OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジョン・レノンの喪失と復活

2017-12-08 15:09:55 | Beatles
The Lost Lennon Tapes Vol.30 / John Lennon (BAG = bootleg LP)
 
 A-1 It´s Not Too Bad
 A-2 She Can Talk To Me
 A-3 Cry Baby Cry
 A-4 Two Virgins Outtake
 A-5 Plastic Ono Band Jam
 A-6 Look At Me
 A-7 I´m The Greatest
 A-8 How?
 A-9 Oh Yoko!
 B-1 Sally And Billy
 B-2 Come Together
 B-3 Happy Girl
 B-4 I´ll Make You Happy
 B-5 How Do You Sleep?
 B-6 It´s So Hard
 B-7 I Don´t Want To Be A Soldier

ある日、突然の事から、37年……。

今年も世界中で様々な追悼行事が営まれておりますので、サイケおやじもこれまでに蒐集してきたブート盤をあれやこれやと取り出したところ、やはり衝撃的だったのは1980年代末頃から1990年代中頃に出回っていた「ロスト・レノン・テープス」と称された一連のシリーズでした。

その内容は既に述べたとおり、今となってはビートルズやジョン・レノンのアンソロジー盤において容易に聴ける歌や演奏もあるんですが、しかし当時としては非常に貴重で感動的とさえ言える音源がテンコ盛り!

しかも三十数枚は出たとされるアナログ盤LPの何れもが、とても素敵なスリーブデザインで、そこに使われているジョン・レノンのポートレートやスナップショットは大きな魅力になっていたのですから、たまりません。

それが出る度に、サイケおやじも必死になって買い集めたのですが、残念ながらコンプリートには至らず、そもそもシリーズ全容が何枚で完結しているのかさえ定かではないという勉強不足もあるもんですから、なかなか皆様に勇んでご紹介出来そうもないとはいえ、掲載したのは此度聴き直した数枚の中でも、個人的には好きな1枚♪♪~♪

それは、このシリーズでは当然の様な編集として、ビートルズ時代とそれ以降の時代に作られたデモ音源やリハーサル音源、あるいはアウトテイクがごっちゃ混ぜにされているという、マニアックな気分からすれば決して納得出来る仕様ではありませんが、それでもアナログ盤LPの特性である片面ずつの鑑賞では意外にも自然に聴けてしまうという、それなりの良さは確かにありますよ。

で、簡単に収録曲をご紹介させていただければ、まずA面ド頭「It´s Not Too Bad」は、「Strawberry Fields Forever」のデモ音源の断片であり、Aメロだけがテキトーな歌詞で歌われているだけですし、続く「She Can Talk To Me」も「Hey Bulldog」のデモ音源ではありますが、殊更後者をピアノの伴奏で歌うジョン・レノンにある種の「熱さ」を感じてしまいます。

また気になる「Come Together」は、1972年8月にニューヨークで行われたワン・トゥ・ワン・コンサートのリハーサルからと云われる音源ですが、2分に満たないトラックなので、過大な期待は禁物です。

むしろサイケおやじとしては、傑作アルバム「イマジン」に所収の名曲トラックに耳に惹きつけられるばかり♪♪~♪

もちろん未完成な事は言わずもがな、しかしそれゆえにジョン・レノンの本音や試行錯誤に触れられるような気がして、感謝感激というわけです。
 
ちなみに前述したとおり、この膨大(?)な「ロスト・レノン・テープス」のシリーズは現在、アルバムタイトルはマチマチながら、ある程度纏まった形でCD再発されておりますことを付記させていただきます。

ということで、現在の世界情勢は全く「平和」というジョン・レノンが望んだ事象とは異なる様相に突き進んでおりますが、果たしてこの偉人が存命であったなら、どのようなメッセージを発するのだろうか……?

そんな無い物ねだりを夢想しつつ、本日は衷心より合掌しているのでした。
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クリスマスという名の希望

2016-12-24 16:10:40 | Beatles
Wonderful Christmastime / Paul McCartney (EMI / 東芝)

クリスマスはキリスト教の祝祭ですから、基本的に異教徒には関係の無いイベントながら、殊更仏教徒や神道崇拝者が多い我が国において、師走の浮かれた風物詩となって久しい今日、その目的は皆で楽しく盛り上がろぉ~~♪

その一点だけに特化した感を毎年覚えるのがサイケおやじの立場です。

もちろん、サイケおやじは熱心な仏教徒ではありませんし、キリスト教を嫌悪する事もありませんが、何か本質を踏み違えた乱痴気騒ぎは、何れ逆の事態を招きかねない?

そんな漠然とした懸念を抱き始めた頃に巷で流行りだしたのが、ポール・マッカトニーが1979年クリスマスシーズンに出した本日掲載のシングル盤A面曲「Wonderful Christmastime」でした。

皆様ご存じのとおり、当時のポールは率いていたウイングスの活動が末期的というか、煮詰まっていた事は少なからず認めざるをえない時期で、洋楽の最先端は所謂ニューウェィヴ勢に牽引されつつあり、デジタルビートや起承転結の明瞭さを欠いた楽曲が氾濫しかけていた中にあって、確かにそれまでの自作の名曲群に比べれば正直、些か精彩の無いメロディの「Wonderful Christmastime」が、なかなかの和みのオアシスに感じられたのはサイケおやじだけでしょうか?

