今年2018年は関東大震災から95年。大震災下で陸軍警察主導で虐殺された在日中国人の慰霊式(今回で6回目)が9月9日、「関東大震災中国人受難者を追悼する会」の主催で実施された。同会の共同代表は、田中宏・一橋大名誉教授、林伯耀・旅日華僑中日交流促進会。
関東大震災では、朝鮮人虐殺や日本の社会主義者・大杉栄夫妻らの虐殺(甘粕事件)や河合義虎、平沢平七ら10人の虐殺(第2次亀戸事件)はよく知られていると言って良いが、中国人の大量虐殺(大島町事件)と王希天虐殺事件は知られているとは言い難い。しかし、虐殺受難者名簿だけでも750名以上が記載されているのである。そして、今日においても日本政府(安倍自公政府)は陸軍警察による王希天を含む中国人虐殺を認めておらず、隠蔽し続けているのである。その事は歴史を改ざんしている事でもある。そして、もちろん賠償もなされていない。
慰霊式には王希天の遺族ら15名が出席した。挨拶した来賓は、服部良一社民党国際担当常任理事、中村まさ子江東区議会議員などであった。
なお、遺族は安倍自公政府(日本政府)に以下の事を要求している。
1、日本政府は必ず、国家としての責任を負い、この歴史的事実を認め、1923年関東大震災時に虐殺された旅日中国人労働者・行商人及び彼らの遺族に謝罪する事。
2、1924年に日本政府(清浦内閣)が決定した賠償方針(1人400円の慰藉金)に基づき、現行の国際慣例、物価水準に適合させ、受難者人数を修正(当時、死者不明あわせて約500人とした)のうえ賠償を実施する事。
3、歴史を以って鑑とし、後の世代にこの歴史事実を伝えるため、受難現地に、記念碑を建立し、並びに中国人と朝鮮人を含む虐殺歴史記念館を建設する事。
4、日本の歴史教科書に書き入れ、日本の若い世代にこの歴史を知らしめ、そこから教訓をくみ取らせる事。
などの4点である。
大日本帝国下の憲法においては、天皇が主権者であり、国民は主権者とされておらず、国民に知る権利を認めず、神聖天皇政府に都合の良いように改ざん、隠蔽、湮滅がまかり通っていたのである。そして、それを継承するのが安倍自公政権である。
ちなみに、王希天虐殺事件は、軍隊や警察によって社会主義者や労働運動活動家らが殺害された亀戸事件や、大杉事件と根は同じである。社会主義者をやっつける事は即出世につながると考えられていた時代であった。排日の巨頭、日本の社会主義者らとの交友、共済会での労働者の人権主張など、どれをとっても王希天は日本の官憲には目障りな存在だったのである。この官憲の行為に対してはそれを支持する国民の中国人朝鮮人など外国人に対するいじめと排除意識が育まれていた。この事件は労働行政に問題があり、中国人労働者政策に問題が存在したのであるが、日本の労働運動にも大きな衝撃を与え、この後、総同盟と評議会に分裂した。また、神聖天皇主権大日本帝国政府は、1925年には治安維持法を公布し、国民を戦争への道へ向かわせるのであった。
王希天と交友関係にあった学生たちは、後に中国共産党の主要メンバーとして、あるいは市民として中国解放に身を挺したが、この事件を隠蔽した神聖天皇主権大日本帝国帝国政府の首謀者たちは、軍国主義の主要メンバーとして侵略戦争を推進したのである。
外国人労働者問題はまさに現代の問題である。主権者国民は、安倍自公政権や東京都知事など為政者による過去の歴史の隠蔽行為を許さず、過去の真実から教訓を学びとり、自らを幸福へ導く生き方を大切にすべきである。
(2020年9月4日投稿)