OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

オールマンズのもうひとつのフィルモア

2010-06-14 17:00:10 | Allman Brothers Band

The Fillmore Concerts / The Allman Brothers Band (Polydor = CD)

CD時代になって往年の名盤が再発される時、ボーナストラックの有無が購買意欲にとっては相当な決断の材料となり、それの増長が昨今流行りの「デラックスエディション」なんていうブツでしょう。

しかし単に曲数が多いというだけでは、マニアになればなるほど満足しないのが世の常……。

そこでリミックスやエディット違いなんていう裏ワザも大いに使われる事態となって、最初に驚愕させられたのが本日ご紹介の2枚組CDでした。

内容は説明不要、オールマンズが1971年に演じた最強のライプ音源で、当時の発売形態はアナログの2枚組LP「アット・フィルモア・イースト」でしたが、そこに収録出来なかったアウトテイクも以降、様々な仕様で分散発表されてきたという、まさに20世紀ロック史を代表する名演集!

☆Disc One
 01 Statesboro Blues
(3月12日;2nd show / ◎)
 02 Trouble No More (3月12日;2nd show / ★)
 03 Don't Keep Me Wonderin' (3月13日;1st show / ▼)
 04 In Memory Of Elizabeth Reed (3月13日;1st & 2nd show / ◎)
 05 One Way Out (6月27日;final Fillmore Concert / ★)
 06 Done Somebody Wrong (3月13日;2nd show / ◎)
 07 Stormy Monday (3月13日;1st show / ※)
 08 You Don't Love Me (3月12日;2nd show & 13日;1st show / ◎)
☆Disc Two
 01 Hot 'Lanta
(3月12日;2nd show / ※)
 02 Whipping Post (3月13日;2nd show / ◎)
 03 Mountain Jam (3月13日;2nd show / ★)
 04 Drunken Hearted Boy (3月13日;2nd show / ▲)

   ◎アット・フィルモア・イースト (1971)
   ★イート・ア・ピーチ (1972)
   ▼デュアン・オールマン・アンソロジー (1972)
   ▲ドリームス (CD4枚組ボックスセット / 1989)
   ※未発表

上記の収録演目から一目瞭然、これはオリジナルの「アット・フィルモア・イースト」を基本に、その後に出た「イート・ア・ピーチ」に収められた関連アウトテイク音源、さらにはオールマンズのボックスセットやデュアン・オールマンの追悼アンソロジーに分散されていた奇蹟の名演を集大成!?

と単純に思っていたら、これが全くの嬉しい誤算♪♪~♪

実はこれが出た1992年当時、サイケおやじは海外での仕事が多く、当然ながら日頃の愛聴盤は実家に置いてありましたから、ど~しても聴きたい歌や演奏は現地でのCD調達が常でした。

そしてこれもまた、オールマンズの「あの、ライプ」が恋しくて、何気なくゲットしたものなんですが、収録演目を確認した時には一般的なCDにありがちなサービス盤だと思って、それこそ気楽に聴き始めたのです。しかし実際には腰を抜かすほど驚愕させられましたですねぇ~♪

まず音質のリマスターなんですが、もちろん最初に出たCDは聴いていないながらも、長年耳に馴染んでいたアナログ盤と自然に比較して、各楽器の定位がきっちりと固まっていました。つまりデュアン・オールマンが左、ディッキー・ベッツが中央と右の間という位置関係が、イマイチ曖昧だったアナログ盤に比べると、実に明快に決まっています。

またアナログ盤では1曲が終わる度に拍手がフェードアウトされ、。各トラックは孤立状態の編集が、ここでは上手く次の曲に繋げられ、ひとつのコンサートライプを楽しんでいるかのような流れに変えられたのも高得点♪♪~♪

さらに決定的に吃驚させられたのが、未発表&別ミックスの演奏でした。

そこで付属の解説書を確認し、録音年月日を記述したのが、上記演目の但し書きです。

まず、何んと言っても「Hot 'Lanta」が完全未発表の激演テイク!

