『ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜』
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ぐりは今ちょうど目の具合がよくなくて通院中だけど、もしこれが日本じゃなくてどこかもっと貧しい国で起きたことなら、とっくの昔に盲目になってたかもしれないと思う。
コンタクトレンズやメガネがなければ裸眼では外を歩けないくらい極端に視力が低いということもあるけど、なにより、日本に住んでいれば、何かあれば適切な治療を受けることができるし、目にいい食べ物もあるし、目をきれいにしておくことも簡単だからだ。
世界中のすべての盲人のうちの9割は途上国の貧しい地域に暮していて、その多くは教育も受けられず仕事もなく社会から孤立した生涯を送っているという。彼らが視力を失う原因は栄養不足や衛生状態の悪さ、医療設備の不足にある。同じ病気や怪我でも、豊かな国でなら失明しなくて済むのに、貧しい国の人たちはなすすべもなく暗闇に突き落とされてしまう。
なかでもこの映画の舞台チベットでは、盲人は前世に悪事をはたらいた罪人として忌み嫌われ、家族からさえも疎まれる。ある者は親の手で地下組織に売り飛ばされて物乞いになり、ある者は自室に監禁される。
作中なんども、彼らを指して「役立たず」という表現が出てくる。だが実際には、目の見えない彼らも、自ら家畜の世話をし農作業をし、台所仕事も当り前にできる。
ドイツ人活動家サブリエ・テンバーケンによって設立された盲人のための教育機関「国境なき点字」の生徒たちは北京語とチベット語と英語ができる。この辺境にあって立派なインテリである。卒業生の中には、起業して家族を養っている者や、海外留学して組織の運営に参加している若き活動家もいる。決して役立たずなんかではない。
そこは途上国だろうが先進国だろうがかわりない。身障者を役立たずなどと決めつけたり、一方的に同情したりするのはほんとうに情けないし悲しいし、まったく意味がないことだと思う。
彼らが受けている差別、チベット社会における盲人の置かれた環境の厳しさは、たえずヒマラヤ登頂に臨む一行を激しく責め苛む。
盲人として世界で初めてエベレスト登頂に成功したエリック・ヴァイエンマイヤーは、子どもたちとそのよろこびをわかちあいたくて旅を提案する。彼は盲人登山家としてはエキスパートだが、チベット社会で盲人が生きることの難しさについては何も知らない。
登山の楽しさは下界の現実世界から遠く離れて自由になることにもあるのだが、この一行は違う。登山が終わっても、子どもたちはチベットで生きていかなくてはならない。そのことが、エリック率いる欧米人登山家たちと、サブリエ率いる子どもたちとの意識の溝となり、道中はひっきりなしの議論の連続となる。
だから、この映画はスポーツドキュメンタリーでありながら、目が見えないとは一体どういうことなのか、山を登るとはどういうことなのかを、かなりグローバルかつミニマムな観点で同時に描いている。彼らのしていることは確かにのっぴきならないほどチャレンジングだが、そこには単なる挑戦以上の大きな意味がある。
序盤で女生徒たちが口ずさみ、クレジットでも「国境なき点字」の幼い生徒がアカペラで独唱するのはThe Turtlesの「Happy Together」。アジア映画ファンにとっては『ブエノスアイレス』のエンディングテーマ曲としても親しみのある曲だが、これをチベット族の小さな男の子が直立して熱唱するパフォーマンスは実に胸を打つ。
Imagine me and you, I do
I think about you day and night, it's only right
To think about the girl you love and hold her tight
So happy together
If I should call you up, invest a dime
And you say you belong to me and ease my mind
Imagine how the world could be, so very fine
So happy together
I can't see me lovin' nobody but you
For all my life
When you're with me, baby the skies'll be blue
For all my life
Me and you and you and me
No matter how they toss the dice, it has to be
The only one for me is you, and you for me
So happy together
I can't see me lovin' nobody but you
For all my life
When you're with me, baby the skies'll be blue
For all my life
Me and you and you and me
No matter how they toss the dice, it has to be
The only one for me is you, and you for me
So happy together
Me and you and you and me
No matter how they toss the dice, it has to be
The only one for me is you, and you for me
So happy together
So happy together
How is the weather
So happy together
We're happy together
So happy together
Happy together
So happy together
So happy together
(By Garry Bonner and Alan Gordon)
監督はアーミッシュの若者たちに密着したドキュメンタリー『Devil's Playground』を監督して世界中の絶賛を浴びたルーシー・ウォーカー。『Devil's〜』は日本未公開でぐりも未見なのだが、これを機会に観られるようになってほしいと思う。