というよりも、結果的に欧米では大ヒットしていますし、我が国でも比較的すんなりと耳に馴染む曲調と優しい歌詞がウケていたのは否定しようもない事実でありました。

なによりも構えたメッセージ性が無く、素直に素敵なクリスマスを楽しもぉ~~♪

みたいな気軽さが良かったのかもしれず、それこそが現代的なクリスマス、異教徒にさえも楽しさ優先で受け入れられるクリスマスの素晴らしさ♪♪~♪

おぉ~、まさに我が国のクリスマスにあるべき姿が歌の世界で提示されているのならば、そこに逆説的なメッセージが云々、深読みしたりは愚の骨頂と思うばかりでしたねぇ~~。

ちなみにこの「Wonderful Christmastime」はキーボードを主軸にポールがワンマンレコーディングで作り上げた事は定説になっていますが、ホンワカメロディとテクノ調のサウンドの融合が狙いであったとすれば、翌年に久々のソロアルバム「マッカトニー Ⅱ」を発表し、ニューウェィヴ勢に対抗意識を丸出しにしたような刺激的な傑作曲「Coming Up」のメガヒットには最高の露払いだったように思います。

ということで、この世界には必ずしも幸せなクリスマスを迎えたり、そんな事をやっている場合では無い人達も夥しく、それが現実の厳しい真相でありましょう。

しかし、だからこそ、全ての人類がひとつの楽しみに集える日が宗教行事を超越した「クリスマス」という名目に象徴されて欲しいものだと、浅はかにもサイケおやじは空想しているのでした。
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出会いからずぅ~っと

2016-12-08 15:23:41 | Beatles



誰よりも「愛」の尊さ・大切さを教えてくれたのは、ジョン・レノンだった気がします。

合掌。

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天才ポールが前を向いたら

2016-09-13 17:49:01 | Beatles
Goodnight Tonight c/w Daytime Nightime Suffering / Wings (Parlophone / 東芝)
 
殊更大衆音楽の世界においては、常に流行の最先端を作り出し、あるいはその流れに遅れないような努力を求められるのがスタアの証だとすれば、時には無理を承知の悪足掻きをやらかして醜態を……!?
 
なぁ~んてことも決して珍しくないのが、この世の厳しさでしょう。
 
しかし、流石は元ビートルズという矜持、そしてロック&ポップスの天才であるポール・マッカートニーには、そんな常識(?)は通用しないと確信されられたのが、1979年春に発売された本日掲載のシングル盤A面曲「Goodnight Tonight」でありました。
 
だって、これが当時の洋楽では主流のひとつであった所謂ダンスビートを強く意識した作りになっていたんですよねぇ~~♪
 
皆様ご存じのとおり、ポールが率いるウィングスは1976年の全米巡業をライブ活動の頂点としながら、翌年には実質的な活動停止からメンバーも愛妻リンダと子分のデニー・レインだけという布陣に戻り、それでもシングル曲「夢の旅人 / Mull Of Kintyre」のウルトラメガヒットを放ち、さらにはアルバム「ロンドン・タウン」を発表していましたから、なかなか堂々とした存在感を示していたわけですが、どうにもやっている音楽全体が湿っぽいというか、まあ、それもポールならではの美メロ主義に彩られた胸キュン路線とはいえ、サイケおやじとしては、もうちっとは派手なものを望んでいたところへ出たのが、この「Goodnight Tonight」だったんですから、その逆ベクトルの激しさには仰天して浮かれさせられましたよ♪♪~♪
 
なにしろいきなりイントロからスパニッシュ調のギターが鳴り響き、続けてディスコビートでシンコペイトするベースが出るというツカミはOK!
 
そして如何にものポール節とでも申しましょうか、シンプルにしてキャッチーな曲メロを甘めに節まわすポール&ウィングスのボーカル&コーラスが実にニクイばかりで、しかもこれまたウィングスでしかありえないギターの間奏やリフの用い方、さらにはイントロからの発展形のようなスパニッシュなフレーズやラテンのリズムも取り入れたお遊び風演奏パートの彩、そしてついにはテクノっぽい味わいまでもちょっぴり最後には滲ませてしまうという、これぞっ! サービス満点の仕上がりなんですが、実はそんな分析なんてのは無意味なのが、この「Goodnight Tonight」の本当の魅力だと思います。
 
もっと素直にビートにノッて、メロディと歌を楽しんで欲しいというのが、ポール・マッカートニーという天才の狙いでしょう。
 
実は後に知った事ではありますが、「Goodnight Tonight」には既に2年ほど前からポール・マッカートニーが単独で制作していたデモトラックが基にあったそうで、最初はさらに強力なディスコバージョンだったと言われていますが、だとすれば同曲ロングバージョンの12吋シングルが発売されたのも当然だったわけで、もしかしたらそっちが本命だった!?
 
という妄想も禁じ得ないほど、とにかく大ヒットという結果はオーライ♪♪~♪
 
しかし、続けて世に出たウィングス名義のアルバム「バック・トゥ・ジ・エッグ」が、その明快さを受け継ぎながらも、個人的には些か中途半端な内容だった事を思えば、シングルオンリーで発表された「Goodnight Tonight」の突発的な傑作性は、折しも活発に動き出していたニューウェィヴ勢に対するポール・マッカートニーからのメッセージカードだったような気さえするほどなんですが、その意味でB面に入れられた「Daytime Nightime Suffering」が、まさにポール・マッカートニーだけのメロディフレーズや十八番のリズムアレンジを繋ぎ合わせたような、そのお気楽(?)な起伏が往年の作風になっているのは嬉しい誤算なんでしょうかねぇ~~♪
 
あぁ~、これだからポール・マッカートニーは天才だと思うばかりです。
 
ちなみに久々のウィングスには新メンバーとしてローレンス・ジュバー(g) とスティーヴ・ホリー(ds)  が入り、プロデュースにもビートルズ所縁のジョージ・マーティンの弟子だったクリス・トーマスが参画しているのも要注意なんですが、クリス・トーマスについては書きたい事が沢山あるので、今日はここまでとさせていただきます。
 
ということで、これで目が覚めたとは思いたくないんですが、ついにポール・マッカートニーは翌年、自己流畢生のニューウェイブ&テクノ必殺曲「Coming Up」を出すという大暴挙も、それがサイケおやじにしても素直に嬉しくなるほど受け入れてしまった前段には、「Goodnight Tonight」という全く素敵な予行演習があったからかもしれません。
 
近年は「ビートルズ」という伝統芸能で我々を楽しませる偉大な天才に、もう一度、この頃の前向きな姿勢を望みたくなるのは偽りのない気持ちです。
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制定しよう! イマジンの日!