しかも、この日だけ参加していたというランドルフ・カーターによるサックスがクッキリと聞こえますし、最初に出た「アット・フィルモア・イースト」のバージョンに較べると、全体の勢いが相当にラフで豪快! ちなみにサックスはリフの彩り的な役割だけなのが、賛否両論かもしれません。個人的には、ちょいと勿体無い感じがしますねぇ……。

次に「Stormy Monday」は基本的には「アット・フィルモア・イースト」のテイクと同じなんですが、こちらではカットされていた後半のハーモニカのアドリブパートが入ったロングバージョン! ちなみにそれは「Done Somebody Wrong」や「You Don't Love Me」でも名演を披露しているトム・デューセットというゲストプレイヤーが演じたもので、これがなかなか良い感じ♪♪~♪

また「In Memory Of Elizabeth Reed」と「You Don't Love Me」が、実はアナログ盤時代からふたつのテイクを編集したものだったという真相が、ここで初めて明かされたわけですが、どこにエディットのポイントがあるのか、素人の私には確認出来ないほど上手いです。

それと再びリマスターの話になりますが、アナログ盤の温もりよりは、やはりデジタル音質特有のギスギス感を逆手に活かした音質改善が、ここでは良い方向に作用し、デュアン・オールマンの個性のひとつでもある強いアタックのピッキングが実に明快に楽しめますよ♪♪~♪ 中でもリズムギターを弾くパートでのカッティングは素晴らしいですねぇ~♪ もちろん各楽器の鳴りの輪郭もクッキリですよ。

あと、気になるオムニバス盤からの収録では、グレッグ・オールマン作のオリジナル「Don't Keep Me Wonderin'」がアーシーで粘っこい演奏を象徴するリズム隊のウネリ、そしてデュアン・オールマンの強烈なスライドが文字通りのスカイドッグ♪♪~♪

さらにオーラスの「Drunken Hearted Boy」では、エルビン・ビショップ(vo,g)、スティーヴ・ミラー(p,per)、ボビー・コールドウェル(per) といったアメリカンロックの名物男達がゲスト参加! 思いっきりレイドバックした歌いっぷりでエルビン・ビショップが自作自演の強みを活かせば、デュアン・オールマンは、もうこれ以上無いというほど流麗苛烈なスライドを聞かせてくれますよ♪♪~♪

あぁ、まさに刹那の色気、うっとりと導かれる桃源郷♪♪~♪

ということで、基本形のアルバム「アット・フィルモア・イースト」は冒頭に述べた「デラックスエディション」も出回っていますが、CDで楽しもうとすれば、絶対にこっちをゲットして下さい!

単に曲数を増やしただけの「デラックス・エディション」に、何の意味があるのでせうか?

本日ご紹介の決定版があるのに、ねぇ……。

という、些か煮え切らない気分も、このCDを聴いていれば霧散すると思います。

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それからのオールマンズ 其の壱

2010-04-18 14:48:17 | Allman Brothers Band

Win, Lose Or Draw / The Allman Brothers Band (Capricorn)

何事も過大な期待は禁物!

というはサイケおやじの座右の銘なんですが、どうにかそういう心境になれたのも、数え切れない失望や思い込みの激しさが裏目に出た、これまでの悲惨な日常の連続によるものです。

それは例えば、成人作品の予告篇で浮かれた気分を打ちのめされた映画本篇、表紙に魅了されて買ったビニール本の中身の欺瞞性、海外オークションでやっと競り落としたレコードの???な気分、各種ガイドブックの適当な解説、さらに女心や猫のきまぐれ等々、思い出すだけで一生を費やするのは必定なんですが、本日ご紹介のアルバムも、そのひとつでした。

主役のオールマン・ブラザーズ・バンドはご存じ、夭折の天才ギタリストとして今もロック史に残るデュアン・オールマンを擁したサザンロック勃興の立役者だったわけですが、そのデュアン・オールマン亡き後にも、残されたメンバーの踏ん張りによって「ブラザーズ&シスターズ」という大ベストセラー盤を出してしまったのが、今となっては苦難の道の第一歩だったのかもしれません。

当然、ライプ巡業ではトップバンドとして君臨し、金回りも良くなったグループは当然の帰結として酒や女、そして悪いクスリにどっぷり……。

さらに音楽的主導権争いもあって、まずはグレッグ・オールマンとディッキー・ベッツが1974年頃からソロ活動をスタートさせ、共に同時期に発売したリーダー盤が大ヒットしてしまったことが、さらにオールマンズを迷い道に踏み込ませたようです。

そして解散の噂が強くなっていた1975年、なんとかバンドを存続させようとするレコード会社の主導によって新作レコーディングが企画され、同年初秋に出たのが本日の1枚でしたから、待ちくたびれた世界中のファンによって、予約段階からゴールドディスクになっていたという伝説も!?!

