落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

『藍宇(ランユー)』北京同志著

2004年05月02日 | book
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北京のビジネスマン・捍東は友人の紹介で北京の大学に入学したばかりの16歳の少年・藍宇を買った。初めは遊びで快楽を買ったつもりだった捍東だが、やがて藍宇の頑なほど一途な純粋さに心奪われていく。インターネットの小説サイトで話題を呼び、スタンリー・クワン監督の映画化で国際的な注目を集めた小説。

えー、メロドラマでんな。ボーイズラブです。やおいです。以上。
ぐりはこの映画化を手がけたスタンリー・クワン監督のファンなんですが、この映画は未見です。なぜなら日本で公開されてないから。いくつかの映画祭では上映されたのですがたまたま観れなかった。DVDもビデオも出てません。観たいよう。でも今さら英語字幕解読しながら現地版を観る根性は既にナイ。ダメ人間だから。

著者の北京同志と云う人はインターネットのゲイ小説サイトを読んでまわってあまりにつまらないので「よし自分で書いちゃろう」と決心して本作を書いたそうですが、よもやそれが大きな話題を呼び壮絶なバッシングを浴び、果ては映画化されてカンヌに出品されるなどと云うボロい展開は想像もしなかったでしょうね。ハッキリ云って小説そのものはそんなレベルのしろものでは全くない。ごくごく一般的なアマチュア小説家による、ごくごく平凡なメロドラマです。ストーリーだって凡庸なら文体だって全然センスないです。
以前ぐりはかの『さらば、わが愛』の原作本も読みましたがコレもえらくラフな文体でした。中国の現代小説ってこんなんかい・・・と思っちゃいかんのでしょーが。

だからと云ってこの小説に読むべきところが一切無いかと云うとそんなこともない。気楽に奔放な人生を謳歌していた主人公・捍東が藍宇との恋愛によって人間的に成熟していく内面のドラマは、彼の「現代中国の支配階級に生まれた若い男性」と云う設定に伴ってそれなりに興味深く読むことが出来るし、都会のリッチな中国人の生活感覚が生き生きと描かれる世界観はやはり目新しく感じられる。
ただそれ以外に語るべき魅力のある小説とはとても云い難い。気取ったところもややこしいところも全然ない、大味なメロドラマ。罪のないエンターテインメント小説。それ以上も以下もナシ。
だって藍宇のキャラクター描写なんか単純過ぎますて。若くて綺麗で理知的で善良で愛情溢れる高潔な恋人って、そんなんほとんど“観音様”やんけ。

ぐりは正直この小説あんまり好きにはなれませんね。どこがそんなにええんやろ?ってカンジ。
ただこれを映画化したスタンリー・クワンは賢いなと思ったです。ますます観たくなったよう。やっぱ現地版買おうかい。どうしよー。

映画版レビュー:『藍宇 情熱の嵐』