2015-12-08 13:07:28 | Beatles

Imagine / John Lennon (Apple / 東芝)

言うまでもなく毎年、未だ悲しい思い出を消し去る事が出来ない日がやってきました。

特に今年は、世界各地で常態化したテロ事件、しかも根源が大規模な軍事行動を伴う地域紛争であり、そこから他所に逃れる民衆の群れ、さらには為政者や資本家達の私利私欲が渦巻く現状にあっては、宗教者や学者、あるいはマスコミなんかは偽善的な部分しか伝えられないという本末転倒……。

決して「力」だけでは、この世のゴタゴタは解決不能という真理に鑑みて、「話し合い」という行動がお気楽な夢想に過ぎないという現実は、何も今に始まった事ではないにしろ、やっぱり悲しいと思うばかりです。

つまり、今の世界には「言葉」に影響力を持つ人間がいないんじゃ~ないかなぁ……、嘗てのジョン・レノンのような!?

そこで本日は説明不要、言語の壁を越えて、これほど世界に膾炙した歌詞は奇跡とも云える「Imagine」というのは、些かありきたりの儀式かもしれませんが、しかし、もしもジョン・レノンが生きていたら、こんな世界の現状にどんな言葉を発していたかは、大いに気になるところです。

人が人である以上、因縁や恨みを抑えて棄てるというのは、とてつもないハードボイルドだと思います。

また、何かあった時の不安は、例えば単純な事故であったとしても、それが公共の場であれば、地下鉄駅の水溜りでさえも、テロという認識が優先されてしまう状況の恐ろしさ!?!

それが傷害事件から大規模災害にまで適用されてしまう、そうした心理的困窮が更なる人種迫害や疑心暗鬼に繋がるという推測が易いのであれば、世界中のあらゆる場所で、この穏やかな説得力に満ちた名曲[Imagine」を流すのは、どう?

今日であればこそ、そんな夢想を抱いてしまうのでした。

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平和を希求する心はひとつ

2015-01-14 14:15:07 | Beatles

平和を我らに / Plastic Ono Band (Apple)

新年早々、パリで突発したテロ事件は、自らの信奉を過剰な風刺の題材にされた事が原因と言われていますが、とにかくやらかした暴力行為は許されるものではありません。

しかし、襲撃した側にだって、それなりに筋目はあるはずで、だからこそ話し合いよりは我慢の限度を超えた行動に出たのでしょう。

フランスはもちろん、世界のあちこちで追悼の集会やデモ行進が行われている事の良し悪しは別にして、現実的にイスラム教徒への報復事件も頻発し、さらには襲撃された出版社が次号で再び過激な風刺を予定しているとの報道には、なにやら情けない気分がサイケおやじにはあります。

そりゃ~、やられっぱなしばかりでも!?

という気持ちはお互いに否定出来ず、それについてはサイケおやじだって分かっていますし、実際に自分が当事者であれば、同じ行動に走ってしまう事は必定です。

でもねぇ~、それじゃ~、何時までたっても暴力は沈静化しないわけで、とにかくパリの街中に完全武装した兵士が大勢警備している光景は、戦争そのものの様相ですから!?

実はサイケおやじには近々、海外出張が予定されていて、なんとっ!

昨日、その関係当局から、テロ事件には十分なる注意を!

なぁ~んていうお達しがあったんですよっ!

こっちは別に危険な地域へ行くはずもないのに、文明国がこのテイタラクでは、ど~しようもありませんよ。

さて、そこで思い出したのが1969年、ジョン・レノンがプラスティック・オノ・バンド名義で発表した「平和を我らに / Give Peace A Chance」です。

ご存じのとおり、この歌は当時激烈を極めていたベトナム戦争に反対する主旨があり、以降も湾岸戦争等々、世界的な紛争が起こる度にヨーコの意思もあって、再発され、歌い継がれてきたシンプルなロック曲です。

もちろん、この歌を大合唱したって、そこに平和が訪れるほど世の中は甘くありませんが、ひとつの意思を旗幟鮮明に出来ることは確かです。

フランスにだって、リアルタイムで発売されていた「平和を我らに / Give Peace A Chance」のレコードがあった事を忘れていない人は大勢存在しているでしょう。

この世に戦争ほどくだらないものはありません。

しかし、簡単にそれを止められないのが人間の宿業だとしたら、せめてひとつの歌を合唱する心ぐらいは、神様に残しておいて欲しいと願うばかりです。

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夢こそ、真

2014-12-08 11:37:06 | Beatles

夢の夢 / John Lennon (Apple / 東芝)

忘れた事は一度もありません。

ありがとうございます。

合掌。

 

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ヴィーナスとマースの優良

2014-10-04 14:57:58 | Beatles

Venus And Mars / Wings (MPL / Capitol)

 A-1 Venus And Mars
 A-2 Rock Show
 A-3 Love In Song / 歌に愛をこめて
 A-4 You Gave Me The Answer / 幸せのアンサー
 A-5 Magneto And Titanium Man / 磁石屋とチタン男
 A-6 Letting  Go / ワイン・カラーの少女
 B-1 Venus And Mars (Reprise)
 B-2 Spirits Of Ancient Egypt / 遥か昔のエジプト精神
 B-3 Medicine Jar
 B-4 Call Me Back Again
 B-5 Listen To What The Man Said / あの娘におせっかい
 B-6 Treat Her Gently (Lonely Old People)
 B-7 Crossroads