もちろん洋楽マスコミは挙って強烈なバックアップ体制で持ち上げていましたから、若き日のサイケおやじは何の疑念も感じることなく、入荷したばかりの輸入盤を手にしたのですが……。

 A-1 Can't Lose What You Never
 A-2 Just Another Song
 A-3 Nevertheless
 A-4 Win, Lose Or Draw
 A-5 Louisiana Lou And Three Card Monty John
 B-1 High Falls
 B-2 Sweet Mama

結論から言うと、なんとも淀んだような、纏まりの無い仕上がりだと思います。

当時のオールマンズはグレッグ・オールマン(vo,key)、ディッキー・ベッツ(vo,g)、チャック・リーヴェル(key)、ラマ・ウィリアムス(b)、ブッチ・トラックス(ds,per)、ジェイモー(ds,per) というメンバーでしたが、まずジャケットに全員集合の写真が無いのも、なかなか意味深でした。

実は後に知ったことですが、1975年初頭から始まった録音セッションにはレギュラーの面々が一堂に会することがほとんど無かったそうで、そんなこんなから、特にドラムスはプロデューサーのジョニー・ザドリンが叩いているパートが多いと言われています。

またサウンド作りの面でも、ディッキー・ベッツとチャック・リーヴェルの対立、そしてグレッグ・オールマンのジコチュウが三竦みだったそうですから、他のメンバーがヤル気を失うのも当然だったのかもしれません。

おまけにグレッグ・オールマンのボーカルパートは、仕上げ段階でのオーバーダビングという孤独な作業だったか!?

ですから期待して針を落とした「Can't Lose What You Never」の倦怠して精気の無い仕上がりには、如何にも「やっつけ仕事」という感じが強く、ちなみにこの曲は偉大な黒人ブルースマンだったマディ・ウォーターズのカパーですから、おそらくはグレッグ・オールマンの主導だったと思われるのですが、率直に言って、とても期待の新作アルバムのド頭を飾れるものではないでしょう。

一方、ディッキー・ベッツは持ち前のブルーグラス&カントリーロックの趣味性を丸出しにしたというよりも、明らかに前作「ブラザーズ&シスターズ」で大成功したヒット曲「Ramblin' Man」路線の焼き直しという「Just Another Song」や「Louisiana Lou And Three Card Monty John」でお茶を濁したというか……。

そんな状況ですから、サイケおやじがA面でどうにか満足して楽しめたのはグレッグ・オールマンが自作した「Nevertheless」と「Win, Lose Or Draw」の2曲だけでした。しかし「Nevertheless」は熱気が不足していますし、アルバムタイトルともなった「Win, Lose Or Draw」にしても、シミジミとした哀愁を表現するにはグレッグ・オールマンの歌いっぷりがイマイチで、実に勿体無い限り……。

それでもB面のほとんどを使ったインストジャム風の「High Falls」は、チャック・リーヴェルが本領発揮のジャズっぽいエレピが最高にクールで熱い♪♪~♪ バンドのウリだったツインドラムスとラマ・ウィリアムスのペースも、きっちりと役割を果たしている感じですから、後にオールマンズが分裂休止状態になった時、チャック・リーヴェルとラマ・ウィリアムスがシー・レベルを結成して似たようなフュージョン演奏を展開してくれたルーツが、ここに記録されていたというわけです。

個人的にも、このアルバムの中では一番に聴いていたトラックでした。

しかしこんな演奏がオールマンズの全盛期に残されたというのは、やっぱり違和感があります。何故ならば、あの吹きつける熱風のような勢いが全く感じられませんし、洗練やお洒落なんていうキーワードはスワンプ&サザンロックを期待していたイノセントなファンには、ほとんど受け入れられないものでした。

だからこそ、オールマンズ的なマンネリに満ちたオーラスの「Sweet Mama」が非常に心地良く、この気抜けのビールのような歌と演奏が締め括りに相応しいのは、なんともやりきれません。

ただ……、それでも救いだったのは、このアルバム発表後のライプ巡業では、それなりに威厳と体面を保てていたことでしょう。公式盤とブートで今も楽しむことが出来るその頃の音源は、もちろんデュアン・オールマンが在籍していた時期とは比較にならずとも、このアルバムを幾分とも弁護する手段になったと思います。

現在のオールマンズはメンバーを入れ替えながら、元気にライプ巡業の日々を送っているのですが、はっきり言えば、それは個人的にも否定することの出来ない、素晴らしい伝統芸能でしょう。

