クリントン候補は国務長官として「ピボット政策」を米誌に発表した提唱者であり、TPPの推進者であったのではないか。トランプ候補に真っ向から反対するステーツウーマンではなくて、同候補と大衆迎合を競っているポリティシャンになってしまったのだろうか。大統領選挙の過熱は米国内に異常な雰囲気を醸し出している。共和、民主党を問わず、政治家は正論を述べにくくなっているのだろうか。
ロバート・B・ゼーリック元通商代表部代表は、「米国がTPPを進めるかどうか、いずれにしても米世界戦略の分岐点になった、と後世の史家は論じるだろう」と懸念を示したのだそうですが、その懸念を共有すると言うのは、田久保杏林大学名誉教授。
高まる中国や北朝鮮の暴挙もさることながら、我々日本国民がもっと神経質になっていいのは、来年1月からホワイトハウス入りする新指導者が何を考えているかだろうと指摘しておられます。
安倍晋三首相とヒラリー氏が会談 日米同盟の強化で一致 TPPでは意見分かれる - 産経ニュース
安倍晋三首相がTPP早期承認を米国に要請 ニューヨークで開催の対日投資セミナーであいさつ - 産経ニュース
オバマ大統領は、TPPの批准を、大統領選後に先送りし、大統領選への影響を回避しましたが、肝心のヒラリー候補は、選挙戦が進むにつれ、苦戦を挽回する為、大衆迎合に傾き、含みを持たせていたTPPへの見解を、大統領になっても反対すると言い切ったことは諸兄がご承知のことです。
田久保名誉教授が、「大統領選挙の過熱は米国内に異常な雰囲気を醸し出している」「共和、民主党を問わず、政治家は正論を述べにくくなっているのだろうか」と指摘されている通り、トランプ旋風は留まるところを知らず、一時劣勢だったクリントン候補との世論調査の支持率の差が、肉薄するに至っていますね。
それは、民主主義の民意なのですが、民意に迎合するポピュリズムを至上とする政治化が増え、民意をリードできる政治家がいなくなったということではないのかと考えさせられてしまいます。
議会制民主主義の英国では、国民投票が政争の具に利用され、EU離脱が決まり、決まったとたんに離脱派の政治家が逃げ出すといった現象が生じました。
かたや、一党独裁で社会主義の中国が急台頭し、国際法を無視した暴挙を強行していますが、米国でさえ止められない状況が生じています。
お金と、その資金力で急増大させる軍事力との力で国際法を無視し、勝手に創った自国のルールを世界に押し付けようとしている中国。それには、各国が連合して抑止力を働かせ、国際ルールの順守へ導かねばならないのです。
その有力な手段でもあるはずのTPP。世界のリーダーを自負した米国は、「ピボット政策」を打ち出し、アジアに回帰し、自国の輸出増加での国内経済発展も含め、TPPを推進してきたのです。
しかし、大統領の椅子に座りたいという個人の願望を、世界を俯瞰する政治理念より優先させる政治家が増えてしまい、自己優先、自国優先の大局観のないポピュリズムがはびこる世界が産まれようとしています。それが民主主義の民意だと済まされていいのでしょうか。
民主主義政治にも、議員内閣制と大統領と議会を並列させる直接民主主義とがあり、長い間広く世界へ浸透し続けてきました。しかし、一党独裁の中国が急台頭しているのは、なぜなのでしょう。
ここは立ち止まってよく考えてみる必要があります。民主主義が制度疲労を起こしているのか。ソ連の崩壊が共産主義の崩壊を産み、そこで新たなかたちに変遷した、中国流社会主義が台頭するのは、新たな時代では、新たな中国流の制度が優れているからなのか。
遊爺は、決して中国流社会主義の国に住みたいとはおもいませんが。。
米国が内へ籠るのなら、米国抜きで、アジア・太平洋の雄国として一翼を担う日本が主導して、新TPPを編成し、その市場の発展をリードすればよいでしょう。
「一帯一路」を掲げ、海外市場に活路を求める中国。少子高齢化で人口が減り国内市場が縮小する日本も、広く海外の市場と繋がることで経済の活性化が必要で、中国との競争に勝たねばなりません。それは、TPP参加諸国も同じ想いで、だからこそ交渉をまとめたのでしたね。
# 冒頭の画像は、19日、ニューヨークで会談した安倍首相とヒラリー・クリントン氏
この花は、ダイリントキワソウ
↓よろしかったら、お願いします。
ロバート・B・ゼーリック元通商代表部代表は、「米国がTPPを進めるかどうか、いずれにしても米世界戦略の分岐点になった、と後世の史家は論じるだろう」と懸念を示したのだそうですが、その懸念を共有すると言うのは、田久保杏林大学名誉教授。