1970年代ロックの優良名盤といえば、ポール・マッカートニー率いるウィングスが1975年初夏に発表した本日掲載のLP「ヴィーナス・アンド・マース」は最右翼のひとつと思います。

その中身については、今更サイケおやじが云々するまでもなく、アナログ時代のアルバムならではのA&B面で構成される特質を活かした全篇間然することない仕上がりで、当然ながらシングルカットされた大ヒット&名曲が満載ですから、いよいよ今や大物ミュージシャンの証明作業となったアーカイヴ復刻が成されたのも必然でありましょう。

それが先頃発売された「スーパー・デラックス・エディション」というCD2枚&DVD1枚が組み合わされたブツで、サイケおやじも思わずゲットさせられたわけですが……。

オリジナル音源のリマスターを入れた1枚目のCDはともかくも、お目当てのボーナス盤が正直、水増し状態!?!?

あぁ、またまた失望の散財かぁ……、というのが本音です。

しかし、だからと言って、「ヴィーナス・アンド・マース」の傑作性に傷が付くなんてことはあるはずもなく、サイケおやじとしては、件の「スーパー・デラックス・エディション」に触れるよりも、あらためてオリジナルLPやブートで出されながら、今回のアーカイヴから外されてしまった音源について、諸々を書いてみようと思います。

で、発売されたリアルタイムでのポール・マッカートニーは妻のリンダ、そして子分のデニー・レインと共にウィングスを運営(?)し、流石のシングルヒットはもちろん、1973年には「レッド・ローズ・スピードウェイ」と「バンド・オン・ザ・ラン」の秀逸なアルバムを2枚も発表する等々、ビートルズ時代からの栄光と才能を引続き発揮していたのですが、所謂硬派のロックファン、殊更野郎どもにとっては、ウィングスなんてのは女子供が聴くもんだっ!

みたいな風潮が少なくとも我が国の洋楽ファンの間ではあったんですよ。

もちろん無視するなんて出来るはずもない存在である事は、それを表明している皆が分かっての発言なんですが、そんな中ですから、サイケおやじが「今度のウィングスのアルバム、良いよねぇ~~」なぁ~んて正直な気持ちを吐露しようものなら、「まだ、そんなの聴いての……」と、軽く見られるのがオチでした。

という当時の実状の一端を書いたところで、あらためて内容に触れれば、既に述べたようにアルバム全篇構成の素晴らしさは、楽曲トラック毎の完成度はもちろん、その繋ぎや流れに創意工夫が成され、例えばジャケットのクレジットでは独立した記載になっている冒頭「Venus And Mars」と「Rock Show」は流れるように合体していますし、その「Rock Show」から「歌に愛をこめて / Love In Song」への繋がりも、前者のシングルバージョンでは消されていたR&B風のサウンドチェックみたいなパートから如何にもの「ポール節」が出まくる陰鬱な後者へ橋渡すという展開はニクイばかり♪♪~♪

さらにその余韻の中から浮かび上がってくるシンミリ系のピアノイントロから懐古趣味なポップソングの決定版「幸せのアンサー / You Gave Me The Answer」が始まる流れには、本当に幸せな気分にさせられてしまうのですから、たまりません♪♪~♪

あぁ~、これこそが唯一無二のポール・マッカートニー・ミュージックと実感された次の瞬間、これまた楽しい「磁石屋とチタン男 / Magneto And TiTanium Man」と愛らしい邦題とは裏腹のブルースロック(?)な「ワイン・カラーの少女 /  Letting  Go」の二連発が追い打ちを仕掛けるのですから、このA面の完成度は気楽に聴けて、ハッするほど良い感じ♪♪~♪

当然ながら随所で堪能出来るポールのボーカリスト&ベースプレイヤーとしての力量にも圧倒されてしまいます。

そしてレコードをひっくり返して再び針を落とすという儀式の後には、しっかり「Venus And Mars (Reprise)」が配置されるという、未だポールの中で進行継続中の「サージェント・ペパー症候群」の吐露は、賛否両論の憎めなさでしょうか?

その意味で「バンドとしてのウィングス」を前面に出す意図から、続く「遥か昔のエジプト精神 / Spirits Of Ancient Egypt」はポールのオリジナルでありながら、デニー・レインにリードを歌わせ、また当時は正式にレギュラーメンバーに採用が決定したジミー・マッカロク(g,vo) に主役を任せた「Medicine Jar」が実に楽しいパワーポップに仕上がっているのは、ビートルズとは決別したくない、それでいて別の道を歩むしかないという、その頃のポールの立ち位置があれやこれやと勝手に妄想推察出来るところかもしれません。

そしてハチロクのR&B風バラード「Call Me Back Again」からシングルとしても大ヒットした「あの娘におせっかい / Listen To What The Man Said」、その最終パートから自然に移行していく穏やかでせつない洋楽歌謡な「Treat Her Gently (Lonely Old People)」の流れは、大団円というよりも、中庸を心得たクライマックスの余韻の演出が見事過ぎると思うばかり♪♪~♪