そこに至るには、様々な苦渋の選択があったことは言わずもがな、きっかけとなったのは、このアルバムでした。

そう結論づけて後悔しないものを、サイケおやじは初めて聴いた時のがっくりした気分と共に、何時も思い続けているのでした。

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オールマンズ上昇期の発掘音源

2010-02-14 15:06:42 | Allman Brothers Band

American University Washington, D.C. 12/13/1970
               / Allman Brothers Band (TABB Recording Company = CD)

所謂アーカイヴ物と呼ばれる発掘音源シリーズは、例えば先日ご紹介したグレイトフル・デッドの「ディックス・ピックス」シリーズのようにミュージャン側主導で発売されることが多く、他にもドアーズ、ニール・ヤング、そして本日の主役たるオールマン・ブラザーズ・バンド等々は、何時の時代のファンからも熱心な注目を集めています。

で、中でも特に熱くさせられるのが、早世した天才の遺産に接することでしょう。

オールマンズで言えば説明不要、1971年10月のデュアン・オールマン、そして翌年のベリー・オークリーの度重なる悲報によって、その上昇期に水をさされた時代こそが、ファンにとっては永遠の思い出になっているはずですから、未発表音源の登場はノー文句!

本日の1枚は、その本格的な第一弾として、確か2002年頃からオールマンズの公式ホームページでネット通販されたものですが、これが歓喜悶絶の熱血ライプ♪♪~♪

録音は1970年12月13日、メンバーはデュアン・オールマン(g)、ディッキー・ベッツ(g)、グレッグ・オールマン(vo,org)、ベリー・オークリー(b)、ブッチ・トラックス(ds,per)、ジェィモー(ds,per) という公式デビュー以来の熱血6人組ですから、ブルースとソウル、カントリーやラテンからモダンジャズまでもが寄せ鍋状態で煮詰められ、もちろんサイケデリックロックの隠し味も効いた、なかなか美味しい演奏が楽しめます。

しかも気になる音質が、荒っぽいモノラルミックスながら、丁寧なリマスターによって低音域もガッチリ固まったド迫力! 全く普通に聴き易いのです。

 01 Statesboro Blues
 02 Trouble No More
 03 Don't Keep Me Wonderin'
 04 Leave My Blues At Home
 05 Stormy Monday
 06 You Don't Love Me
 07 Whippin' Post

上記演目は、あの超絶の名盤「アット・フィルモア・イースト」や「イート・ア・ピーチ」と共通するものがありますから、聴く前に騒ぐ血を抑えきれないわけですが、もちろんここでも濃厚な演奏は期待を裏切りません。

お馴染みのキメのリフからデュアン・オールマンのスライドが「空飛ぶ犬」状態の「Statesboro Blues」は、粘っこいグレッグ・オールマンのボーカルに絡みつく終盤の勢い共々に、何度聴いても唸る他はありませんし、そのスライドがギリギリの高音域まで飛翔した「Trouble No More」は怖いほどです。

そして「Don't Keep Me Wonderin'」における激ヤバに躍動するバンドアンサンブル、その間隙でハードに唸るスライドのテンションの高さは、流石にあの「レイラ」セッションでエリック・クラプトンを震撼させた実力の証明でしょう。

いゃ~~、全く、凄いです!!!

しかし、もうひとりのギタリスト、ディッキー・ベッツの頑張りも特筆もので、「Leave My Blues At Home」のツインリードやフレーズの掛け合いからは必死さがダイレクトに伝わってきて憎めません。

もちろん随所でデュアン・オールマンに押されまくっているのは否めませんが、それでも不滅の天才に対抗する意気地は「You Don't Love Me」で見事に実証され、中盤からのドラムスだけをバックにしたアドリブ合戦ではヤケッパチの居直りというか、相当に感情的になったプレイが高得点♪♪~♪

ちなみにこの音源は既に述べたようにモノラルミックスですから、ふたりのギターがどっちがどっちなのか、初めてオールマンズを楽しまれる皆様には区別が難しいかもしれませんが、当然ながら野太い音で閃きに満ちたフレーズを連発するのがデュアン・オールマン! 幾分細い音色で常套のスケールを使うのがディッキー・ベッツでしょう。