高まる中国や北朝鮮の暴挙もさることながら、我々日本国民がもっと神経質になっていいのは、来年1月からホワイトハウス入りする新指導者が何を考えているかだろうと指摘しておられます。
TPPの戦略的意味を忘れたか 杏林大学名誉教授・田久保忠衛 (9/20 産経 【正論】)
戦後のパシフィズム(反戦主義)にどっぷり漬かってきた日本人でも、危機が迫れば正面を見据える。中国の東シナ海や南シナ海における傍若無人の行動と、北朝鮮の国際社会に対する傲岸不遜な挑戦だ。が、同時にわれわれがもっと神経質になっていいのは、最大の同盟国である米国がどのようにアジア・太平洋地域とかかわってきたか、来年1月からホワイトハウス入りする新指導者が何を考えているかだろう。
≪アジア・太平洋政策の大構想≫
具体的には、日本を含む12カ国で合意済みの環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が大統領選挙後の短期間に批准されるかどうかだ。仮に批准されたとしても、共和党のトランプ候補は最初から反対を唱え、一方、いまのような形では賛成できないと含みを残した発言をしてきた民主党のクリントン候補が最近、決定的と考えられる反対論に転じてしまった。
米大陸、アジア、オセアニアの広域にわたり世界経済の40%を占める国々が、約1万8000品目の関税撤廃ないし削減をはかろうとするこの構想は、とかく経済面だけに限定した議論が盛んだが、中国をにらんだ戦略的意味はますます強まっている。
オバマ政権のアジア政策は2011年11月にハワイで開かれたTPP9カ国首脳会議から出発したと思う。TPPの主導権を握ったオバマ大統領はホノルルからキャンベラに飛び、豪州議会で中東に置いていた軸足(ピボット)をアジアに移行するとの「ピボット政策」を初めて明らかにした。
米海軍力の60%をアジア地域に展開することを前提に、ローテーションによる米海兵隊基地を豪州に配備し、フィリピンとの軍事関係を強め、南シナ海での「航行の自由作戦」に着手した。在韓米軍への高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備も決めた。
ピボット政策を中、長期的に支えるTPPは米国のアジア・太平洋政策を対象とした大構想と称していいと思うのだが、大統領選挙の過熱は米国内に異常な雰囲気を醸し出している。TPPはあたかも雇用不安を招く悪の根源であるかのようなプロパガンダが横行し、保護貿易主義と結びつく。共和、民主党を問わず、政治家は正論を述べにくくなっているのだろうか、TPPの批准はきわめて難しくなっているようだ。
≪衝撃受けたクリントン氏の発言≫
思い余ったのだろう。トランプ批判の共同声明を発表した共和党の元高官に名を連ねているロバート・B・ゼーリック元通商代表部代表はウォールストリート・ジャーナル紙に5月17日、8月7日の2回にわたって文章を書き、2人の大統領候補、とりわけトランプ候補に痛烈な批判を加えた。「この不安定な世界にあって今後の米安全保障は軍事能力の強化と経済の機会拡大ができるかどうかにかかっている。TPPはこの2つの戦略をすり合わせたものだ」-から始まる文章は冷静なもので、米国が自由貿易でいかなる恩恵を受けてきたか、今日的意義はどこにあるか、平和的な参加を望むのであれば中国も歓迎する、との論理には間然するところがない。
私が衝撃を受けたのは、2度目の一文が載った4日後の8月11日にクリントン候補がミシガン州ウォーレンでの演説で「私はTPPに反対する。大統領選挙後も大統領としても反対する」とダメ押し的な発言をしたときだ。ゼーリック氏は両候補をたたいてはいたが、「いまのままの協定では反対だ」とするクリントン候補の含みを持たせる言い方に一種の期待を抱いていただろうと推測する。が、クリントン発言はそれを打ち砕いてしまったようだ。
≪米国の選択に懸念を抱く≫
綸言(りんげん)汗の如(ごと)しなどと大げさな表現は使いたくないが、政治家とりわけ指導的立場にある人物の発言は軽くない。冷戦に勝ち、湾岸戦争に勝利を収めて得意の絶頂にあったジョージ・H・W・ブッシュ大統領が1992年の大統領選挙で敗れた理由の一つは「私には二言はない。増税はしない」の約束を破ったからだった。クリントン候補は国務長官として「ピボット政策」を米誌に発表した提唱者であり、TPPの推進者であったのではないか。トランプ候補に真っ向から反対するステーツウーマンではなくて、同候補と大衆迎合を競っているポリティシャンになってしまったのだろうか。