ですから、オーラスの極めて短いインスト「Crossroads」が実はイギリスの人気テレビドラマのテーマ曲という真相も、洒落が利いているんじゃ~ないでしょうか。

という秀逸なアルバム「ヴィーナス・アンド・マース」は1974年から翌年春まで、当時としては長期作業の結実でしたから、その間には既に少し触れたようにウィングスのメンバーも複数入れ替わり、その所為でセッションには特別ゲストの存在も明らかにされ、ポール(vo,b,g,ds,key,etc)&リンダ(vo,key)、デニー・レイン(vo,g,b,key,etc) の他にヘンリー・マッカロク(g) とジミー・マッカロク(g,vo) という紛らわしい名前の新旧レギュラーギタリスト、そしてドラマーにはジェフ・ブリトン(ds)  とジョー・イングリッシュ(ds) が参加したと言われていますが、それ以外にもディヴ・メイソン(g) やアラン・トゥーサン(p)、トム・スコット(ss) 等々が堅実に助演しています。

さて、そこでようやく本題として、まず前述した「スーパー・デラックス・エディション」のボーナス音源は以下のとおりです。

Disc-2
 01 Junior’s Farm (正規シングルバージョン)
 02 Sally G (正規シングルバージョン)
 03 Walking In The Park With Eloise (カントリー・ハムズ名義のインスト曲)
 04 Bridge On The River Suite (カントリー・ハムズ名義のインスト曲)
 05 My Carnival (正規シングルバージョン)
 06 Going To New Orleans
 07 Hey Diddle (Ernie Winfrey Mix)
 08 Let's Love
 09 Soily (ビデオ「ワン・ハンド・クラッピング」より)
 10 Baby Face (ビデオ「ワン・ハンド・クラッピング」より)
 11 Lunch Box/Odd Sox (正規シングルバージョン)
 12 4th Of July
 13 Rock Show (未発表初期バージョン)
 14 Letting Go / ワイン・カラーの少女 (正規編集シングルバージョン)

結局、ピカピカの未発表曲は少なくて、アルバム未収録のシングル盤オンリーの楽曲や既出映像作品から音声だけ抜き出したトラックとか、それはそれで貴重なんですが、肝心の初出曲にしても、「Going To New Orleans」は「My Carnival」の焼き直しというか、未完成試行錯誤バージョンみたいですし、マイナー調の「Let's Love」は精彩がイマイチ、そしてポールがギターで弾き語る「4th Of July」だけが、個人的にはちょっぴり納得という……。

ですから、これまでに様々出回っていた関連ブートのあれこれがますます愛聴されるわけで、以下の2枚は共に2001年頃に入手したブツです。

Goin' Down To The Rock Show (Wingpop = CD)

 01 Venus And Mars ~ Rock Show (edit: mono)
 02 Junior’s Farm (edit: UK prom.)
 03 Sally G (mono)
 04 Letting  Go / ワイン・カラーの少女 (edit: mono)
 05 Listen To What The Man Said / あの娘におせっかい (mono)
 06 Junior’s Farm (edit: mono)
 07 Oriental Nightfish (alternate from acetate)
 08 Rock Show  (alternate long version)
 09 Rauchan Rock (unreleased)
 10 Listen To What The Man Said / あの娘におせっかい (outtake)
 11 Treat Her Gently (Lonely Old People) (outtake)
 12 Medicine Jar (outtake)
 13 Magneto And Titanium Man / 磁石屋とチタン男 (outtake)
 14 You Gave Me The Answer / 幸せのアンサー (inst.)
 15 Call Me Back Again (outtake)
 16 Rock Show (outtake)
 17 Letting  Go / ワイン・カラーの少女 (outtake)

という収録トラックは、なかなか面白く聴けると思います。

それを簡単に書いておくと、「01:Venus And Mars ~ Rock Show」はフェードアウド等々で全篇3分40秒ほどの短縮バージョン、「02:Junior’s Farm」も3分弱に短縮されたラジオ放送用のプロモバージョンで、後に幾つかの正規ベスト盤にも入っているテイクとは基本的に同じと思いきや、ここではステレオ感が狭いというか、左チャンネルが些か疎かにされたミックスになっていますが、「06」は、その同曲のモノラルミックスかと思います。

また「04: Letting  Go / ワイン・カラーの少女」は短縮バージョンとはいえ、同じ様なタイミングで編集され、ミックスも変えられたシングルバージョンではなく、アルバムに収録のテイクをストレートに用いているんじゃ~ないでしょうか。

そこで気になるアウトテイクの数々では、なんと言っても独立して聴ける「Rock Show」が筆頭格でしょうか、「08:alternate long version」におけるボールの荒っぽくドライヴするベースと歌い飛ばしているようなボーカルは本当にロックがど真ん中! ほとんど成り行きでワルノリ気味のバンドアンサンブルも良い感じですよ♪♪~♪ 一方、「16:outtake」は正規バージョンのラフミックスというか、ここに収録の音源はステレオミックスながら、かなり音が歪んでいるあたりに如何にもブートの味わいがあります。

そうした状況は他のアウトテイク音源にも共通で、様々なミックスダウンを試行錯誤しつつ、最良の結果を作り出そうとする作業の過程が記録され、当然ながら曲の流れの中に頻出する音の強弱やチャンネル定位の移動等々、正規バージョンの耳馴染があればこその楽しみが増幅されるのはブートの醍醐味のひとつと思います。

しかし、その意味でさらに興味深い存在なのが未発表曲「09:Rauchan Rock」でしょう。なんとっ! これが同時期のストーンズ風のノリも楽しいというよりも、一瞬、夥しく出回っているストーンズのブート音源かっ!? なぁ~んて思ってしまうセッションインストなんですねぇ~~~◎▽?◎ おそらくはデニー・レインであろうリズムギターが、ほとんどキース・リチャーズ&ロン・ウッド組の味わいですからっ!?

