Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

幸せのレシピ

2009-12-03 | 外国映画(さ行)
★★★☆ 2007年/アメリカ 監督/スコット・ヒックス
アメリカ人は猫も杓子も家族愛

ドイツ版オリジナル「マーサの幸せレシピ」が面白かったので観賞。

ハリウッド版リメイクというのは、良くも悪くもアメリカ人向けに改変します。その変わりっぷりをへーとかなるほどーとか、つぶやきながら見るのが結構楽しい。

まず、主演のキャサリン・ゼタ・ジョーンズがとてもいい。日常生活では、ストレートな髪をひとつに結わえて、黒のパンタロン姿。その後ろ姿が凛々しくて、美しい。脚も長いし。シェフらしい清潔感も漂っています。でも、勝ち気でこだわりのある女シェフという刺々しさはオリジナルよりは半減しています。かたくなな心が氷解するというプロセスを描くのであれば、彼女のその刺々しさは必要なはずなんですが、実はそのプロセスは別のモノに取って変わられている。この点については、私はとてもガッカリでした。

オリジナルでは女性シェフと姪の少女は、互いにすれ違い、ぶつかり合い、決定的な溝が生まれ、そこを「ふたりで」乗り越えます。しかし、このハリウッド版は違う。「仕事持ちのオンナ+母を失った寂しい少女」の組み合わせはアンバランスであり、そこに父親代わりの男性を加えることで「疑似家族としての心地よさ」が少女の心を開くのだと見せています。オリジナルでもイタリア人男性シェフの陽気さが少女の心の扉を開ける展開にはなっています。なってはいますけども、少女が女性シェフと一緒にいたい、と言う結論に至るのは、あくまでも2人で喧嘩してぶつかり合った日々を思い返してのこと。

オリジナルでは少女は「本当の父親ではなく、わかり合える叔母」を選ぶ。
リメイク版は「女2人の不安定な関係よりも、家族的安定さを」を選ぶ。
この違いはあまりにも大きい。(父を捜すというくだりもバッサリ抜き取られていますしね)

この改変を見ればあのエンディングも自然なことでしょう。実は観賞前にハリウッド版ならこうするんではないかとエンデイングを想像していたのですが、あまりにも思った通りで驚いてしましました。女性シェフの仕事に対するプライドはどこに行ったのだろうか。一流ホテルにも引き抜きを受けようという腕前のシェフが「家族3人のレストランを開けたから私は幸せだわ」なんて、声が聞こえてきそうなエンディング。私は断然納得しがたいのでした。そうそう、オーナーを演じていたパトリシア・クラークソン。彼女の存在は光っていましたねえ。これだけリメイクに軍配。