Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

美しき結婚

2008-11-09 | 外国映画(あ行)
★★★★ 1981年/フランス 監督/エリック・ロメール
<2つめの格言:どんな心も、野で獲物を追い、空中に楼閣を建てる>

「妄想オンナの微笑ましい暴走」


美術学校に通うサビーヌは、不倫という恋愛関係に終止符を打ち、突然結婚願望に目覚める。親友のクラリスに弁護士エドモンドを紹介してもらうも、「私はこの人と結婚する」と猪突猛進。ひとり結婚への妄想が転げ落ちる雪玉のように膨れあがり、彼女の行動はどんどんエスカレートしてゆく…。

「飛行士の妻」の思い込み男フランソワが、今度は女性になった感じでしょうか。端から見ていると「なんで、そうなるの!?」というサビーヌの的外れな行動ぶりに開いた口がふさがりません。さて、この勘違いオンナ、サビーヌを微笑ましく見られるか、それとも冷ややかに見てしまうか、これまた観客の印象は分かれてしまうところ。正直同性としては、鼻持ちならんオンナだなあってもありますが、主演のベアトリス・ロマンがとてもキュートで、他人事として見る分には、なんだか微笑ましい部分もいっぱい。

この作品の面白さは、一目惚れした弁護士エドモンドとの結婚妄想に走るサビーヌを誰もいさめないということなんですね。これがフランスの個人主義ってもんなんでしょうか。中でも一番の驚きは、母親の反応。なんだかんだ言って、最終的にはアンタの好きなようにやりなさいって、ところに落ち着く。こんなの日本じゃ考えられません。

それでも、お騒がせ少女の周りにいる人たちは、彼女に同調したり、慰めたり、本当に大変。サビーヌがひとりで空回りしているから、周りの人たちとの会話も全然噛み合ってない。このズレを楽しめるのは、観客がいちばん客観的な立場にいるからこそ。ちょっと「アメリ」なんかも、感じが似ていますね。適当にあしらっていたエドモンドがサビーヌに押しかけられて、ようやく「キミとは付き合えない」と宣告する。男たちよ、態度をはっきりさせないと、オンナって生き物は妄想で突っ走るから気をつけたまえ、という皮肉でいっぱいの作品かも知れません。

しかも、最終的には結婚するわけでもなく、むしろサビーヌの結婚願望は打ち砕かれてしまう。それで、「美しき結婚」というタイトルなんですから、その意地悪ぶりに笑ってしまいます。

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