しかし、それにしても、ほとんど神の領域に近づいているデュアン・オールマンに、ここまで堂々と対抗し、協調出来るディッキー・ベッツの実力も凄い思いますねぇ。ここでの「You Don't Love Me」を聴いていると、本当にそう思う他はなく、あくまでも個人的な感想では、前述した「アット・フィルモア・イースト」のバージョンを超えているように思うほどです。

あぁ、白熱の15分48秒! 随所に仕掛けられた「お約束」にも、嬉しくなりますよ♪♪~♪

その意味でブルースの伝統に忠実な「Stormy Monday」は、苦みばしったグレッグ・オールマンのボーカルに対し、意外にも幾分甘いフィーリングで泣くデュアン・オールマンのギターが、これまた素晴らしすぎて、震えがくるほどです。ただし録音テープの関係でしょうか、それが途中で途切れてしまうのが残念無念……。

しかしオーラスで、なんと20分半以上の熱演が完全収録された「Whippin' Post」は圧巻! もしこれが途中で終わっていたら、モヤモヤが高じて精神衛生に悪影響は必至でしたから、感謝するばかりです。

実際、地響きの如く躍動するリズム隊の暴虐や力んだグレッグ・オールマンのボーカル、さらにラフなところが逆に凄いバンドアンサンブルがあってのアドリブ合戦には、絶句ですよ。このあたりはモノラルミックスで団子状で迫ってくるサウンド作りが完全に良い方向に作用した、所謂結果オーライでしょうねぇ~♪

本当に大波の如く押し寄せてくるオールマンズのド迫力の演奏には、圧倒されてしまいます。もちろんボリュームをガンガン上げてしまっても、誰にも責任はとれないわけです。

ということで、やっぱり凄い発掘音源なんです!

時期的にはデビューアルバムを出してから約1年後であり、また前述したとおり、エリック・クラプトンとの「レイラ」セッションを経て、バンドがますますの自信をつけた頃の演奏ですから、まさに止まらなかった勢いが感じられて当然だと思います。

またこの後、1971年3月に録音された傑作公式ライプ盤「アット・フィルモア・イースト」との比較では、纏まりという点では劣るかもしれませんが、逆に言えばラフ&ハードなこちらを聴いていると、「アット・フィルモア・イースト」は綺麗すぎて……、というような不遜な暴言を吐いてしまいそうです。

まあ、実際には言ってしまったわけですから、ご容赦願うとしても、それだけの熱気と興奮が、この復刻CDには収められています。

ですから、最初はネット販売だけだったものが、確か後には日本盤としてレコード会社が発売しているはずですから、容易く聴けると思いますので、機会があれば、ぜひっ!

そして同シリーズはもうひとつ、デュアン・オールマンが生前の1971年9月19日の演奏を収めた2枚組のセットがあって、それも熱いですよ。また当然ながら他のレコード会社からも発掘音源盤は幾つか出ていますから、良い時代になったものです。

そのあたりは今後も、追々に書いていきたいと思います。

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レイドバックは快楽主義か?

2010-01-30 15:02:17 | Allman Brothers Band

Brothers And Sisters / The Allman Brothers Band (Capricon)

若い頃、それこそ一生懸命に聴いていた音楽は、齢を重ねても魅力が失せないどころか、ちょっとした偶然で、それらの一部でも耳にした瞬間、様々な事象が細部まで思い出されます。

例えば本日取り出したのは、サイケおやじにとっての昭和48(1973)年秋から冬に愛聴盤だった1枚で、オールマン・ブラザーズ・バンドにしても最大のヒットアルバムですが、ご存じのとおり、これが誕生するまでには天才ギタリストだったデュアン・オールマン、そしてバンド内では精神的にも縁の下の力持ちだったベース奏者のベリー・オークリーが、ともにバイク事故で亡くなるという悲劇がありました。

しかも両者の事故は、ほぼ1年の間に続いたわけですし、その現場も近く、享年24歳という悲劇も一緒というのは宿縁かもしれません……。

さて、これまでも述べてまいりましたが、そんなこんなでバイク好きのサイケおやじは、リアルタイムの当時から複雑な心境で、このアルバムを聴いていたわけですが、しかし中味の快楽性は否定出来るものではありません。

それは所謂レイドバックと称されていた、スワンプロックの進化形だったのです。

 A-1 Wasted Wprds / むなしい言葉
 A-2 Ramblin' Man
 A-3 Come And Go Blues
 A-4 Jellyu Jelly
 B-1 Southbound
 B-2 Jessica
 B-3 Pony Boy

