落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

被災地で写真を撮ること

2011年09月12日 | 復興支援レポート
8月26日(金)~9月4日(日)震災ボランティアレポートIndex

学生時代から写真が好きで、過去には自分で撮った写真を使った作品で展覧会まで何度も開いたぐりですが。
もちろんカメラは複数台持ってるし、一時は自宅に暗室までつくって現像もしてました。
今でも写真を撮ることは好きだし、見るのも好きな方です。

でも、これまで被災地にカメラを持っていったことは一度もない。
だから、被災地で撮った写真はこのブログに載っけてるケータイ画像が全部です。
理由は単純。ぐりが被災地に行く目的が写真撮影じゃないから。あくまでもボランティア活動のため、どんなにみんなが被災地の復興を願っているか、その気持ちを少しでも皆さんにわかってほしい。なんにもできなくたっていい、せめて皆さんに少しでも勇気をもってほしい。
その活動に、カメラは必要ないと思ったから。
だいたいぐりは同時にいくつものことができるほど器用な人じゃない。ボランティアったらボランティアしかできない。写真を撮るったら撮るしかできない。
じゃあ今は必要ないじゃんかと。他のみんなが持ってるし、写真を撮るために来てるジャーナリストだっているんだし。

だから、ボランティアがなんで写真を撮らにゃいかんのかという感覚が、そもそもぐりはよくわからない。
GW前のボランティア説明会でも、ボランティアが写真を撮ることに対する注意があったことはなんとなく記憶にあるが、自分で撮ろうと思いもしないから詳しくは覚えていなかった。
たぶん、どこのボランティア団体でもちょっとした注意はあるんだろうと思う。
けどそんなの常識だと思う。何も被災地じゃなくても、たとえば旅行に行って写真を撮るときだって、そこに知らない人がいたら「撮っていいですか」とひとこと訊くのが礼儀だし、訊くべきでないシチュエーションだっていつでも起こり得る。
被災地ではたくさんの方が亡くなっている。大袈裟でなく、見渡す限り視界に入っているすべての人が、身近などなたかを失っている。みんなが悲しい思いをしたその場所でおもしろ半分にカメラを取り出す無神経さくらい、誰だって容易に想像がついたっていい。
ごくごく当り前の想像力を働かせればわかるはずの話だ。誰かに注意されるまでもない。
それでもどうしても写真が撮りたければ、わざわざボランティア活動なんかする必要はない。被災地見物の観光客としてくればいいだけの話だ。実際そういう人もいっぱいいる。公共交通機関も復旧しているし、誰だって来ようと思えば来れる。

ぐりが勝手にそう思っていても、活動中に手を止めて写真を撮るボランティアが後を絶たなかった。
現地の方にひとことの了解も得ず、悲惨な風景や猫の手も借りたいほど忙しい活動風景を勝手に写真に撮ろうとするボランティアの姿が、ほんとうに悲しかった。
エラそうに注意できるような立場じゃなかったけど、何度かはっきりと止めたこともある。止めてもわかってくれない人が多かった。現地の方の顔を見たらなんとなく不快な顔はしていたけど、その感情を自ら言葉にされる方はいない。みなさんシャイで控えめで我慢強い方たちだから、撮りたい人を自分でとめることはしない。
だからある朝、作業前にこういったこともある。今日カメラを持って来た人は、移動車の中に置いていって下さい。ブログ用の撮影をするときはそういうので、それ以外では写真は撮らないで下さい。そんなことはいいたくなかったけど、どうしてもいわないわけにはいかなかった。ボランティアのせいで、これ以上現地の方に無駄な我慢をさせたくなかった。

被災地を後にする前の夜、ミーティングで100人を超えるボランティアの前で、その話をした。
もう二度と会わないから、恥ずかしくたっていい、反感を持たれてもいい、いえることはいっちゃおうと思って話した。
ここにいるボランティアは写真を撮るために来たわけじゃないはず。被災地の復興のために来ているはず。観光旅行や体験学習が目的ではないはず。その気持ちを再確認してほしかった。
あとで反論してくる人もいたけど、大半の人は賛同してくれた。実際には不愉快に思った人もいっぱいいたと思う。べつにぜんぜん構わないけど。

翌日、東京に戻るバスに乗って出発を待っていたら、現地の方が乗り込んで来て「昨日、写真のことを発言してくれた人は誰か」と探しに来た。
「わたしです」と名乗り出ると、「みんな思ってたけど、いえなかった。いってくれてありがとう」と握手を求められた。
現地のみなさんは、遠くからボランティアにきてくれる人たちみんなに心から感謝している。勇気づけられている。だから、何か我慢ならないことがあったとしても、それを口に出して態度に出して伝えることはなかなかできない。ボランティアの力がなければ復興は不可能なことを知っているから、自分たちが目をつむれば済むことには極力つむろうと努力してくれている。
その気持ちをくんでくれてありがとう、と彼は伝えてくれた。
たったそれだけのことだけど、ゆきずりのボランティアの身でしかないけど、なにかわかりあえたような気がして、とてもとても嬉しかった。
それだけわかりあえたら、写真なんてつまらないものは何にもいらないと思う。
だってただの画だもん。
そんなのより、心の方が、気持ちの方が、ずっとずっと大事だと思う。ぐりはね。


船にとまるカモメ。
カモメにも縄張りがあり、それぞれ「オレの船」みたいに乗る船が決まっているらしい。
天候が悪くなると「カモメの陸上がり」といって、海上を舞うカモメの数が少なくなるという。

※誤解のないように付けたし。
ぐりは被災地で写真を撮ることそのものがNGだとは思わない。
最低限のマナー、モラルが必要だってことがいいたいだけです。当たり前のことだけど。
撮った写真がなんかの役にたつんなら、どしどし撮ればいい。
単にぐり個人が自分で撮ってなんかの役にたてようとはあんまり思わないだけの話です。

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