ちなみに「07:Oriental Nightfish (alternate from acetate)」はリンダのソロプロジェクトのひとつで、彼女が他界した後にまとめられたアルバム「ワイド・プレイリー」に収められた本テイクの別バージョンです。

Venus And Mars Sessions (Yellow Cat = CD)

※Rough Assembly, March 1975 (second compilation)
 01 Venus And Mars
 02 Rock Show
 03 Love In Song / 歌に愛をこめて
 04 You Gave Me The Answer / 幸せのアンサー
 05 Magneto And Titanium Man / 磁石屋とチタン男
 06 Letting  Go / ワイン・カラーの少女
 07 Medicine Jar
 08 Venus And Mars (Reprise)
 09 Spirits Of Ancient Egypt / 遥か昔のエジプト精神
 10 Call Me Back Again
 11 Listen To What The Man Said / あの娘におせっかい
 12 Treat Her Gently (Lonely Old People)
 13 Crossroads
 14 Lunch Box/Odd Sox

タイトルどおりのブート企画で、前半は1975年3月に試みられた二度目のアルバム構成を聴くことが出来ますが、全篇をとおしてポールのベースが存在感の強いミックスですし、「02:Rock Show」ではセッション助っ人のアラン・トゥーサンのピアノが目立ちまくりの痛快ロケンロール!

ちなみに完成バージョンでは繋がっていた「01:Venus And Mars」はフェードインでスタートし、ここでは「02:Rock Show」と分離独立していますよ。

また、コーラスパートが大きくミックスされた「05:Magneto And Titanium Man / 磁石屋とチタン男」もラフな質感が良い感じ♪♪~♪

そして気になるのは後半というか、オリジナルのアナログ盤とは異なる曲順の構成でしょう。

う~ん、「07:Medicine Jar」はA面ラストなのか、B面ド頭なのか?

それと「14:Lunch Box/Odd Sox」を本当にアルバムに入れるつもりだったのか?

等々の諸問題(?)を様々に妄想推理するのもファンの楽しみだと思えば、各トラックで散見されるミックスの違いや音量の強弱調整についても興味津々であり、例えば「07:Medicine Jar」のラフ&ハードな未完成フィーリングや「10:Call Me Back Again」のワイルド過ぎるポールの歌いっぷりにも個人的には愛着を持ってしまいます。

※Rough Mixm, February 1975 (first compilation)
 15 Venus And Mars
 16 Rock Show
 17 Love In Song / 歌に愛をこめて
 18 Letting  Go / ワイン・カラーの少女
 19 Medicine Jar
 20 Venus And Mars (Reprise)
 21 Listen To What The Man Said / あの娘におせっかい
 22 Treat Her Gently (Lonely Old People)
 23 Crossroads

さて、こちらはさらに早い段階のラフミックス集で、音質的にも厳しいところがあるものの、しかしロックの歴史の一幕の裏側を覗いている楽しみは別格という、そういう人間本来の欲望を満たされるのは正直、嬉しいですね、サイケおやじには。

で、まずは「15:Venus And Mars」からして歌入れ前のカラオケ、それも未完成テイクですし、「16:Rock Show」は演奏に入る前や途中でのポールのカウント、あれこれ試しながらのノリが怪しくなったりするところ等々、一発録りっぽいリハーサルの佇まいが逆に素敵ですよ♪♪~♪

以降、ミックスが定まっていない「17:Love In Song / 歌に愛をこめて」やリードギターが各所で抜け落ち、オーケストラも入っていない「18:Letting  Go / ワイン・カラーの少女」、これまたラフな「19:Medicine Jar」やエレピの伴奏がメインで様々な彩が無い「19:Listen To What The Man Said / あの娘におせっかい」はトーシロがコピーする時にコードを採取するには絶好でしょうか、サイケおやじは好きです♪♪~♪

そして続く「22:Treat Her Gently (Lonely Old People)」のネイキッドな雰囲気も良い感じ♪♪~♪

う~ん、既に述べたとおり、このパートは全体的に音がイマイチなのが実に勿体ないですねぇ~~。尤もブート慣れ(?)したサイケおやじと同世代の皆様であれば、問題無く楽しめると思います。

さて、もうひとつ、忘れてならないのが、当時はそれなりに普及していた4チャンネルステレオ用のアナログディスクで、それは専用のアンプとカートリッジを用い、設置した4本のスピーカーから通常とは異なる立体的(?)なサウンドが楽しめるとされていた高級機器だったんですが、結局は庶民には普及する事なく、フェードアウトした歴史の中で、残されたのが件の 4ch マスターによる「Quadrasonics Disc」というわけで、それが今では別ミックス扱いの貴重盤としてマニア御用達?

Venus And Mars Quadrasonics Disc

ですから当然、ブート業者のネタとなって、様々に出回っています。

ただし収録曲は公式通常盤と同じですし、ブートでは問題(?)の4ch マスターから普通のステレオにミックスダウンしたものですから、まあ、オリジナルのアナログ盤「Quadrasonics Disc」を一般的なステレオ装置で鑑賞するのと一緒です。

つまり左右の広がりはあっても、それ以上は望めないわけなんですが、ただし更なる音響効果を狙っていた4ch マスターであれば、必要以上に演奏パートの各楽器が両スピーカーの間をバラバラに移動したり、歌やコーラスと演奏カラオケパートが完全に分かれて聞こえたりという、ちょっぴり落ち着かない楽しみは確かにあるとはいえ……。

それを楽しむには、しっかりオリジナルバージョンのアルバムを聴き込むのが先決かと思います。

ということで、まだまだ書き足りないところも多々ありますが、最後に「スーパー・デラックス・エディション」に付属のDVDについては、本アルバムの主要部分がレコーディングされたニューオリンズを訪れたウィングスのドキュメント映像やそこから作られたと思しき疑似プロモフィルムが、何れも1975年という記録性の観点からすれば貴重でしょう。

しかしそれだけという感じが漂うのは、古くからのファンには避けられないところであり、その意味で同年にロンドンで行われたリハーサル風景は音も映像も公式未発表の目玉でしょう。中でも「Rock Show」は、ステージギグを意識したあれこれが興味深いところでした。

以上、久々に聴いてしまったウィングスの「ヴィーナス・アンド・マース」は傑作アルバムの名に恥じない充実作だと痛感しています。

ただし、それでも当時は硬派のロックファンからは、こんなのロックじゃ~ねぇ!

