2021年5月30日、島根県大田市北の原で第71回全国植樹祭が開催された。この「植樹祭」は、憲法で定められた「天皇の国事行為」ではない。天皇の「国事行為」を拡大解釈して開始(1950年吉田茂政権)したもので、法的には「非合法」で今日まで開催を強行し続けてきたもので、天皇皇室自身も積極的にその存在をアピールする事を目的とした催しと位置づけ、「公的行為(象徴行為)」と呼んでいるものの一つとしているものである。
さて、今回の開催理由は「森林の循環利用」という事で、天皇は「人々が連携、協力する事により、植えて、育てて使い、また植えるといった『緑の循環』が広く実現する事を期待します」と述べたという。
ところで、この天皇の言葉は、日本の木材需給の現状を正しく理解したうえでのものであるとは到底いえない。
なぜなら、日本国は国土の3分の2が森林で、木材資源が豊富な世界有数の森林大国であるが、現実は世界有数の木材輸入国なのである。2018年時点で、日本国の木材需給状況は、国産材は32.4%で、他は米材16.3%、南洋(マレーシア、インドネシア)材7.4%、北洋(ロシア)材3.3%、欧州材8.0%、その他(ニュージーランド、チリ、オーストラリア、中国、ヴェトナム、その他)32.7%となっているのからである。
今日の日本国の森林の約4割は、敗戦後の1940年代半ばから植林され成長してきた人工林(育成林)であり、その多く(33億㎥)は利用可能になっている。
しかし、現実は世界有数の木材輸入国なのである。そこには様々な問題が存在するのである。それは、山村の過疎や高齢化の深刻な問題。そして、それにともなう林業離れによる林業衰退とそれを補う廉価な輸入木材に対する依存との悪循環である。
ちなみに、2009年12月には農林水産省が「森林・林業再生プラン」を策定し、10年後の木材自給率の目標を「50%以上」とし、2011年7月には「森林法」を一部改正し、「森林・林業再生プラン」を具体化したが、思い通りに進むかどうかの保証はないのである。
天皇の言葉は、このような日本国の木材需給の現状を理解したものとは到底思えない「型」にはまった「美辞麗句」であり、「植樹祭」がいかに林業問題の「深刻さ」を伝えず、儀式化・イベント化・皇室アピールの場化しているかを示していると考えるのであるがいかがなものでしょう。
(2021年5月31日投稿)