒ウイグル族に対する扱いや、一部のロシア語メディアがあおる反中感情によって傷つけられてきた。それでも、中央アジアの新世代エリート層に中国が浸透しつつある兆しが既に見られる。
ウズベキスタンのエリート高校出身で、大学で経営学を専攻するノディルソン・マフムドフさん(19)は、クラスメート26人のうち中国に留学したのは3人で、ロシアはゼロだったと話す。以前ならロシアの大学を志望する人が多かっただろうという。
BYD車がすごく欲しいと語るマフムドフさんは仕事もしており、民間の語学家庭教師会社「香港アカデミー」でマーケティングマネジャーを務める。ある夏の午後、初心者クラスでは11~21歳の生徒8人が熱心に漢字を学んでいた。
キャリアアップを目指す政府関係者やビジネスマンも中国語の家庭教師を探しにやって来ると、マフムドフさんは言う。「彼らは皆、未来は中国にあると考えている」
-----------------------------------------------
Sha Hua (シャフア) レポーター、ウォールストリートジャーナル
シャフアはウォールストリートジャーナルのシンガポール支局の記者であり、中国の気候、エネルギー、科学の政策、および中国とヨーロッパの関係について書いています。
彼女は、中国の指導者習近平の取材により、2021年に国際報告部門のピューリッツァーファイナリストに指名されたジャーナルのチームの一員でした。他のジャーナル記者と一緒に, 彼女は、中国が海外でその経済力をどのように予測したかを調査した一連の記事で、2022年に全国プレスクラブのヒンリッヒ財団の貿易に関する著名な報告賞を受賞しました。
ウクライナ戦争でロシアの影響力が低下した中央アジアで、中国が勢力を拡大中
By Sha Hua 2024年7月4日
【タシケント(ウズベキスタン)】ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が5月、アジア諸国で自身の権威をアピールする外交攻勢の一環としてウズベキスタンの首都タシケントを訪れた時、現地当局は大通りにプーチン氏のポスターを掲げた。いまだロシアの大きな影響下にある旧ソ連構成国では当然の対応だった。
だが、そのポスターの足元の光景は、ロシアの国際的な影響力の低下を浮き彫りにするものだった。ウズベキスタンの街中を走り回る自動車は、比亜迪(BYD)や吉利汽車(ジーリー)などの中国ブランドがますます増える一方、ロシアブランドのラーダは減っているのだ。
中国とロシアはかつてないほど緊密な関係にあり、権威主義的な大国同士が結束して、西側諸国の包囲網とみなす動きに立ち向かおうとしている。
カザフスタンで3~4日に開かれる上海協力機構(SCO)首脳会議を前に、プーチン氏と中国の習近平国家主席は現地で会談し、双方が二国間関係の現状を称賛した。しかし、ロシアにとって裏庭の中央アジアでは、プーチン氏と習氏が「無制限」と宣言した友好関係が、中国の世界的野心と衝突している。
中国はロシアによるウクライナ侵攻を機に、ロシアの伝統的な勢力圏を切り崩そうとしている。ロシアは軍事機構の維持を中国に依存しているため、北極圏と同様、中央アジアにおいても中国の侵入を黙認せざるを得ない。
戦略的要衝である中央アジア全体で、中国は域内経済を自らの勢力圏に引き込もうとしている。中国の投資により、この地域の若い労働者のロシア離れが進んでいる。中国が出資する鉄道は、ロシアを経由せずに中央アジアと欧州を結ぶルートとなる予定だ。また、中国の再生可能エネルギープロジェクトは、この地域のロシア産ガスへの依存度を下げるのに役立っている。
ウズベキスタン中部の中国系工場で働くサンジャルベク・クルマトフさん(29)は、中国マネーのおかげでウズベキスタン国民の就業見通しが劇的に変わったと話す。
国際移住機関(IOM)によると、2023年はロシアで働くウズベキスタン人が約130万人となり、前年の145万人から減少した。その理由は複雑だが、クルマトフさんは中国資本の仕事の増加を一因に挙げている。「失業者は皆、ロシアまで行かなくても、ここで仕事を見つけられる」
帝政時代のロシアにとって中央アジアは、米国の開拓者にとっての「西部」のようなものだった。すなわち、荒野とされる土地に進出し、近代化し、資源を搾取した。搾取と近代化はソビエト連邦下でも続けられ、ソ連は中国の侵入を受けないよう国境を厳重に守った。
中央アジアにおけるパワーシフトは何年も前から始まっていたが、ロシアによるウクライナ侵攻後にその流れが加速した。この地域ではウクライナ侵攻を、同じ旧ソ連構成国の領土一体性に対する軽率かつ不吉な侵害行為と受け止める人が多かった。中央アジア5カ国はいずれもウクライナ侵攻に関してロシアを支持せず、中立を保った。
米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのテムール・ウマロフ研究員は「中国は中央アジアの未来像を示している。ロシアは、中央アジア独自の戦略的目標に投資しない近視眼的な政治体制だ」と語る。