とかなんとか、言われていたわけですが、サイケおやじとしてはロック的名盤というよりも、大衆音楽の健康優良児という評価(?)が真っ当かと思います。

どうか皆様も、洋楽黄金期であった1970年代をお楽しみ下さいませ。

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これはポールのルーツ・オブ・スコットランドか?

2014-09-18 14:31:05 | Beatles

夢の旅人 / Wings (Capitol / 東芝)

イギリスではスコットランドの独立に関する住民投票で喧々囂々、賛成反対の是非は当地の住民にしか投票権が無いらしいので、必死のイギリスの首相はもちろん、エリザベス女王までもが実質的な反対の意向を示される等々、そういう騒ぎが世界中で報道されるのは、それだけ影響力が大きいという事でしょう。

個人的にはスコットランドの独立はイングランドとの共倒れが避けえないと思うところなんですが、それが百年後か、それともさらに遠い未来なのかは知らずとも、自ずと結果は見えているような気がします。

さて、そこでスコットランドと言えば、この曲が極みの大ヒットという事で、ご存じのポール・マッカートニーとウィングスが1977年に出したシングル曲「夢の旅人 / Mull Of Kintyre」を出してきました。

もちろんスコットランドと言ったって、実際はビートルズが登場するまでは、それがどんなところかなんて事は遠く日本に生活する我々には縁の薄い地域だったはずですし、およその雰囲気としては所謂牧歌的な風景や民俗がイメージされるというのも、妥当なところかと思います。

しかし一番に強く感性を刺激されたのは、ビートルズの中でも特にポール・マッカートニーが作るメロディラインに顕著な哀愁というか、その不思議な胸キュンなフィーリングがスコットランドの民謡あたりをルーツにしているという真相(?)に辿り着いてみれば、そんなこんなの歌や演奏をこの機会(?)に聴きたくなるのは不謹慎でしょうか。

とにかくスローなワルツテンポで如何にも詩情豊かなメロディライン、そのフォーク調の演奏には途中からバグパイプも加わる等々のサウンド作りのベタなフィーリングは、ポール・マッカートニーがやっているという免罪符(?)がある限り、決してイヤミではありません。

また、楽曲クレジットを確認すれば、ウィングスの縁の下の力持ちだったデニー・レインの名前が共作者としてある以上、ある意味での味付けの濃さも納得するしか??

と書いたのも、イギリスでは空前の大ヒットを記録していながら、我が国ではイマイチというか、それほどの強い印象を残した感じではなく、同様にアメリカや他の諸外国でも中ヒットだったのが実情みたいてすからねぇ……。

ちなみに原曲タイトル「Mull Of Kintyre」はスコットランドに実在するキンタイヤ岬の事で、現地に行ったことがなくとも、ファンにとってはポール・マッカートニー所有の農場がそこにあるというだけで有名だと言われています。

それと気になる演奏メンバーなんですが、ウィングス名義とはいえ、外盤と共通のスリーヴデザインを用いたジャケ写にはポール&リンダ、そしてデニー・レインだけが登場している事から、発売当時には既に脱退が報じられていたバンドレギュラーのジョー・イングリッシュ(ds,vo) とジミー・マッカロク(g,vo) の参加は微妙であり、またリンダの妊娠出産もありましたから、実質的にはポール・マッカートニー(vo,b,g,ds,key,etc)とデニー・レイン(vo,g,b,key,etc) の親分子分が仕上げたものと推察しております。

ということで、スコットランドがどうなろうとも、そこから派生した音楽を含む諸々の文化は不滅であり、また人の営みも同様でしょう。

そして権力の存在と立場がど~なろうとも、例えば「夢の旅人 / Mull Of Kintyre」のような素敵な歌が、そこに根差していたという真実は尊重されるべきですよねぇ~。

ポール・マッカートニーは反対派という報道もありましたが、さてさて、どうなりますやら……、お気楽に構えていられる現在の幸せ(?)を大切にしなければ、申し訳ない……。

そう、自分に言い聞かせているのでした。

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R&Rの魂と逝ったジョン……

2012-12-08 15:12:41 | Beatles

John Lennon Sings The Great Rock & Roll Hits: Roots (Adam Ⅷ)

突然の悲報から既に30年……。

それでも癒えない悲しみは、ジョン・レノンが教えてくれたロックや人の世の喜怒哀楽、その中の生き様がサイケおやじには辛辣なほどリアルであった証とさえ……。

ですから、故人が残してくれた偉大な遺産は、その全てが様々な真実を含んでいるのは当然であり、決して聖人君子ではなかったジョンの苦悩や魂の叫びをそこから感じる事が、ファンにとってはひとつの喜びに違いありません。

特に本日ご紹介のLP「ルーツ」は、1975年に世に出た人気アルバム「ロックン・ロール」の裏側に存在する混濁や人間関係の諸々から産み落とされた幻のアルバムとして、現在もブートが流通していほどの問題作です。

 A-1 Be-Bop-A-Luia
 A-2 Ain't That A Shame
 A-3 Stand By Me
 A-4 Sweet Little Sixteen
 A-5 Rip It Up ~ Ready Teddy
 A-6 Angel Baby
 A-7 Do You Want To Dance
 A-8 You Can't Catch Me
 B-1 Bony Moronie
 B-2 Peggy Sue
 B-3 Bring It On Home To Me ~ Send Me Someone Lovin'
 B-4 Slipping And Slidin'
 B-5 Be My Baby
 B-6 Ya Ya
 B-7 Just Becase