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ぐりは今ちょうど目の具合がよくなくて通院中だけど、もしこれが日本じゃなくてどこかもっと貧しい国で起きたことなら、とっくの昔に盲目になってたかもしれないと思う。
コンタクトレンズやメガネがなければ裸眼では外を歩けないくらい極端に視力が低いということもあるけど、なにより、日本に住んでいれば、何かあれば適切な治療を受けることができるし、目にいい食べ物もあるし、目をきれいにしておくことも簡単だからだ。
世界中のすべての盲人のうちの9割は途上国の貧しい地域に暮していて、その多くは教育も受けられず仕事もなく社会から孤立した生涯を送っているという。彼らが視力を失う原因は栄養不足や衛生状態の悪さ、医療設備の不足にある。同じ病気や怪我でも、豊かな国でなら失明しなくて済むのに、貧しい国の人たちはなすすべもなく暗闇に突き落とされてしまう。
なかでもこの映画の舞台チベットでは、盲人は前世に悪事をはたらいた罪人として忌み嫌われ、家族からさえも疎まれる。ある者は親の手で地下組織に売り飛ばされて物乞いになり、ある者は自室に監禁される。
作中なんども、彼らを指して「役立たず」という表現が出てくる。だが実際には、目の見えない彼らも、自ら家畜の世話をし農作業をし、台所仕事も当り前にできる。
ドイツ人活動家サブリエ・テンバーケンによって設立された盲人のための教育機関「国境なき点字」の生徒たちは北京語とチベット語と英語ができる。この辺境にあって立派なインテリである。卒業生の中には、起業して家族を養っている者や、海外留学して組織の運営に参加している若き活動家もいる。決して役立たずなんかではない。
そこは途上国だろうが先進国だろうがかわりない。身障者を役立たずなどと決めつけたり、一方的に同情したりするのはほんとうに情けないし悲しいし、まったく意味がないことだと思う。
彼らが受けている差別、チベット社会における盲人の置かれた環境の厳しさは、たえずヒマラヤ登頂に臨む一行を激しく責め苛む。
盲人として世界で初めてエベレスト登頂に成功したエリック・ヴァイエンマイヤーは、子どもたちとそのよろこびをわかちあいたくて旅を提案する。彼は盲人登山家としてはエキスパートだが、チベット社会で盲人が生きることの難しさについては何も知らない。
登山の楽しさは下界の現実世界から遠く離れて自由になることにもあるのだが、この一行は違う。登山が終わっても、子どもたちはチベットで生きていかなくてはならない。そのことが、エリック率いる欧米人登山家たちと、サブリエ率いる子どもたちとの意識の溝となり、道中はひっきりなしの議論の連続となる。
だから、この映画はスポーツドキュメンタリーでありながら、目が見えないとは一体どういうことなのか、山を登るとはどういうことなのかを、かなりグローバルかつミニマムな観点で同時に描いている。彼らのしていることは確かにのっぴきならないほどチャレンジングだが、そこには単なる挑戦以上の大きな意味がある。
序盤で女生徒たちが口ずさみ、クレジットでも「国境なき点字」の幼い生徒がアカペラで独唱するのはThe Turtlesの「Happy Together」。アジア映画ファンにとっては『ブエノスアイレス』のエンディングテーマ曲としても親しみのある曲だが、これをチベット族の小さな男の子が直立して熱唱するパフォーマンスは実に胸を打つ。
Imagine me and you, I do
I think about you day and night, it's only right
To think about the girl you love and hold her tight
So happy together
If I should call you up, invest a dime
And you say you belong to me and ease my mind
Imagine how the world could be, so very fine
So happy together
I can't see me lovin' nobody but you
For all my life
When you're with me, baby the skies'll be blue
For all my life
Me and you and you and me
No matter how they toss the dice, it has to be
The only one for me is you, and you for me
So happy together
I can't see me lovin' nobody but you
For all my life
When you're with me, baby the skies'll be blue
For all my life
Me and you and you and me
No matter how they toss the dice, it has to be
The only one for me is you, and you for me
So happy together
Me and you and you and me
No matter how they toss the dice, it has to be
The only one for me is you, and you for me
So happy together
So happy together
How is the weather
So happy together
We're happy together
So happy together
Happy together
So happy together
So happy together
(By Garry Bonner and Alan Gordon)
監督はアーミッシュの若者たちに密着したドキュメンタリー『Devil's Playground』を監督して世界中の絶賛を浴びたルーシー・ウォーカー。『Devil's〜』は日本未公開でぐりも未見なのだが、これを機会に観られるようになってほしいと思う。