ご存じのように、オールマン・ブラザーズ・バンドはデビューした時からブルースロックとR&B、そしてジャズやラテンも包括した実力を披露していましたから、スタジオ録音よりはライプセッションの方が魅力的という結果が、あの超絶の名盤「アット・フィルモア・イースト」を誕生させています。

また、それゆえにデュアン・オールマンの突然の悲報によって未完成の美学を聞かせてくれたアルバム「イート・ア・ピーチ」にも、しっかりとライプ音源が組み込まれていたのでしょう。

ですから再出発を確実に示したいバンドの意向として、あえてスタジオレコーディングの新作で勝負に出たのも、今では理解出来るところです。しかしサイケおやじは当時、完全に懐疑的で、オールマンズの新譜が出ると知っても、何ら期待はしていませんでした。

ところが友人が買ったのを聞かせてもらった瞬間、自分の不明を恥じいるばかりでしたねぇ。まさに血沸き肉躍るというか、歌うことを自ら楽しんでいるかのようなボーカル、果てしない快楽主義を作り出すピアノとギター、粘っこくて、さらに飛び跳ねるリズムとビート♪♪~♪ ハナからケツまでシビレましたっ!

ちなみにクレジットされたメンバー構成を確認すると、グレッグ・オールマン(vo,org,g)、ディッキー・ベッツ(vo,g)、ブッチ・トラックス(ds,per)、ジェイモー(ds,per) というオリジナルの面々に加え、ラマ・ウィリアムス(b)、チャック・リヴェール(p,el-p,key) が新レギュラーとなり、また悲劇の主人公となったベリー・オークリー(b) も部分的に参加しています。さらにボズ・スキャッグスのバンドからレス・デューディック(g) の助っ人も嬉しいプレゼントでした。

まずA面初っ端の「むなしい言葉」からして躍動的なリズムがうねり、スライドギターが粘っこいボーカルに絡み、浮かれたピアノが良い感じ♪♪~♪ しかも幾分、もっさりしたグルーヴが逆に明快というか、それまでのオールマンズにあったドロドロしたサイケデリックロックの残滓が消え、実に聴き易くなっています。

それは続く「Ramblin' Man」での明るいカントリーロック風味へと引き継がれていきますが、それにしてもノーテンキ寸前のイキ具合が絶妙で、まさに終りなき快楽主義の真骨頂! 実際、この曲をカーステレオで流しながらのドライブは最高ですよねぇ~♪

そのあたりはB面のハイライト「Jessica」にも明確に表現された、まさに新生オールマンズの魅力で、実際、このカントリーロッキンフュージョンの演奏は聴いても、また演じても気持良すぎますよ♪♪~♪ とくにラテン系パーカッションとアコースティックのリズムギター、オールマンズの看板ともいえるツインリードのキメのリフ、エクスタシー寸前の快楽をむさぼるピアノのアドリブ、さらに軽快なリズムと重いビートの完全融合! もちろんディッキー・ベッツのギターは水を得た魚の如く、カントリーロックのキモをジャズ的に発展させた舞い上がりフレーズがテンコ盛り♪♪~♪ 無理を承知の願いでは、全盛期のベンチャーズにやって欲しいとさえ思ってしまう、インストロックの極みつきです。

そして、それとは対をなすというか、逆に粘っこいブルースロックとR&Bの黒っぽさに拘り抜いたトラックも実に秀逸で、ユルユルなのにテンションが高い「Come And Go Blues」や「Jellyu Jelly」におけるコクがあってもスッキリした「すろ~ぶる~す」の解釈は、本当に1970年代型のロックだと思います。つまりサイケデリックの濁りを捨て去り、休日の昼間っからビールでも飲んでウダウダやろうぜっ! みたいな♪♪~♪

ですから、せ~のっ、でやってしまった「Southbound」のロック王道の演奏も、また狙いがミエミエの「Pony Boy」といったブルース味も、失礼ながら使い古された手口が逆に心地よいという結果オーライなんだと思います。

ということで、とても聴き易い仕上がりがゆえに、従来からのオールマンズ信者にはウケがイマイチだったと言われていますが、私は全く否定出来ません。むしろ恥も外聞もなく、大好きと言って憚りませんよ。その飽きる寸前の刹那の気分が快感なんですねぇ~♪

う~ん、レイドバックって「ブルースロック+カントリーロック」という図式でしょうか? 実際、以降のレイドバック流行期には、ここに聞かれる音と雰囲気がひとつの基準になっていたように思います。