ご存じのとおり、前述の「ロックン・ロール」はタイトルどおり、ジョンが幼少の頃から親しんだR&RやR&B、さらにはアメリカポップスのルーツを自分流儀で歌ったオールディズカパー集なわけですが、これを作るきっかけとなったのが、例の「Come Together」盗作騒動だったと言われています。

それは活動停止が前提期のビートルズにあって、ジョンが自信を持って書いたとされる件の名曲が、なんとっ! R&Rの偉人たるチャック・ベリーの「You Can't Catch Me」のパクリだとして、楽曲管理会社から訴えられ、裁判の結果は和解となったんですが……。

条件として、前述の会社「ビッグ・セブン・ミュージック」が保有する歌の中から3曲をジョンがレコーディング発売するという事になり、ど~せなら、カパー作品集を作ってしまおう!?!

という、経緯があったようです。

そこで早速、1973年秋からフィル・スペクターにプロデュースを依頼し、ロスでレコーディングが開始されたのですが、当時のジョンはヨーコとの不仲から気の合う仲間と夜遊び&泥酔の日々であり、一方のフィル・スペクターも様々なゴタゴタから精神的に追い詰められていた頃とあって、セッションはトラブル続き!

音楽的な対立というよりは、気持のズレなんでしょうか、喧嘩口論でスタジオ内の雰囲気は最悪だったそうですし、ついには発砲騒ぎまでもあった事は今や隠し様もない歴史(?)でしょう。

おまけになんとか作られた数曲のマスターテープをフィル・スペクターが持ち逃げするという事件が発生したのですから、当然ながらプロジェクトそのものが中断に追い込まれています。

ところがそれで納得してくれないのが、件の裁判で一定の権利を認められた「ビッグ・セブン・ミュージック」側で、せっかくの大きなビジネスチャンスがあるのですから、ジョン本人や当時の所属レコード会社であったキャピトルに対して矢の催促!

そこでニューヨークに戻ったジョンは新作アルバム「心の壁、愛の橋」のレコーディングと並行して、問題のオールディズカパーの追加セッションを開始していますし、キャピトル側も苦心惨憺(?)の末にフィル・スペクターからマスターテープを取り戻すのですが、その過程で暫定的に編集された「ロックン・ロール」のラフミックマスターが「ビッグ・セブン・ミュージック」の代表であったモーリス・レヴィという人物の手に渡ってしまったのですから、混乱は収まりません。

驚くなかれ、その未完成(?)ソースから作られた「ジョンの新譜LP」が、「アダムⅧ」という通販会社から出てしまうという大事件が勃発し、それが本日の1枚たる「ルーツ」というわけです。

もちろんキャピトル側も正規盤「ロックン・ロール」の発売を早める対抗処置と同時に、「ルーツ」の販売禁止を求める訴訟を起こしたのですが、実は「アダムⅧ」側には「ジョンとの口約束」という曖昧なお墨付きがあった事から、結果的に数千枚が流通し、しかも「ロックン・ロール」とは異なる収録曲やミックス違い、一目瞭然の曲順違いがありましたから、1969年のジョンのポートレートを使ったジャケットデザインも含めて、その消える事になったオリジナル盤が忽ち高値で取引された事は言うまでもありません。

特に当時、正規盤「ロックン・ロール」では聴くことの出来なかったフィル・スペクター所縁のロネッツが1963年に大ヒットさせた「Be My Baby」とジョンが好きだったというロージー&オリジナルズの「Angel Baby」は、何れもオールディズのラブ&ロッカパラードですから、ファンには気にならざるをえないレアトラック♪♪~♪

それゆえに瞬時、ブートが流通し始めたのも当然でありました。もちろん掲載の私有盤も、それです。

また実際に聴いてみると、全体的なミックスの違い、場合によってはジョンのボーカルそのものが違うトラックもあり、特に「Sweet Little Sixteen」のワイルドなフィーリングは個人的に大好きです。

ちなみに演奏パートの参加メンバーは今日でも明らかになっていませんが、ジェシ・エド・デイビス(g)、スティーヴ・クロッパー(g)、レオン・ラッセル(key)、ハル・ブレイン(ds)、ジム・ケルトナー(ds) 等々がロスのセッションに呼ばれていた事は様々な証言、あるいはフィル・スペクターの人脈を考慮すれば、推察は易いと思います。

一方、仕切り直しとなったニューヨークでのセッションには、クラウス・ブァマン(b)、ボビー・キーズ(ts) が参加している事は、これまた可能性が高いところでしょう。

そして実は後に流出したセッションからのアウトテイクを収めたブートを聴くと、最初に作っていたフィル・スペクターのマスターテープにおけるジョンのボーカルは、相当にテキトーな感じ……。

ですからニューヨークでの再開セッションでは、かなりの部分で歌入れがやり直されている事が明確ですし、問題の「ルーツ」というアルバムに用いられたラフマスターでも、幾分未完成なパートが散見されるんですから、当時のジョンの焦燥や不安定な心情は如何に!?

個人的には、そういう部分を垣間見せる偉大なロッカーのジョン・レノンが、一番好きです。

ということで、あまり故人の命日には相応しくない、それこそ不遜な選択と文章ではありますが、どうかご容赦下さい。

それでもジョン・レノンの凄さは、かえって伝わって欲しいと願っておりますし、この「ルーツ」も、機会があれば、ぜひ!

最後になりましたが、本日はこれから、おやじバンドで「Stand By Me」を心をこめて、やってきます!

合掌。

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