■The Fillmore Concerts / The Allman Brothers Band (Polydor = CD)
CD時代になって往年の名盤が再発される時、ボーナストラックの有無が購買意欲にとっては相当な決断の材料となり、それの増長が昨今流行りの「デラックスエディション」なんていうブツでしょう。
しかし単に曲数が多いというだけでは、マニアになればなるほど満足しないのが世の常……。
そこでリミックスやエディット違いなんていう裏ワザも大いに使われる事態となって、最初に驚愕させられたのが本日ご紹介の2枚組CDでした。
内容は説明不要、オールマンズが1971年に演じた最強のライプ音源で、当時の発売形態はアナログの2枚組LP「アット・フィルモア・イースト」でしたが、そこに収録出来なかったアウトテイクも以降、様々な仕様で分散発表されてきたという、まさに20世紀ロック史を代表する名演集!
☆Disc One
01 Statesboro Blues (3月12日;2nd show / ◎)
02 Trouble No More (3月12日;2nd show / ★)
03 Don't Keep Me Wonderin' (3月13日;1st show / ▼)
04 In Memory Of Elizabeth Reed (3月13日;1st & 2nd show / ◎)
05 One Way Out (6月27日;final Fillmore Concert / ★)
06 Done Somebody Wrong (3月13日;2nd show / ◎)
07 Stormy Monday (3月13日;1st show / ※)
08 You Don't Love Me (3月12日;2nd show & 13日;1st show / ◎)
☆Disc Two
01 Hot 'Lanta (3月12日;2nd show / ※)
02 Whipping Post (3月13日;2nd show / ◎)
03 Mountain Jam (3月13日;2nd show / ★)
04 Drunken Hearted Boy (3月13日;2nd show / ▲)
◎アット・フィルモア・イースト (1971)
★イート・ア・ピーチ (1972)
▼デュアン・オールマン・アンソロジー (1972)
▲ドリームス (CD4枚組ボックスセット / 1989)
※未発表
上記の収録演目から一目瞭然、これはオリジナルの「アット・フィルモア・イースト」を基本に、その後に出た「イート・ア・ピーチ」に収められた関連アウトテイク音源、さらにはオールマンズのボックスセットやデュアン・オールマンの追悼アンソロジーに分散されていた奇蹟の名演を集大成!?
と単純に思っていたら、これが全くの嬉しい誤算♪♪~♪
実はこれが出た1992年当時、サイケおやじは海外での仕事が多く、当然ながら日頃の愛聴盤は実家に置いてありましたから、ど~しても聴きたい歌や演奏は現地でのCD調達が常でした。
そしてこれもまた、オールマンズの「あの、ライプ」が恋しくて、何気なくゲットしたものなんですが、収録演目を確認した時には一般的なCDにありがちなサービス盤だと思って、それこそ気楽に聴き始めたのです。しかし実際には腰を抜かすほど驚愕させられましたですねぇ~♪
まず音質のリマスターなんですが、もちろん最初に出たCDは聴いていないながらも、長年耳に馴染んでいたアナログ盤と自然に比較して、各楽器の定位がきっちりと固まっていました。つまりデュアン・オールマンが左、ディッキー・ベッツが中央と右の間という位置関係が、イマイチ曖昧だったアナログ盤に比べると、実に明快に決まっています。
またアナログ盤では1曲が終わる度に拍手がフェードアウトされ、。各トラックは孤立状態の編集が、ここでは上手く次の曲に繋げられ、ひとつのコンサートライプを楽しんでいるかのような流れに変えられたのも高得点♪♪~♪
さらに決定的に吃驚させられたのが、未発表&別ミックスの演奏でした。
そこで付属の解説書を確認し、録音年月日を記述したのが、上記演目の但し書きです。
まず、何んと言っても「Hot 'Lanta」が完全未発表の激演テイク!
しかも、この日だけ参加していたというランドルフ・カーターによるサックスがクッキリと聞こえますし、最初に出た「アット・フィルモア・イースト」のバージョンに較べると、全体の勢いが相当にラフで豪快! ちなみにサックスはリフの彩り的な役割だけなのが、賛否両論かもしれません。個人的には、ちょいと勿体無い感じがしますねぇ……。
次に「Stormy Monday」は基本的には「アット・フィルモア・イースト」のテイクと同じなんですが、こちらではカットされていた後半のハーモニカのアドリブパートが入ったロングバージョン! ちなみにそれは「Done Somebody Wrong」や「You Don't Love Me」でも名演を披露しているトム・デューセットというゲストプレイヤーが演じたもので、これがなかなか良い感じ♪♪~♪
また「In Memory Of Elizabeth Reed」と「You Don't Love Me」が、実はアナログ盤時代からふたつのテイクを編集したものだったという真相が、ここで初めて明かされたわけですが、どこにエディットのポイントがあるのか、素人の私には確認出来ないほど上手いです。
それと再びリマスターの話になりますが、アナログ盤の温もりよりは、やはりデジタル音質特有のギスギス感を逆手に活かした音質改善が、ここでは良い方向に作用し、デュアン・オールマンの個性のひとつでもある強いアタックのピッキングが実に明快に楽しめますよ♪♪~♪ 中でもリズムギターを弾くパートでのカッティングは素晴らしいですねぇ~♪ もちろん各楽器の鳴りの輪郭もクッキリですよ。
あと、気になるオムニバス盤からの収録では、グレッグ・オールマン作のオリジナル「Don't Keep Me Wonderin'」がアーシーで粘っこい演奏を象徴するリズム隊のウネリ、そしてデュアン・オールマンの強烈なスライドが文字通りのスカイドッグ♪♪~♪
さらにオーラスの「Drunken Hearted Boy」では、エルビン・ビショップ(vo,g)、スティーヴ・ミラー(p,per)、ボビー・コールドウェル(per) といったアメリカンロックの名物男達がゲスト参加! 思いっきりレイドバックした歌いっぷりでエルビン・ビショップが自作自演の強みを活かせば、デュアン・オールマンは、もうこれ以上無いというほど流麗苛烈なスライドを聞かせてくれますよ♪♪~♪
あぁ、まさに刹那の色気、うっとりと導かれる桃源郷♪♪~♪
ということで、基本形のアルバム「アット・フィルモア・イースト」は冒頭に述べた「デラックスエディション」も出回っていますが、CDで楽しもうとすれば、絶対にこっちをゲットして下さい!
単に曲数を増やしただけの「デラックス・エディション」に、何の意味があるのでせうか?
本日ご紹介の決定版があるのに、ねぇ……。
という、些か煮え切らない気分も、このCDを聴いていれば霧散すると思います。