ロシアと中国は長年にわたり、この地域で暗黙の役割分担をしてきた。 ロシアは安全保障を提供し、中国は開発と投資に重点を置くというものだ。
中国は今、開発・投資という役割に一層傾倒し、巨大な経済力を政治的影響力の拡大に利用することで、このバランスを崩そうとしている。中国と中央アジアの貿易額は2023年に890億ドルに達した。
ウズベキスタンはソ連崩壊後の中央アジア5カ国の中で最も人口が多く、最も工業化が進んでいる。公式統計によると、中国は昨年、ウズベキスタンの貿易相手国トップの座をロシアから奪った。ウズベキスタンは20年にわたる孤立主義を転換し、世界経済との融合を図っている。
クルマトフさんが働く鵬盛工業団地は、ウズベキスタン中部の都市シルダリヤの近くにあり、2009年に中国の資金で立ち上げられた。このところの投資流入に伴い、現在では十数社の中国企業が入居している。
クルマトフさんは、工業地帯の隣にある、同じく中国マネーで建設された公園に息子を連れて行くのが好きで、中国語と英語で教える新しい幼稚園に息子を通わせたいと話す。「もっと多くの中国企業に来てほしい」
ウズベキスタンに進出した新たな中国企業である電気自動車(EV)大手BYDは6月27日、ジザフ州の新工場で生産を開始し、年間5万台の生産を目指す。同州はウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領の出生地だ。バッテリーなどの主要部品は中国から輸送され、現地労働者が溶接・塗装から車の組み立てまで行う。
公式統計によると、ウズベキスタンが2023年に輸入した自動車7万3000台余りのうち、中国からの輸入は80%近くを占めた。ロシアからの輸入は2021年時点では約4500台だったが、需要が大幅に落ち込んだため、ロシア車は現在、「その他の国」に分類されている。
中国が新設した約19キロのトンネルは、ウズベキスタン東部のフェルガナ盆地と同国の他の地域を鉄道で直接結ぶルートに道を開いた。また、中国が建設した幹線道路によってタジキスタンの北部と南部の移動時間が8時間短縮された。
かつてソ連が中央アジアに建設した鉄道や幹線道路は、その大半がモスクワに通じていた。域内だけでなく世界とのつながりを欠いた中央アジアは、世界有数の孤立地域となった。
より大きな変化が訪れる可能性がある。中国、キルギス、ウズベキスタンの首脳は6月上旬、1997年から協議されてきた、3カ国を結ぶ鉄道建設プロジェクトに関する重要な協定に署名した。ロシアを迂回(うかい)することで、東アジアから中東、南欧への距離を数百キロ短縮する狙いだ。
中国は、ロシアが伝統的に支配してきたエネルギー分野でも同国に挑んでいる。ウズベキスタンは、停電が相次いだことを受けて2023年にロシア産ガス購入契約を結んだが、今のところ契約期間は2年にとどめている。アナリストはこれについて、ロシアがガスを政治的に利用した場合の備えだと指摘している。
一方、中国の再生可能エネルギー企業である隆基緑能科技(ロンジ・グリーンエナジー・テクノロジー)や金風科技(ゴールドウインド)の太陽電池モジュールや風力タービンを積んだトラックや列車がウズベキスタンを横断している。これは発電量に占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに40%以上に引き上げるという、ウズベキスタン政府の取り組みの一環だ。
ウズベキスタンの元外交官で、タシケントに拠点を置くシンクタンク「進歩的改革センター」の創設者であるミルショヒド・アスラノフ氏は「われわれはロシアと友好関係にあるが、同時にチャンスも探している」と語る。「かなり熱心に、東方に目を向けている」
中国はロシアの役割を完全に奪うことはできない。中央アジアのエリート層のキャリアと人脈はロシアと深く結びついており、ロシア語は依然として共通語である。
中国のイメージは、中央アジアの多くの人と文化・言語が近いトルコ系イスラム教徒ウイグル族に対する扱いや、一部のロシア語メディアがあおる反中感情によって傷つけられてきた。それでも、中央アジアの新世代エリート層に中国が浸透しつつある兆しが既に見られる。
ウズベキスタンのエリート高校出身で、大学で経営学を専攻するノディルソン・マフムドフさん(19)は、クラスメート26人のうち中国に留学したのは3人で、ロシアはゼロだったと話す。以前ならロシアの大学を志望する人が多かっただろうという。
BYD車がすごく欲しいと語るマフムドフさんは仕事もしており、民間の語学家庭教師会社「香港アカデミー」でマーケティングマネジャーを務める。ある夏の午後、初心者クラスでは11~21歳の生徒8人が熱心に漢字を学んでいた。
キャリアアップを目指す政府関係者やビジネスマンも中国語の家庭教師を探しにやって来ると、マフムドフさんは言う。「彼らは皆、未来は中国にあると考えている」