最後になりましたが、サイケおやじが最初にバイクで事故ったのは、ちょうどこのアルバムに夢中になっていた頃でした。怪我や被害は大したことなくて、全くの独りゴケだったんですが、もちろんデュアン・オールマンやベリー・オークリーのことが重なって、神妙に安全運転を誓うのでした。

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デュアン・オールマンの衝撃

2009-11-13 12:00:28 | Allman Brothers Band

The Allman Brothers Band At Fillmone East (Capricorn)

既にしてロックの殿堂入りは確実の名作ライプ盤ですが、これに出会った頃の衝撃度は青春時代のサイケおやじには、後頭部を殴れたような!?!

それは昭和46(1971)年のちょうど今頃の季節でした。

ラジオの洋楽番組で聴いた「Statesboro Blues」は、このアルバムに収録された名演のひとつだったのですが、イントロから炸裂するハードなリフと強烈なスライドギター!

なんじゃ、こりゃぁ~~~!

と、ほとんど松田優作状態の叫びが、思わず口から発せられた記憶も鮮烈です。

度々述べているように、その頃の私は既にスライドギターが大好き人間でありながら、それにしても当時はストーンズのブライアン・ジョーンズか、ライ・クーダーぐらいしかロック系のギタリストは知りませんでした。

と言うよりも、スライドギター奏法がロックの世界では一般的じゃなくて、もちろん本物の世界だった黒人ブルースのレコードにしても、我国ではアルバート、フレディ、そして B.B の三大キングか、ストーンズ経由で知られていたマディ・ウォーターズやウリン・ウルフあたりの編集盤ぐらいしか出回っていませんでした。

またオールマン・ブラザーズ・バンドが聞かせていたブルースロックにしても、それまでのクリームやフリートウッド・マック、そして同系のイギリスのバンドやアメリカでのサイケデリックから派生したグループの演奏とは、決定的に違う何かが、この1曲だけで感じられたのです。

さらに大衝撃だったのは番組の中で、このスライドギターを弾いていたデュアン・オールマンがバイクの事故で同年の10月、つまり私が放送を聴いた直前に他界したという悲報を告げられたことです。

あぁ……、こんな凄いギタリストを、もう聴けないなんて……。

出会いは別れの始まり……、とは本当の名言だったんです。

そして、もうこうなると辛抱たまらん状態のサイケおやじは、「Statesboro Blues」が収録された本日ご紹介のライプ盤をゲットする覚悟を決めたのですが、それはなんと2枚組で、日本盤は三千円!! これは当時、高校生だった私には苦しいものがありました。

しかし青春の情熱というか、憑かれた執念は物凄いエネルギーを発揮するものです。それこそ昼飯代を倹約しまくって、日本盤よりも安かった輸入盤の中古をゲットしたのが、掲載したアルバムです。

 A-1 Statesboro Blues
 A-2 Done Somebody Wrong
 A-3 Stormy Monday
 B-1 You Don't Love Me
 C-1 Hot 'Lanta
 C-2 In Memory Of Elizabth Reed
 D-1 Whipping Post

くぅぅぅぅ~、このアルバムを聴いた時のリアルタイムの衝撃は、再び凄いものがありました。

当時のバンドメンバーはデュアン・オールマン(g) とグレッグ・オールマン(vo,key) の兄弟を中心にディッキー・ベッツ(g)、ベリー・オークリー(b)、ブッチ・トラックス(ds,per)、ジェイ・ジョニー・ジョハンスン(ds.per) という6人組で、当時としては画期的というか、2人のドラマーがいるバンドは珍しい編成でした。

そしてこのアルバムは1971年3月、ニューヨークのフィルモア・イーストで録られた音源から編集されていますが、あらかじめライプレコーディングを想定したセッションには、ゲストプレイヤーも参加しており、ここでは特にハーモニカ奏者のトム・ドューゼットの名演も楽しめます。

しかし圧巻なのは、やはりデュアン・オールマンの神業ギター!

ド頭に入っている「Statesboro Blues」の物凄いスライドは、そのリズム感、音とフレーズのコントロールが神の領域に近づいているとしか思えないほどです。しかも豪快無比!