TPPがギリギリの段階で批准されるのかどうか。成立した場合でも新指導者はこれをどう扱うのか。アジアでは経済を中国に依存し、同時に安全保障は専ら米国を当てにする複雑な事情がからみ、情勢の分析が困難になっている。
最近、中国・杭州で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議やラオス・ビエンチャンで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の関係会合に漂う空気は中国への政治的配慮だ。
米国がTPPを進めるかどうか、いずれにしても米世界戦略の分岐点になった、と後世の史家は論じるだろうとのゼーリック氏の懸念を私は共有している。(たくぼ ただえ)
戦後のパシフィズム(反戦主義)にどっぷり漬かってきた日本人でも、危機が迫れば正面を見据える。中国の東シナ海や南シナ海における傍若無人の行動と、北朝鮮の国際社会に対する傲岸不遜な挑戦だ。が、同時にわれわれがもっと神経質になっていいのは、最大の同盟国である米国がどのようにアジア・太平洋地域とかかわってきたか、来年1月からホワイトハウス入りする新指導者が何を考えているかだろう。
≪アジア・太平洋政策の大構想≫
具体的には、日本を含む12カ国で合意済みの環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が大統領選挙後の短期間に批准されるかどうかだ。仮に批准されたとしても、共和党のトランプ候補は最初から反対を唱え、一方、いまのような形では賛成できないと含みを残した発言をしてきた民主党のクリントン候補が最近、決定的と考えられる反対論に転じてしまった。
米大陸、アジア、オセアニアの広域にわたり世界経済の40%を占める国々が、約1万8000品目の関税撤廃ないし削減をはかろうとするこの構想は、とかく経済面だけに限定した議論が盛んだが、中国をにらんだ戦略的意味はますます強まっている。
オバマ政権のアジア政策は2011年11月にハワイで開かれたTPP9カ国首脳会議から出発したと思う。TPPの主導権を握ったオバマ大統領はホノルルからキャンベラに飛び、豪州議会で中東に置いていた軸足(ピボット)をアジアに移行するとの「ピボット政策」を初めて明らかにした。
米海軍力の60%をアジア地域に展開することを前提に、ローテーションによる米海兵隊基地を豪州に配備し、フィリピンとの軍事関係を強め、南シナ海での「航行の自由作戦」に着手した。在韓米軍への高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備も決めた。
ピボット政策を中、長期的に支えるTPPは米国のアジア・太平洋政策を対象とした大構想と称していいと思うのだが、大統領選挙の過熱は米国内に異常な雰囲気を醸し出している。TPPはあたかも雇用不安を招く悪の根源であるかのようなプロパガンダが横行し、保護貿易主義と結びつく。共和、民主党を問わず、政治家は正論を述べにくくなっているのだろうか、TPPの批准はきわめて難しくなっているようだ。
≪衝撃受けたクリントン氏の発言≫
思い余ったのだろう。トランプ批判の共同声明を発表した共和党の元高官に名を連ねているロバート・B・ゼーリック元通商代表部代表はウォールストリート・ジャーナル紙に5月17日、8月7日の2回にわたって文章を書き、2人の大統領候補、とりわけトランプ候補に痛烈な批判を加えた。「この不安定な世界にあって今後の米安全保障は軍事能力の強化と経済の機会拡大ができるかどうかにかかっている。TPPはこの2つの戦略をすり合わせたものだ」-から始まる文章は冷静なもので、米国が自由貿易でいかなる恩恵を受けてきたか、今日的意義はどこにあるか、平和的な参加を望むのであれば中国も歓迎する、との論理には間然するところがない。
私が衝撃を受けたのは、2度目の一文が載った4日後の8月11日にクリントン候補がミシガン州ウォーレンでの演説で「私はTPPに反対する。大統領選挙後も大統領としても反対する」とダメ押し的な発言をしたときだ。ゼーリック氏は両候補をたたいてはいたが、「いまのままの協定では反対だ」とするクリントン候補の含みを持たせる言い方に一種の期待を抱いていただろうと推測する。が、クリントン発言はそれを打ち砕いてしまったようだ。
≪米国の選択に懸念を抱く≫