-----------------------------------------------
Sha Hua (シャフア) レポーター、ウォールストリートジャーナル
シャフアはウォールストリートジャーナルのシンガポール支局の記者であり、中国の気候、エネルギー、科学の政策、および中国とヨーロッパの関係について書いています。
彼女は、中国の指導者習近平の取材により、2021年に国際報告部門のピューリッツァーファイナリストに指名されたジャーナルのチームの一員でした。他のジャーナル記者と一緒に, 彼女は、中国が海外でその経済力をどのように予測したかを調査した一連の記事で、2022年に全国プレスクラブのヒンリッヒ財団の貿易に関する著名な報告賞を受賞しました。
国際移住機関(IOM)によると、2023年はロシアで働くウズベキスタン人が約130万人となり、前年の145万人から減少した。その理由は複雑だが、クルマトフさんは中国資本の仕事の増加を一因に挙げている。「失業者は皆、ロシアまで行かなくても、ここで仕事を見つけられる」
中央アジアにおけるパワーシフトは何年も前から始まっていたが、ロシアによるウクライナ侵攻後にその流れが加速した。
中央アジア5カ国はいずれもウクライナ侵攻に関してロシアを支持せず、中立を保った。
米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのテムール・ウマロフ研究員は「中国は中央アジアの未来像を示している。ロシアは、中央アジア独自の戦略的目標に投資しない近視眼的な政治体制だ」と語る。
ロシアと中国は長年にわたり、この地域で暗黙の役割分担をしてきた。 ロシアは安全保障を提供し、中国は開発と投資に重点を置くというものだ。
中国は今、開発・投資という役割に一層傾倒し、巨大な経済力を政治的影響力の拡大に利用することで、このバランスを崩そうとしている。
中国は昨年、ウズベキスタンの貿易相手国トップの座をロシアから奪った。ウズベキスタンは20年にわたる孤立主義を転換し、世界経済との融合を図っている。
ウズベキスタンに進出した新たな中国企業である電気自動車(EV)大手BYDは6月27日、ジザフ州の新工場で生産を開始し、年間5万台の生産を目指す。
バッテリーなどの主要部品は中国から輸送され、現地労働者が溶接・塗装から車の組み立てまで行う。
公式統計によると、ウズベキスタンが2023年に輸入した自動車7万3000台余りのうち、中国からの輸入は80%近くを占めた。ロシアからの輸入は需要が大幅に落ち込んだため、ロシア車は現在、「その他の国」に分類されている。
中国、キルギス、ウズベキスタンの首脳は6月上旬、1997年から協議されてきた、3カ国を結ぶ鉄道建設プロジェクトに関する重要な協定に署名した。ロシアを迂回(うかい)することで、東アジアから中東、南欧への距離を数百キロ短縮する狙いだ。
中国は、ロシアが伝統的に支配してきたエネルギー分野でも同国に挑んでいる。ウズベキスタンは、2023年にロシア産ガス購入契約を結んだが、今のところ契約期間は2年にとどめている。アナリストはこれについて、ロシアがガスを政治的に利用した場合の備えだと指摘。
一方、中国の再生可能エネルギー企業である隆基緑能科技(ロンジ・グリーンエナジー・テクノロジー)や金風科技(ゴールドウインド)の太陽電池モジュールや風力タービンを積んだトラックや列車がウズベキスタンを横断している。これは発電量に占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに40%以上に引き上げるという、ウズベキスタン政府の取り組みの一環だと、WSJのシャフア。
中国はロシアの役割を完全に奪うことはできない。中央アジアのエリート層のキャリアと人脈はロシアと深く結びついており、ロシア語は依然として共通語。
それでも、中央アジアの新世代エリート層に中国が浸透しつつある兆しが既に見られると、WSJのシャフア。
ウズベキスタンのエリート高校出身で、大学で経営学を専攻するノディルソン・マフムドフさん(19)は、クラスメート26人のうち中国に留学したのは3人で、ロシアはゼロだったと話す。以前ならロシアの大学を志望する人が多かっただろうという。
BYD車がすごく欲しいと語るマフムドフさんは仕事もしており、民間の語学家庭教師会社「香港アカデミー」でマーケティングマネジャーを務める。
キャリアアップを目指す政府関係者やビジネスマンも中国語の家庭教師を探しにやって来ると、マフムドフさん。
「彼らは皆、未来は中国にあると考えている」と。
# 冒頭の画像は、習近平と、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領
この花の名前は、エキナセア
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
月刊Hanada2024年2月号 - 花田紀凱, 月刊Hanada編集部 - Google ブックス