新たな販路は、巨大消費市場の中国や、日韓および東南アジア諸国になりますが、かねて価格で揉めていた対中輸出を、新規販路が欲しいロシアの価格譲歩により長期販売計画に漕ぎつけたのでした。
ところが、プーチン大統領が政治PRを兼ねた「パカズーハ(見せかけ)」で大々的に喧伝した中露のこのプロジェクトが、その後なにも進展していないのだそうです。
ことのほか「パカズーハ(見せかけ)」戦術に秀でている中露両国の関係。両国が「蜜月」関係に入ったなどと解釈するのは、厳に禁物と説くのは、木村北海道大学名誉教授。
ロシアと中国は、今や「蜜月」関係に入ったかのように見える。ロシアは昨年春のクリミア併合という暴挙によって「ロシア異質論」を復活させ、欧米諸国からほぼ完全に締め出されてしまった。
アジアへ軸足を動かそうにも、日本も先進7カ国(G7)の一員として対露制裁に加わり、プーチン大統領の訪日にゴーサインを出さないばかりか、安倍晋三首相はモスクワ主宰の対独戦勝記念式典への出席も注意深く検討している。国際的に孤立無援状態に陥ったロシアにとり、中国以外に頼るすべはない。このようにしてロシアは、中国主導下の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)への参加表明も行った。
≪警戒すべき「パカズーハ」≫
だが、改めて警戒せねばならぬことがある。それは、ロシア、中国がことのほか「パカズーハ(見せかけ)」戦術に秀でていることである。ロシア語の「パカズーハ」とは、実態とは異なったふうに見せかける擬態を指す。
<中略>
もっとも政治の世界で「パカズーハ」戦術は当然といえないこともない。なぜなら政治とは結局、己にとり好都合なイメージを相手に形成させようとして争うゲームに他ならないからである。
そのような「見せかけ」合戦は、例えば日露間でも盛んにおこなわれている。安倍首相は、プーチン大統領との間でさも個人的な信頼関係が構築されている「かのように」振る舞う。大統領も負けずに日露関係が総合的に進展すれば、日本側が希望する領土問題解決への環境が整備される「かのように」示唆する。両首脳は、中露首脳同様、狐(きつね)と狸(たぬき)の化かし合いを実践中と評してよい。
≪喧伝されたプロジェクト≫
モスクワと北京が最近行った「パカズーハ」の典型例として、中露間のエネルギー協力について触れる必要があろう。
ロシアと中国は、2014年に天然ガスをめぐる超大型プロジェクトを2件も締結した。一つは「シベリアの力」、もしくは簡単に「東ルート」と呼ばれるもの。東シベリアから中国向けパイプラインを建設し、年間380億立方メートルのガスを30年間にわたって中国へ供給する。もう一つは「アルタイ」もしくは「西ルート」と呼ばれるパイプラインの敷設。西シベリア産のガスを年間300億立方メートル、30年間中国に提供する。
中露は、「東ルート」プロジェクトについての合意文書を14年5月に上海で、「西ルート」にかんするそれを11月に北京で、それぞれ調印した。両調印式に出席したプーチン大統領はこれらの合意を中露関係史における「画期的で」「最大の契約」であると絶賛した。ところが大統領の言葉は、中露間の結束を対外的に誇示せんがために意図的になされた過大表現に他ならなかった。
というのも、鳴り物入りで喧伝(けんでん)されたこれらのプロジェクトは、その後、一向に実践へ向けて動き出していないからである。それどころか、今年3月になると、ロシア側からは次のような情報すら漏れ聞こえてくるようになった。すなわち、「東ルート」も「西ルート」も共にパイプラインの建設が見送られている。仮に将来敷設されるにしても、規模の小さい「西ルート」からであろう、と。
≪協定の建前と実態の乖離≫
中露間で「世紀の大プロジェクト」と喧伝された天然ガス合意がその後中ぶらりんとなった理由の一つとして、原油安を指摘することは、おそらく間違っていないだろう。というのも、天然ガスの値段は、石油のそれと密接に連動しているからだ。14年に中露両国が合意したガス価格は公表されていないものの、どうやら千立方メートル当たり350ドルと推測される。