さらにブルースロックの神髄というか、「Stormy Monday」での強靭でハードなアドリブや「You Don't Love Me」で炸裂する瞬間芸的な閃きの連続を聴いていると、う~ん、これは天国へ召されるのも神様の思し召しとしか思えなくなるのです。

また、そうした凄みを遺憾なく発揮出来るのも、バンドメンバー各人の技量と纏まりが素晴らしいからでしょう。しなやかで粘っこく、さらに強いビートでキメまくりのリズム隊はツインドラムス体制の成果でしょう。

と同時に、デュアン・オールマンとディッキー・ベッツがバンドアンサンブルのキメに演じるツインリードのパートは、長いアドリブソロの中で何時しか浮かんでは消えていく素晴らしい瞬間を見事に演出しています。特に「In Memory Of Elizabth Reed」で聴ける3度のハモリとバッキングは最高過ぎますねぇ~♪

こうしてデュアン・オールマンの虜になったサイケおやじは、この天才の過去を探求するにつれ、ますますその凄みに圧倒されるのです。例えば、このアルバム以前に出ていながら、同好会バンドの先輩から聴かせてもらったまま、なんとなく忘れていた「レイラ」の2枚組も、あわててゲットしたほどです。

デュアン・オールマンのプレイは、スライド奏法でもレギュラーチューニングが多いようですし、単音アドリブでも3連&6連のフレーズを多用していますが、特有の浮遊感と閃光の瞬間的な至芸は、どうやらモードジャズの影響も含んでいると感じることが度々です。

実際、オールマン・ブラザーズ・バンドとしてのライプで演じられる長いアドリブ合戦、あるいはバックアップのコードワークが、一筋縄ではいきません。

同じ傾向としては、これ以前のクリームが非常にジャズ寄りの演奏でしたが、それはメンバー各々が喧嘩をしているようなところがありました。ところがオールマン・ブラザーズ・バンドは、なかなか協調性があって、グループとしての表現も秀逸だと思います。なんと言うか、柔軟に盛り上がっていく、これはグルートフル・デッドあたりのライプ演奏にも通じるものがあると感じます。

ということで、デュアン・オールマンを知ってしまったサイケおやじは、なんとか天才の技をコピーしようと奮闘したのですが、当然ながら足元にも及びません。

しかし、こうしてデュアン・オールマンに出会えた幸せは、今も忘れていないのでした。

コメント (6)
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CDの方が、いいじゃないかぁ

2005-09-23 17:39:27 | Allman Brothers Band

CDが登場してから20年以上たつ現在でも、アナログ盤の人気は不滅のようです。でも、私はCDが嫌いではありません。それが登場した時は、大歓迎でした。理由は長時間の収録が出来たことです。え~っ、「マウンテン・ジャム」が一気聴き出来るのぉ~♪

そうです、このオールマンズの不滅の名演はアナログ盤では2面に分かれていたので、聴いていくテンションが持続しなくて……。

Eat A Peach / The Allman Brothers Band (Capricorn)

ご存知のように天才ギタリスト=デュアン・オールマンの遺作です。

やはり聴きものは、名盤「フィルモア」の残り曲、と言っても、捨て曲ではなく、それ以上にハイテンションの演奏です。

まず「One Way Out」は躍動的なリズムに躁病的なデュアンのスライドが神業です。特にドラムスを真ん中に挟んでディッキー・ベッツのソロと対峙、その直後に自分のパートに入ってからは、短い中にとてつもないエネルギーが爆発しています。また曲終わりのお約束もきちんと演じています。

そして「Trouble No More」が、また凄い! グレッグの歌に入れるデュアンの合の手スライドは、最初聴いたとき、ハーモニカかと思ったほどのハーモニーを出しています。

極みつきは「Moutain Jam」の長時間演奏で、アナログ盤時代は前半だけ聞いてクタクタになっていたので、後半はあまり針を落としていませんでしたが、CD時代になって一気に聴いてみると、全体として、とても良く纏まった演奏だということに気がつきました。ベリー・オウクリーのエレキベースもブリブリにドライブしていますし、ツインドラムスが、またご機嫌です♪ もちろんデュアンとデッキーのギターも快調、ソロも良いですが、リズム・ギターのパートも最高です。ここだけ聴いていても熱くなります。これほどCDの発明がありがたいと思ったことはないですねぇ~

この3曲以外のスタジオ録音パートも、ジワジワ、グリグリに泥沼に浸かった演奏ばかりです。

この盤も長時間ドライブの必需品なのでした。いけねぇ~、またアクセル踏みすぎだぁ~

コメント
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