「ハンガー ・ ゲーム」 という映画を見ました。
公開時からなんとなく氣になっていた全4作のシリーズもので、GyaO!で一挙配信されていたのですが、これがいろいろと感じるものがありまして。
とても一記事には収まりそうにないので、しばらく折に触れて語ることになりそうです。
では、今回も 「ネタバレ注意」 ということで。 以下映画の結末まで書いております、ご注意下さい。
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首都キャピトルと隷属する12の地区で構成されるパネムという国は、過去の12地区の反乱を機に みせしめとして年に一度12~18歳の男女一名ずつを各地区から選出し 最後の一人になるまで殺し合わせる 「ハンガー ・ ゲーム」 を開催しています。
得意の弓矢の狩猟で母や幼い妹との暮らしを支える第12地区の少女カットニスは、出場者に選ばれてしまった妹の身代わりに第74回ハンガー ・ ゲームに志願し、男子出場者のピータと共に首都でのゲームに臨みます。
第1作は二人がゲームの勝者となるまでを、第2作は大会出場をきっかけに反乱の象徴とみなされるようになったカットニスが 脅威を覚えたパネム大統領スノーに75回記念大会に再び強制参加させられ やがて反乱軍に救出されるまでを、そして第3作 ・ 第4作は 反乱軍に加わったカットニスのその後を描いています。
「ハンガー ・ ゲーム」 は第1作公開当初から 邦画 「バトル ・ ロワイアル」 とさかんに比較されていましたが、貴秋が連想したのは アーノルド ・ シュワルツェネッガー主演の 「バトルランナー」 。
死のバトルゲーム、人氣司会者によるテレビ中継と熱狂する観衆、抵抗勢力との合流など ダブるシーンが多かったからですが、決定的に違っていたのは結末。
「バトルランナー」 は主人公とレジスタンスたちがゲームの裏に潜む真相を暴露し、プロデューサー兼司会者のキリアンが制裁を受けてめでたしめでたしでおしまいですが、「ハンガー ・ ゲーム」 では反乱軍は勝利するものの そこでは終りません。
過去に政府の攻撃で滅びたはずの第13地区は実は地下で生き残っており、ここをを拠点とする反乱軍が第3作から登場しますが、地下でひそかに力を蓄えていた反乱軍の女性リーダー ・ コイン首相は 最終的に新政府のトップの座を狙っており、地位を脅かす者を警戒し 場合によっては非情な手段で葬ろうとする点は、敵方のスノーと変わりません。
革命を成し遂げると、暫定大統領に就任したコイン首相は あろうことか陥落した首都キャピトルの子どもたちによるハンガー ・ ゲームの開催を提案します。
反乱の最終局面 政府軍とみせかけた反乱軍の非道な攻撃により けんめいに守ってきたはずの妹を失ったカットニスは、スノーの処刑執行人をかってでて いざという瞬間標的を変え コインの胸を矢で射抜き、スノーは群衆の手にかかり最期を遂げます。
妹の死による精神錯乱とみなされたのか それまでの功績を考慮されてか カットニスは罪を免れて故郷に帰り、同じく戻ってきたピータと結ばれます。
この結末に思わず 「ミイラ取りがミイラになる」 ということわざが浮かんだのですが、そもそもミイラ取りというのは ミイラに関心が向く時点ですでにミイラに同調する下地があるのですね。
コインは自身も家族を亡くすなどいろいろあったようですが、大統領の地位への執着ぶりや 目的のためには手段を選ばないところなど、もとからスノーと同類であったように思えます。
革命戦はこの波長を同じくする二人の共同創造とも見え、そのままいけば 首相の顔ぶれ以外なにも変わらない恐怖政治のままだったろうと容易に想像できます。
そんな流れを断ち切ったカットニスが そのまま祀り上げられることなく故郷に戻って穏やかに暮らしたというのは、なんとなくほっとさせられます。
4作に渡った物語は 二児に恵まれたカットニスとピータが 草地で家族そろって憩いの時を過ごす場面で幕を下ろしますが、おしまいにカットニスが泣き声を上げた赤ちゃんをなだめていうセリフ。
“怖い夢のやり過ごし方はね、頭の中で挙げてくの、出会った人たちのやさしさを、1つ1つ思い出して ゲームみたいに何度も繰り返すの”
新政府のその後はわかりませんが、カットニスは 戦いでなく愛にフォーカスすることで、今度こそほんとうに 望まぬまま駆り立てられたハンガー ・ ゲームから下りたように見えます。
背景の美しさと相まって、じんわり心に残るシーンです。