綸言(りんげん)汗の如(ごと)しなどと大げさな表現は使いたくないが、政治家とりわけ指導的立場にある人物の発言は軽くない。冷戦に勝ち、湾岸戦争に勝利を収めて得意の絶頂にあったジョージ・H・W・ブッシュ大統領が1992年の大統領選挙で敗れた理由の一つは「私には二言はない。増税はしない」の約束を破ったからだった。クリントン候補は国務長官として「ピボット政策」を米誌に発表した提唱者であり、TPPの推進者であったのではないか。トランプ候補に真っ向から反対するステーツウーマンではなくて、同候補と大衆迎合を競っているポリティシャンになってしまったのだろうか。
TPPがギリギリの段階で批准されるのかどうか。成立した場合でも新指導者はこれをどう扱うのか。アジアでは経済を中国に依存し、同時に安全保障は専ら米国を当てにする複雑な事情がからみ、情勢の分析が困難になっている。
最近、中国・杭州で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議やラオス・ビエンチャンで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の関係会合に漂う空気は中国への政治的配慮だ。
米国がTPPを進めるかどうか、いずれにしても米世界戦略の分岐点になった、と後世の史家は論じるだろうとのゼーリック氏の懸念を私は共有している。(たくぼ ただえ)
安倍晋三首相とヒラリー氏が会談 日米同盟の強化で一致 TPPでは意見分かれる - 産経ニュース
安倍晋三首相がTPP早期承認を米国に要請 ニューヨークで開催の対日投資セミナーであいさつ - 産経ニュース
オバマ大統領は、TPPの批准を、大統領選後に先送りし、大統領選への影響を回避しましたが、肝心のヒラリー候補は、選挙戦が進むにつれ、苦戦を挽回する為、大衆迎合に傾き、含みを持たせていたTPPへの見解を、大統領になっても反対すると言い切ったことは諸兄がご承知のことです。
田久保名誉教授が、「大統領選挙の過熱は米国内に異常な雰囲気を醸し出している」「共和、民主党を問わず、政治家は正論を述べにくくなっているのだろうか」と指摘されている通り、トランプ旋風は留まるところを知らず、一時劣勢だったクリントン候補との世論調査の支持率の差が、肉薄するに至っていますね。
それは、民主主義の民意なのですが、民意に迎合するポピュリズムを至上とする政治化が増え、民意をリードできる政治家がいなくなったということではないのかと考えさせられてしまいます。
議会制民主主義の英国では、国民投票が政争の具に利用され、EU離脱が決まり、決まったとたんに離脱派の政治家が逃げ出すといった現象が生じました。
かたや、一党独裁で社会主義の中国が急台頭し、国際法を無視した暴挙を強行していますが、米国でさえ止められない状況が生じています。
お金と、その資金力で急増大させる軍事力との力で国際法を無視し、勝手に創った自国のルールを世界に押し付けようとしている中国。それには、各国が連合して抑止力を働かせ、国際ルールの順守へ導かねばならないのです。
その有力な手段でもあるはずのTPP。世界のリーダーを自負した米国は、「ピボット政策」を打ち出し、アジアに回帰し、自国の輸出増加での国内経済発展も含め、TPPを推進してきたのです。
しかし、大統領の椅子に座りたいという個人の願望を、世界を俯瞰する政治理念より優先させる政治家が増えてしまい、自己優先、自国優先の大局観のないポピュリズムがはびこる世界が産まれようとしています。それが民主主義の民意だと済まされていいのでしょうか。
民主主義政治にも、議員内閣制と大統領と議会を並列させる直接民主主義とがあり、長い間広く世界へ浸透し続けてきました。しかし、一党独裁の中国が急台頭しているのは、なぜなのでしょう。
ここは立ち止まってよく考えてみる必要があります。民主主義が制度疲労を起こしているのか。ソ連の崩壊が共産主義の崩壊を産み、そこで新たなかたちに変遷した、中国流社会主義が台頭するのは、新たな時代では、新たな中国流の制度が優れているからなのか。
遊爺は、決して中国流社会主義の国に住みたいとはおもいませんが。。
米国が内へ籠るのなら、米国抜きで、アジア・太平洋の雄国として一翼を担う日本が主導して、新TPPを編成し、その市場の発展をリードすればよいでしょう。
「一帯一路」を掲げ、海外市場に活路を求める中国。少子高齢化で人口が減り国内市場が縮小する日本も、広く海外の市場と繋がることで経済の活性化が必要で、中国との競争に勝たねばなりません。それは、TPP参加諸国も同じ想いで、だからこそ交渉をまとめたのでしたね。
# 冒頭の画像は、19日、ニューヨークで会談した安倍首相とヒラリー・クリントン氏
この花は、ダイリントキワソウ
↓よろしかったら、お願いします。