もしそうだとすると、原油価格が14年後半以降約2分の1にまで急落している今日、中国側がガス価格の再交渉を要求しておかしくない理屈になろう。だが、ガス価格の変動だけが、その後両プロジェクトの実施を阻んでいる理由なのではない。成約の見せかけにもかかわらず、実は次の点に関してももめているのだ。例えばパイプラインの建設、パイプラインが通過する地域のインフラ整備の費用を、一体どのような割合で中露それぞれが分担するのか。
中露間の協定に見られる建前と実態の乖離(かいり)がわれわれに改めて与える教訓はシンプルなものである。ロシアや中国が発表する声明は政治的PR目的のために粉飾されがちなので、過大評価する間違いを犯してはならぬこと。この一言に尽きる。中露関係が「蜜月」関係に入ったなどと解釈するのは、厳に禁物といえよう。(きむら ひろし)
一方、中露と日本の三国の関係の歴史は、中露が対立と接近を繰り返しているのが実態であることは、諸兄がご承知の通りです。
中共はもともとソ連による共産主義国家増殖政策の下の支援により、日中戦争終了後に国共内戦で国民党政権を台湾に追い出すことで誕生した、ソ連によって誕生させてらった国家です。
長い国境線を接する両国の間では、やがて国境線の領土争いが生じ、まだ国力の弱かった中共は日本に接近してソ連を牽制しました。しかし、国力が逆転した今日では、ロシアは中国をけん制するには、日本と接近することが必要となっているのですね。
他方、世界の覇権を争う局面では、米国と対峙することとなり、日米同盟に対し、中露が結託する構図となってきます。
実態とは異なったふうに見せかける擬態を指すロシア語に「パカズーハ」と言う言葉があり、ことのほか「パカズーハ(見せかけ)」戦術に秀でているのが、中露の両国なのだそうです。変幻自在な両国の外交姿勢を観れば、言い得て妙と納得です。
ウクライナで力による現状変更を進め、G8から締め出され孤立化しているロシア。G7の制裁で苦しい国内経済を支えるには中国に接近するしか術がない現状で、そこを見透かされ、つけいられるのをじっと我慢して、中露の蜜月を演出して、制裁なにするものぞと去勢をはっているのですね。
中共にすれば、ロシアを抑える絶好機到来で、日米同盟への対抗を強めています。
ただ、こうした中露の接近は、「パカズーハ(見せかけ)」戦術にすぎず、中露関係が「蜜月」関係に入ったなどと解釈するのは、厳に禁物ということなのですね。
国際外交戦術では、「パカズーハ」は必要とのことで、安倍内閣では、対中牽制力として、ロシア接近も行ってきました。G7との連携重視と、「力による現状変更」への制裁として距離をおく現状ですが、南シナ海、東シナ海で、「力による現状変更」を進行させている中国への抑止力には、ロシアの「パカズーハ」の逆利用は有効な手段であり、その活用の日が来る時への備えも重要です。
外交音痴の評判が定着してきたオバマ大統領。その隙をついてやりたい放題の中露。低迷する経済からの回復に窮する欧州各国の、中露への突込みの弱さ。
自称イスラム国がはびこるのも、こうした先進国間の混乱が、世界の経済や政治を不安定化させているからですね。
現在の世界を見渡して、比較的経済が安定しているのは日米。政権が安定しているのは日本(小泉内閣の後の自民党から民主党政権時代に比べると夢の様)。
中(東シナ海EEZと尖閣の領海領空領土)露(北方四島)両国の不法侵略に遭っているのも日本。
日米ガイドライン見直しが佳境に入っています。中露の「パカズーハ」に惑わされることなく、「パカズーハ」の盲点をついて分断させる戦術を考案するくらいの外交(安倍地球儀外交 or 防共回廊21世紀版)を、安倍内閣に期待します。
中国の海洋覇権拡大の抑止大戦略が必要 - 遊爺雑記帳
# 冒頭の画像は、統一地方選に向け結束を固めた自民党大会
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